インボイス制度【7月末】最新情報・登録状況

インボイス制度の7月末時点の最新情報をお伝えします。
1.インボイス登録状況
まず、インボイス登録状況(適格請求書発行事業者の登録)についてです。
国税庁が、適格請求書発行事業者、つまり、インボイスを発行できる事業者として、登録した事業者を公表していますので、そこから登録数を調べました。
【参照サイト】適格請求書発行事業者公表サイト
(1)登録状況の推移
適格請求書発行事業者の登録数の推移のグラフです。
法人は、今年3月くらいを底にして、4月から増えて、6月に一気に増えましたが、7月は少し減少しました。決算処理の後に、登録をする企業が、一巡したのかもしれません。
一方、個人事業主は、今年3月に一気に増えたあと、4月、5月と減りましたが、6月にまた一気に増えて、7月は横ばいです。
2020年分の確定申告の統計では、個人事業主で事業所得がメインの人は約390万人、不動産所得がメインの人は約155万人です。また法人は約282万社です。
このうち、個人事業主の免税事業者は約419万人、法人の免税事業者は約90万社で、免税事業者は全体の約6割です。
法人数 令和2年法人税申告より
個人事業主数 令和2年所得税申告より
・事業所得:各種所得の金額のうち事業所得の金額が他の各種所得の金額の合計額より大きい者
・不動産所得:その他所得者で、利子所得、配当所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得、一時所得、雑所得の金額のいずれよりも不動産所得の金額の方が大きい者
課税事業者数、免税事業者数 令和2年消費税申告より 普通申告と還付申告の合計、重複の可能性あり
(3)登録数の割合
登録数の割合のグラフです。法人は順調に増えていて、23.3%が登録済みです。
個人事業主は、2.9%と、まだ非常に少ないです。個人事業主は免税事業者が多く、登録期限まではまだ余裕がありますので、様子見をしている人が多いのでしょう。
2.インボイス制度の理解度
次に、インボイス制度に関する企業の理解度についてです。
2つの調査結果を紹介します。
(1)理解している経理担当はわずか3割程度
大手クラウド会計のフリーが、企業に対する、インボイス制度の認知度調査結果を公表していますので、それを引用して解説します。
【引用サイト】freee、インボイス制度の認知度調査結果を公開 インボイス制度を理解している経理・財務担当はわずか3割程度
それによると、インボイス制度を理解しているのは、企業の経理担当者のわずか3割程度です。
企業の規模別にみると、小さな企業ほど理解が進んでいません。従業員20人以下の小規模企業で、インボイス制度を理解できているのは、4分の1程度です。
さらに、買い手となる企業の理解度はかなり低いようです。インボイスがないと消費税を控除できないことを知っているのは、わずか3分の1にも満たない状況です。
次に、重要ポイントですが、免税事業者に対して、課税事業者に転換するよう依頼した企業の割合です。すでに依頼したか、今後、依頼予定の企業は半分を超えています。
企業の規模別では、大企業は約7割が、免税事業者に対して、課税事業者に転換するように依頼したか、する予定です。一方、小規模企業では、まだ約4割程度です。しかも、すでに行った割合は、たった3%です。
さきほどの理解度のグラフで見たように、小規模企業では、まだ制度を理解している企業が少ないです。今後、制度を理解したら、転換依頼が増える可能性があります。フリーランスや個人事業主は、取引先も小規模な企業であることが多いと思いますが、今後、突然、課税事業者になってほしいと要求される可能性があることを、覚悟しておいたほうが良いでしょう。
免税事業者はインボイスを発行できませんので、免税事業者から購入すると消費税を控除できないからです。そうすると、控除できない分が損失になってしまいますので、免税事業者に対して、課税事業者に転換するよう依頼してくるはずです。
(2)約4割の企業がインボイス制度を知らない
クラウド型経費精算システム「楽楽精算」を提供するラクスは、全国の経理担当者848人を対象に、インボイス制度に対する意識調査を実施しました。その結果が、ITmediaビジネスオンラインに公表されていますので、それを引用して解説します。
【引用サイト】ITmediaビジネスオンライン:インボイス制度、約4割の企業が「知らない」と回答 1月施行の電子帳簿保存法も「則して運用している」企業はわずか2割に
それによると、インボイス制度を知っているのは、約4割の企業です。一方、インボイス制度の内容を知らない、名前も知らないという人を合わせると、約4割の企業が知らないということになります。企業の経理担当者ですら知らないのですから、今回のインボイス制度で影響を一番受けるフリーランスや個人事業主では、インボイス制度を知らない人はもっといると考えられます。
下図は、適格請求書発行事業者としての登録についてです。既に登録している企業が約4割と多いですね。これから登録予定を含めると、8割は登録することになります。一方で、登録予定がない企業も、それなりにあるのが意外です。こちらの調査は、従業員30人以上の、中堅規模の企業の調査ですので、そういった企業でも、登録しないところはあるようです。
さて、下図は、免税事業者は必見の重要な内容です。取引先が適格請求書発行事業者として登録していない場合、つまり、だいたいは免税事業者の場合、取引をどうするかという質問です。
取引を継続しないが7%、経過措置の間は取引を継続するが、その後は取引を継続しないが11%、合わせて、なんと約2割の企業が、免税事業者とは取引を継続しない予定となっています。業種によって状況は異なると思いますが、全体で2割の企業が、免税事業者と取引しないと、現時点で表明していることには、十分な注意が必要だと考えられます。
下図は、電子帳簿保存法に関するものです。簡単にいいますと、最近、法律が改正されて、PDFファイルなど電子データで受領したものを、電子データで保存することが、義務となりました。しばらくの間は、印刷して紙で保存しても大丈夫ですが、2024年からは完全に義務化されます。
今のところ、新しい法律に対応して運用しているのは、23%くらいです。ただ、今後、インボイスも電子化の対応が進むと、フリーランスや個人事業主側にも、紙ではなく電子での請求書発行を要求されるようになっていくでしょう。
下図は、受け取った電子データをどのように保存しているかという質問ですが、電子データで保存しているのは、まだ約3分の1の企業です。ただ、今後は、電子化が進んでいくでしょう。
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