インボイス制度、売上税額2割の消費税でOK?実はヤバい制度かも

インボイス 売上2割

速報です。インボイス制度で激変緩和措置として、消費税の納税は、売上税額の2割でOKになるかもしれません
でも、いろいろなことを考えると、実はヤバイ制度かもしれませんよ。

1.消費税の納税は売上税額の2割でOK?

11月20日、日本経済新聞でこんな報道がありました。

今回、インボイス事業者に登録して課税事業者になった人は、売上税額の2割の消費税を納税すればいいように、検討中です。
ただし、2023年10月から3年間だけの期間限定です。
今の簡易課税制度では、控除額が少なすぎると、フリーランスの声優や漫画家などが反発していたので、政府はこのような激変緩和措置を検討しているようです。

まだ確定ではありませんが、売上税額の2割の消費税とは、いったいどういうことなのか、図を使ってなるべくわかりやすく解説していきますね。

2.インボイスと消費税の仕組み

(1)インボイスとは?

インボイス制度 フリーランス

インボイスとは、こんな感じの請求書で、正確には、適格請求書といいます。インボイスには、誰が発行したかわかるように、登録番号が記載されます。

インボイス

インボイス制度では、請求書に記載が必須な登録番号は、適格請求書発行事業者として、国税庁に登録した事業者に付与されます。
また、登録してインボイスを発行できるのは課税事業者だけです。
そこで、インボイスを発行するには、登録して、課税事業者になる必要があります。

(2)消費税の仕組み

消費税の仕組みはこんな感じです。

インボイス 消費税 仕組み

たとえば、フリーランスである漫画家が原稿を執筆して、取引先から、本体価格1000円に、消費税100円をプラスして、合計1100円をもらいました。この人は、原稿を書くための文房具類をお店から購入していますが、本体価格200円に、消費税20円をプラスして、合計220円を支払いました。

もらった消費税100円から、支払った消費税20円を引くと、80円になります。この人は、国に対して、消費税80円を納税する義務を負っています。ただし、免税事業者の場合は、納税が免除されています。

インボイス制度開始後、消費税をもらえなくなると・・・

インボイス 消費税 仕組み

ところが、インボイス制度が開始すると、免税事業者に支払った消費税は控除できませんので、取引先は消費税を払わないと言ってくる可能性があります。でも、このフリーランスは、文房具類を購入するときは消費税を払っています。

すると、取引先から消費税をもらった場合の利益は、もらった1100円から支払った220円を引いて、880円でした。ところが、消費税をもらえない場合の利益は、もらった1000円から支払った220円を引いて、780円です。100円も利益が減ってしまいます

(3)免税事業者が課税事業者になると収入が減ってしまう

それでは大変ですので、免税事業者は課税事業者にならざるを得ません。

 免税事業者課税事業者
インボイス
開始前
インボイス
開始後
もらった金額1100円1000円1100円
払った金額-220円-220円-220円
納税-80円
利益880円780円800円

すると、課税事業者になったときの利益は800円です。免税事業者のときよりは、ましになりますが、それでも、インボイス制度開始前よりは、収入が減ってしまいます。

3.2割特例制度

そこで、収入が一気に減ってしまうのを緩和するために、売上税額の2割だけ納税すればいいという制度を、政府は検討中です。名前が決まっていませんが、ここでは、「2割特例」と呼ぶことにします。

インボイス 売上2割

もらった消費税100円に2割をかけると20円です。この20円だけ納税すればよいのです。

 免税事業者課税事業者
インボイス
開始前
インボイス
開始後
原則2割特例
もらった金額1100円1000円1100円1100円
払った金額-220円-220円-220円-220円
納税-80円-20円
利益880円780円800円860円

2割特例を使えば、利益は860円になります。インボイス開始前とくらべて、収入減少の度合いは少しになります。

4.簡易課税制度との関係

「あれ、簡易課税制度と同じじゃない?」と疑問を持たれる人もいるかもしれません。おそらく、ほぼ似た制度になりそうです。

(1)簡易課税制度とは?

インボイス 簡易課税

簡易課税制度では、もらった消費税に、1割から6割までの割合をかけて、納税額を計算します(厳密にいうと、ちょっと違いますが、ここでは、説明をわかりやすくするために、あえてそうしています)。消費税の計算がとても楽です。

2年前の課税売上高、税抜きの売上が5,000万円以下であれば、利用できます。

かける割合は業種で決まっている

区分業種かける割合
第1種卸売業1割
第2種小売業2割
第3種製造業・建設業・農林漁業等3割
第4種飲食業等(他に当てはまらないもの)4割
第5種サービス業・金融保険業・運輸通信業・コンサル業等5割
第6種不動産業6割

