年金繰上げ受給をしちゃだめな人7選【一生後悔するNGパターン】注意点とデメリット

この記事では、「知らないと一生後悔! 年金を繰上げ受給しないほうがいい人7選」ということで、年金の繰上げをしない方がいい人について、繰上げ受給のデメリット・注意点を抑えながら解説していきます。

年金の繰上げ受給とメリット

年金の繰上げ受給とは

最初に、簡単に繰り上げ受給について簡単におさらいしておくと、年金の繰り上げ受給というのは、本来であれば65歳まで待たないともらえない年金を前倒しで支給できる制度です。最大限前倒しすれば60歳から年金を受け取れるのですが、

代償として、年金の支給開始を繰り上げれば繰り上げるほど一回あたりに支給される年金が減額となります。

繰上げ受給による減額

具体的には、1ヶ月繰り上げるごとに0.4%の減額です。

繰上げ期間は1か月単位で選べますが、例えば1年繰り上げるなら0.4%の減額を12か月分で4.8%の減額ということになりますね。

最大限に繰り上げて60歳から年金を受給する場合、5年間、つまり60か月の繰上げになりますから、減額率は0.4%の60か月分で24%ということになります。

仮に本来の年金受給額が年額100万円であったなら、繰上げをすれば65歳から受け取るよりも5年はやく年金をもらい始めることができるけど、年金の受給額は元の金額から24%カットの76万になってしまう。

一方繰上げをしない場合、65歳になるまで年金をもらえないけど年金の支給額は100万円のままキープされます。

繰上げ受給の損益分岐

「それってどっちが得なんだ?」と迷ってしまいますが、年金の手取り額の累計で考えると、80歳前後までは繰上げの方がお得という結果になります。

ただし、繰上げにももちろんデメリットや注意点があるので、次章から、「残念だけど繰上げはしない方がいいね」という人について解説します。

年金の繰上げ受給をしない方がいい人① 60歳以降も年収500万をこえる人

まずは、60歳以降も年収500万をこえる人、について。

これは「在職老齢年金」という制度に関係する話なのですが、年金をもらいながら働く場合、年金と給料が合計で月50万円をこえると年金の支給が停止しちゃうんですね。

だから、60歳以降も仕事をする場合、せっかく年金の繰上げをしても支給が停止しちゃう可能性があるんです。

とはいえ、在職老齢年金で支給が停止するのは、年金と給与を合わせて月収50万をこえる場合のみです。

さらに、ここでいう年金というのは厚生年金のことで、国民年金の受給額は計算に含めません。国民年金を省き、厚生年金のみでいえば、一般的な会社員の受給額は月額10万程度ですから、60歳以降の給与が月に40万っていうクラスの人でなければ在職老齢年金を気にする必要はありません。

ただ言い換えれば、60歳以降も年500万前後の給料をもらう予定がある人は、年金の支給が停止してしまうため繰上げ受給はおすすめできません。

年金の繰上げ受給をしない方がいい人② 60歳以降も失業手当を受給したい人

続いては、失業手当を受給したい人について。

失業手当とは名前の通り、失業中の人に支給されるお金です。

離職前の給料の最大8割が支給されるので、会社を辞めて次の仕事を見つけるまでの間、生活を支えてくれるありがたい制度ではありますが、残念なことに厚生年金と同時に受け取ることはできません。

だから、年金の繰上げ受給をしている人が、離職して失業手当の申込みをすると、厚生年金の全額が支給停止になってしまいます。

ただ、失業手当と同時に受け取れないのは厚生年金であって、国民年金の方は失業手当と同時に受給することが可能です。

というと、「うーん確かに60歳以降も失業手当のお世話になる可能性があるし、国民年金だけ繰上げ受給しよう!」と考える方がいるかもしれませんが、残念ながら国民年金と厚生年金のどちらか一方だけ繰上げるということはできません。

ちなみに、ここまで解説した「失業手当」の支給対象は64歳までの方で、65歳以上の求職者は失業手当ではなく「高年齢求職者給付金」をもらいます。こちらは年金と同時に受け取ることができますので、安心して請求してくださいね。

年金の繰上げ受給をしない方がいい人③ 高齢または持病のある夫がいる専業主婦

続いては、夫が高齢だったり命に係わる持病があったりする専業主婦について。

こうした人に繰上げ受給をお勧めできない理由は、遺族年金や寡婦年金と繰り上げた年金を同時に貰うことができないからです。
あまり考えたくないことだとは思いますが、旦那さんが亡くなったとき、残された奥さんは遺族年金あるいは寡婦年金を受け取ります。どちらにしても、生計を支えてくれていた夫を亡くした後の生活の基盤となるものです。

しかし、遺族年金は65歳になるまで老齢年金と同時に受け取ることができません。

例えば専業主婦の方が、自分の国民年金を60歳で繰上げ受給したとします。

その後、この女性が65歳になるまで夫が元気でいてくれれば何の問題もありません。老齢基礎年金を受け取りながら、なおかつ夫が亡くなってからは遺族年金も受け取ることができます。

