事業復活支援金の計算方法【個人事業主向け】青色申告・白色申告
個人だと最大50万円もらえる、事業復活支援金。実は、売上が大きく減っていても50万円もらえないこともあり、その場合は3月まで待ったほうが良いかもしれません。
どんなときに50万円もらえて、またはもらえないか、青色申告と白色申告のそれぞれのパターン別に計算例を紹介します。
下記の動画もあわせてご覧ください。
目次
1.事業復活支援金の概要
(1)売上の条件
新型コロナの影響で、2021年11月から2022年3月のいずれかの月の売上が1年前または2年前または3年前の同じ月と比較して30%以上減少した事業者です。
売上の比較対象の月ですが、3年前なら2018年11月から2019年3月、2年前なら2019年11月から2020年3月、1年前なら2020年11月から2021年3月となります。
2021年11月から2022年3月のうち、どの月の売上を、何年前の対象期間と比較するかは自分で任意に決めることができます。
3年前までのどこかひと月でも比較して、売上が30%以上減少した月があれば良いですから、もらえる確率が高い支援金ではないかと思います。
(2)給付金額
実際に給付される金額は、11月から3月までの5ヶ月分の売上減少額を基に計算します。
給付額には上限があり、売上の減少率に応じて異なります。また、個人事業主と中小企業でも異なります。
フリーランスなど個人事業主の場合は、売上50%以上減少で最大50万円、売上30%以上減少で最大30万円です。中小企業の場合は、売上によって異なります。売上1億円以下なら、売上50%以上減少で最大100万円、売上30%以上減少で最大60万円です。
売上高(※) | 売上高減少率 | ||
---|---|---|---|
▲50%以上 | ▲30%~50% | ||
中小企業 | 5億円以上 | 250万円 | 150万円 |
1億円以上~5億円未満 | 150万円 | 90万円 | |
1億円未満 | 100万円 | 60万円 | |
個人事業主 | (区分なし) | 50万円 | 30万円 |
※売上を比較する過去の年度の月を含む事業年度の1年間売上
(3)給付額の計算方法
給付額の計算方法です。
基準期間の5ヶ月間の売上から、対象月の売上を5倍した金額を引きます。
基準期間とは、売上の比較に利用する過去の11月から3月までの期間です。対象月は、今年の11月から来年3月までのいずれかの月です。
2.事業復活支援金の給付額の計算例(青色申告)
それでは、ここから、青色申告の場合の具体的な計算例をパターン別に見てみましょう。どのパターンでも2年前の売上と比較することにします。
なお、ここでは、個人事業主・フリーランスのケースを紹介しますが、中小企業の場合も上限額が変わるだけで、計算方法は同じです。
(1)パターン1:売上50%以上減少のケース
最初のパターンは、売上50%以上減少のケースです。
2019年 | 2020年 | 合計 | |||
---|---|---|---|---|---|
11月 | 12月 | 1月 | 2月 | 3月 | |
60万円 | 30万円 | 40万円 | 20万円 | 50万円 | 200万円 |
2021年 | 2022年 | 合計 | |||
---|---|---|---|---|---|
11月 | 12月 | 1月 | 2月 | 3月 | |
40万円 | 30万円 | 20万円 | - | - | - |
この売上表を見ると2020年1月の売上は40万円でしたが、今年1月の売上は20万円ですので、売上は50%減少しました。
そうすると、2020年1月を含む11月から3月までの5ヶ月間の売上合計は200万円ですので、給付額は、200万円から、今年1月の売上20万円に5をかけた金額を引いて、100万円となります。
ただし、個人事業主では、売上50%以上減少の場合、最大50万円ですので、給付額は最終的に50万円となります。
(2)パターン2:売上30%以上減少のケース
次のパターンは、売上30%以上減少のケースです。
さきほどのパターンとは、2年前の売上は同じで、今年の売上だけ変えてみました。
2019年 | 2020年 | 合計 | |||
---|---|---|---|---|---|
11月 | 12月 | 1月 | 2月 | 3月 | |
60万円 | 30万円 | 40万円 | 20万円 | 50万円 | 200万円 |
2021年 | 2022年 | 合計 | |||
---|---|---|---|---|---|