かける割合は、こんなふうに業種によって分かれています。

売上から原価を引いたものを粗利といいますが、基本的に、

  • 粗利が低い業種は、かける割合が低く
  • 粗利が高い業種は、かける割合が高く

なっています。

さきほどの2割特例は、簡易課税制度の2割限定バージョンともいえそうです。クリエイター、デザイナー、ライター、コンサルなどのフリーランスは、たいてい5割になります。

第5種(クリエイター・コンサル等)の場合

 課税事業者
5割特例
もらった金額1100円
払った金額-220円
納税-50円
利益830円

クリエイターなど第5類に該当する場合、もらった消費税100円に5割をかけると、納税額は50円です。利益は830円になります。

(2)すでに課税事業者の人と不公平が生じるかも

インボイス 売上2割

ここでひとつ問題になるのは、インボイス登録して新たに課税事業者になった人と、以前から課税事業者になっている人では、同じ課税事業者なのに納税額が違うことです。これはとても不公平ですよね。

既存の課税事業者も2割特例を選択できるようにすると・・・

これは予測ですが、国は、不公平感をなくすために、「既存の課税事業者も2割特例を選べるようにします」といいそうですね。でも、ここで要注意ポイントが。

税務署は、「10月1日からは2割でいいけれど、9月30日までは特例期間ではないので5割で計算してね」とかいいそうです。割合が2つに分かれるなんて、ぜんぜん簡易じゃないですね。

そして、税理士いわく、「消費税申告書の書き方がますます複雑になりそう」。
会計ソフト会社は、「また仕様追加か、きついなあ」と困っていそうです。

(3)2割特例より簡易課税のほうが有利なケースも

区分業種かける割合
第1種卸売業1割
第2種小売業2割
第3種製造業・建設業・農林漁業等3割
第4種飲食業等(他に当てはまらないもの)4割
第5種サービス業・金融保険業・運輸通信業・コンサル業等5割
第6種不動産業6割

あと、さきほどは、簡易課税の第5類のケースを紹介したのですが、第2類だと、かける割合は2割で、2割特例と同じです。第1類だと、かける割合は1割で、簡易課税のほうが有利です。

粗利は売上から原価を引いたものですが、粗利率20%以下、つまり原価率80%以上なら、2割特例より簡易課税のほうが有利です。

粗利率20%以下(原価率80%以上)→ 簡易課税のほうが有利
粗利率20%以上(原価率80%以下)→ 2割特例のほうが有利
 課税事業者
2割特例簡易課税
5割
簡易課税
1割
もらった金額1100円1100円1100円
払った金額-220円-220円-220円
納税-20円-50円-10円
利益860円830円870円

表にしてくらべてみると、簡易課税の5割なら2割特例のほうが有利ですが、簡易課税の1割なら簡易課税のほうが有利です。

卸売や小売のように、原価率が高い業種は、2割特例より簡易課税のほうが有利です。

また、起業したばかりで売上よりも仕入・経費のほうが多い場合は、原則課税にすることで、消費税の還付を受けられます

5.注意点

 免税事業者課税事業者
原則2割特例簡易課税
5割
もらった金額1000円1100円1100円1100円
払った金額-220円-220円-220円-220円
納税-80円-20円-50円
利益780円800円860円830円

消費税の制度は、免税事業者と、課税事業者が原則2割特例簡易課税の3種類あり、合計4種類の事業者の種類があることになります。

複雑でヤバすぎませんか、消費税の制度。どれが一番有利なのか、判定が難しそうです。

(1)制度を選択すると最低2年間は変更できない

また消費税制度の注意点として、免税事業者から課税事業者になったり、原則課税から簡易課税になったりと、いずれも選択すると、2年間、強制的に適用されます

やはり、こっちのほうが有利だからといって、途中で自由に変更することはできません。インボイス制度が始まる前に決めるのは、かなり難しくないでしょうか。

(2)2割特例は3年間だけ、その後は負担増加

あと、2割特例は期間限定であることに注意しないといけませんね。

インボイス 売上2割

インボイス制度開始は2023年10月1日から、2割特例を利用できるのは、そこから3年間だけです。3年間が過ぎると、簡易課税でクリエイターであれば、5割になります。突然、負担が増えることになります。

6.今後気になる点

2割特例はまだ決まったわけではありませんので、今後気になる点をあげてみます。

まず不公平感があることについて、すでに課税事業者になっている人はどうなるのか?希望すれば2割特例を選べるのか?注目ポイントです。

そして、手続きですが、2割特例を選択できる条件はどうなるのか?売上金額など気になります。
また、いつまでに決める必要があるのか?インボイス登録期限の3月31日は早すぎるので、インボイス開始前の9月30日になるのかもしれません。

そして、確定申告ですが、消費税の申告書は複雑ですので、申告方法が簡単になるのを期待したいところです。

関連動画

同様の内容を動画でも解説しています。

MEI 顔イラスト
執筆
MEI(めい)
職業はフリーランスのプログラマー。
請求書とか確定申告とか、わからないことだらけだったので、
困って調べたことを自分なりにまとめて執筆活動もしています。
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