だけれども、一方で、繰上げ受給をした専業主婦が65歳になる前に夫が亡くなったら大変です。

夫が亡くなったとき、繰り上げていた自分の年金と遺族年金と、どちらか一方を選んでどちらか一方を捨てないといけません。

たいていは金額の関係で遺族年金を選ぶ方が多いはずですが、せっかく、支給額を下げてまで繰上げを選んだのに、老齢年金を捨てないといけないのはなかなかショックなことでしょう。

このケースでも65歳以降は老齢基礎年金が復活しますが、繰上げによって減額した年金支給額は元に戻りません。65歳になるまで支給が停止していたとしても、一度繰上げを選んでしまった以上年金の減額は一生続くのです。

また、寡婦年金についても老齢年金の繰上げ受給を請求した日以降は支給されません。

ということで、自分が60歳から65歳の間に遺族年金等を受け取る可能性がある場合、年金の繰上げ受給はやめておいた方がよいでしょう。

実際にはいつ夫が天寿をまっとうするかなんて予測がつかないケースも多いと思いますが、自身が60歳から65歳の時に夫があまりに高齢な場合や、あるいは現時点で命に係わるような持病等がある場合、繰上げ受給には特に慎重になる必要があります。

年金の繰上げ受給をしない方がいい人④ 治療中の病気や持病がある人

続いては、治療中の病気や持病がある人について。

こうした人に繰上げ受給をお勧めできない理由は、一度繰上げ受給の請求をすると、その日以降障害年金の請求ができなくなるからです。

もちろん、いつどんな病気やケガをするかは誰にもわかりませんが、現在治療中の病気や持病が後々、障害等級1級、2級に該当する状態になることもあり得ます(事後重症)。そうした可能性がある方は繰上げ受給は控えた方がいいでしょう。

年金の繰上げ受給をしない方がいい人⑤ 国民年金の未納期間がある人

続いては、国民年金の未納期間がある人について。

こうした人に繰上げ受給をお勧めできない理由は、繰上げ受給をすると国見年金の追納や任意加入ができないからです。

国民年金は、誰もが20歳から60歳までの40年間同じ保険料を納めて、老後はみんな同じ金額の年金がもらえるという制度です。

ですが、中には20歳から40歳の間で年金保険料を支払っていない時期があるという人もいますよね。

保険料の未納期間がある場合、国民年金の満額受給はできません。きちんと保険料を納めた人に比べて年金の支給額が減額されるということですね。

未納期間がある理由は人によって違うでしょうけれど、いざ年金をもらう年齢が近づいてみて、

「あの時は年金保険料を払えなかった・払わなかったけど今なら払える!」

「国民年金を満額で受給したいから、今からでも未納分の保険料をおさめたい!」

と思う場合、60歳以降でも国民年金に任意加入することができます。

また、保険料の免除や納付猶予などを受けた期間がある人は、追納制度を利用して、過去10年までさかのぼって保険料を納付することができます。

これによって、国民年金の未納期間、免除期間がある人も、国民年金の支給額を満額あるいはそれに近い金額に引き上げることができるんですね。

しかし、年金を繰上げ受給をしてると任意加入・追納ができません。繰上げ受給を選択した時点で、国民年金の支給額を引き戻すチャンスがなくなってしまうということです。

年金の繰上げ受給をしない方がいい人⑥ 60歳以降もiDeCoに加入したい人

続いては、60歳以降もiDeCoに加入したい人について。

iDeCoはいわゆる個人年金で、「老後の資金を自分で確保しよう」という制度です。

iDeCoの制度そのものについての詳しい説明は省きますが、2022年5月以降、60歳以上の人もiDeCoに加入できるようになりました。

節税効果もあって、60歳から住民税非課税を狙う場合、繰上げ受給と同様に有効ではありますが、残念ながら公的年金を65歳前に繰り上げ請求された方はiDeCoに加入できません。

60歳以降もiDeCoに加入したいという場合、繰上げ受給はあきらめないといけませんね。

年金の繰上げ受給をしない方がいい人⑦ 絶対に100歳まで生きる自信がある人

最後に、絶対に100歳まで生きる自信がある人について。

記事の前半で、年金の繰上げ受給は一回一回の支給金額が下がる一方、累計額でみるとトータルで得をするケースが多いという旨をお伝えしました。

ただしそれは、寿命が80から90歳前後であることを前提にしています。

年金繰上げの損益分岐は、年金を運用に回さなければ80歳前後、運用に回せる場合は90歳前後になります。

もしもあなたが、ぜったいに、確実に、100歳まで、健康に長生きできる確信と自信があるという場合は、繰上げではなくむしろ繰下げ受給の方がお得ということになります。金さん銀さん並みの長寿遺伝子をお持ちの方は繰下げ受給の方をおすすめします。

動画で復習

吉田 美紀
執筆
吉田 美紀(よしだ みき)
早稲田大学文学部卒。2020年5月からZEIMOでの編集・監修・執筆活動を開始。ライフマネー・税金・ポイ活に関する記事を50以上監修。

2021年からはYOUTUBEチャンネル「お金のSOSチャンネル」の運営を開始、チャンネル登録者数2.8万(※2023年3月時点)。
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