11月 | 12月 | 1月 | 2月 | 3月 | |
36万円 | 30万円 | 28万円 | - | - | - |
2019年11月の売上は60万円でしたが、2021年11月の売上は36万円ですので、売上は40%減少しました。さらに、2020年1月の売上は40万円でしたが、今年1月の売上は28万円ですので、売上は30%減少しました。
これだけ見ると、11月が40%減少と、1月の30%減少より、減少率が大きいですので、11月のほうを選択してしまいかねませんが、実際に計算してみると1月のほうが有利になります。
11月の売上36万円で計算した場合
給付額は、200万円から、36万円に5をかけた金額を引いて、20万円となります。個人事業主では、売上30%以上減少の場合、最大30万円ですが、これより低い金額ですので、給付額は最終的に20万円となります。
1月の売上28万円で計算した場合
給付額は、200万円から、28万円に5をかけた金額を引いて、60万円となります。個人の上限は30万円ですので、給付額は最終的に30万円となります。
計算結果を比べてみると、売上が少ない1月で計算してほうが有利になることがわかります。
売上が30%以上減少した月が複数ある場合は、売上が最も少ない月を選んで計算するようにしましょう。
(3)パターン3:売上50%以上減少だが、50万円もらえないケース
次のパターンは、売上50%以上減少だが50万円もらえないケースです。
こんどは、2年前も売上も、今年の売上も変えてみました。
2019年 | 2020年 | 合計 | |||
---|---|---|---|---|---|
11月 | 12月 | 1月 | 2月 | 3月 | |
80万円 | 30万円 | 40万円 | 20万円 | 50万円 | 220万円 |
2021年 | 2022年 | 合計 | |||
---|---|---|---|---|---|
11月 | 12月 | 1月 | 2月 | 3月 | |
40万円 | 30万円 | 30万円 | - | - | - |
2019年11月の売上は80万円でしたが、2021年11月の売上は40万円ですので、売上は50%減少しました。
2019年11月を含む11月から3月までの5ヶ月間の売上合計は220万円ですので、給付額は、220万円から、11月の売上40万円に5をかけた金額を引いて、20万円となります。
個人事業主では、売上50%以上減少の場合、最大50万円ですが、これより低い金額ですので、給付額は最終的に20万円となります。
売上が50%減少していても今期の売上が多いと、50万円もらえないこともあることがわかります。
(4)パターン2 3月まで待ったほうが良いケース
さきほど、パターン2で、売上30%以上減少のケースを紹介しました。この場合、もらえる金額は最大30万円ですが、慌てて申請せずに3月まで待ったほうが良いかもしれません。
2019年 | 2020年 | 合計 | |||
---|---|---|---|---|---|
11月 | 12月 | 1月 | 2月 | 3月 | |
60万円 | 30万円 | 40万円 | 20万円 | 50万円 | 200万円 |
2021年 | 2022年 | 合計 | |||
---|---|---|---|---|---|
11月 | 12月 | 1月 | 2月 | 3月 | |
36万円 | 30万円 | 28万円 | 20万円 | 25万円 | - |
たとえば、今年1月の売上は30%減少しました。ところが、今年の売上は2月が20万円、3月が25万円になったとします。すると、3月では、2年前と比べて50%減少しました。
1月の売上28万円で計算した場合
給付額は、200万円から、28万円に5をかけた金額を引いて、60万円となります。個人の売上30%以上減少の場合の上限は30万円ですので、給付額は最終的に30万円となります。
3月の売上25万円で計算した場合
給付額は、200万円から、25万円に5をかけた金額を引いて、75万円となります。個人の売上50%以上減少の場合の上限は50万円ですので、給付額は最終的に50万円となります。
このように、売上が50%以上減少した月がまだない場合には、そのような月が発生することを期待して3月まで待ってから申請したほうが良いかもしれません。
ただ、もちろん、資金繰りの問題もありますので、状況に応じて判断していく必要はあると思います。
3.事業復活支援金の給付額の計算例(白色申告)
次に、白色申告の場合の具体的な計算例をパターン別に見てみましょう。
この章の対象者は以下のような人です。
- 事業所得で白色申告の人
- 途中まで(途中から)白色申告の人
- 主な収入を雑所得・給与所得で確定申告した人
- 青色申告を行っているが、各月の売上の記載がない場合
(1)パターン1:売上50%以上減少のケース
最初のパターンは、白色申告で売上50%以上減少のケースです。
年 | 年間売上 | 月平均 |
---|---|---|
2019年 | 540万円 | 45万円 |
2020年 | 480万円 | 40万円 |
白色申告の場合は月々の売上はわかりませんので、年間の売上を12で割って月平均の売上を計算します。こちらの例だと、2019年の月平均は45万円、2020年の月平均は40万円です。それを、2019年11月から2020年3月までの売上欄に転記します。
2019年 | 2020年 | 合計 | |||
---|---|---|---|---|---|
11月 | 12月 | 1月 | 2月 | 3月 | |
45万円 | 45万円 | 40万円 | 40万円 | 40万円 | 210万円 |
2021年 | 2022年 | 合計 | |||
---|---|---|---|---|---|
11月 | 12月 | 1月 | 2月 | 3月 | |
30万円 | 30万円 | 20万円 | - | - | - |
この売上表を見ると2020年1月の売上は40万円でしたが、今年1月の売上は20万円ですので、売上は50%減少しました。
そうすると、2020年1月を含む11月から3月までの5ヶ月間の売上合計は210万円ですので、給付額は、210万円から、今年1月の売上20万円に5をかけた金額を引いて、110万円となります。
ただし、個人事業主では、売上50%以上減少の場合、最大50万円ですので、給付額は最終的に50万円となります。
(2)パターン2:売上30%以上減少のケース
次のパターンは、白色申告で売上30%以上減少のケースです。
年 | 年間売上 | 月平均 |
---|---|---|
2019年 | 720万円 | 60万円 |
2020年 | 360万円 | 30万円 |
年間の売上を12で割って月平均の売上を計算します。こちらの例だと、2019年の月平均は50万円、2020年の月平均は30万円です。それを、2019年11月から2020年3月までの売上欄に転記します。
2019年 | 2020年 | 合計 | |||
---|---|---|---|---|---|
11月 | 12月 | 1月 | 2月 | 3月 | |
60万円 | 60万円 | 30万円 | 30万円 | 30万円 | 210万円 |
2021年 | 2022年 | 合計 | |||
---|---|---|---|---|---|
11月 | 12月 | 1月 | 2月 | 3月 | |
40万円 | 50万円 | 21万円 | - | - | - |
2019年11月の売上は60万円でしたが、2021年11月の売上は40万円ですので、売上は33%減少しました。さらに、2020年1月の売上は30万円でしたが、今年1月の売上は21万円ですので、売上は30%減少しました。2019年11月から2020年3月までの5ヶ月間の売上合計は210万円です。
これだけ見ると、11月が33%減少と、1月の30%減少より、減少率が大きいですので、11月のほうを選択してしまいかねませんが、実際に計算してみると1月のほうが有利になります。
11月の売上40万円で計算した場合
給付額は、210万円から、40万円に5をかけた金額を引いて、10万円となります。個人事業主では、売上30%以上減少の場合、最大30万円ですが、これより低い金額ですので、給付額は最終的に10万円となります。
1月の売上21万円で計算した場合
一方、1月の売上21万円で計算した場合、給付額は、210万円から、21万円に5をかけた金額を引いて、105万円となります。上限は30万円ですので、給付額は最終的に30万円となります。
計算結果を比べてみると、売上が少ない1月で計算してほうが有利になることがわかります。
(3)白色⇒青色に変更したケース
次のパターンは、2019年は白色で、2020年に青色に変更したケースです。
年 | 年間売上 | 月平均 |
---|---|---|
2019年 | 540万円 | 45万円 |
2020年 | 360万円 | - |
2020年の月々の売上はわかっています。2019年は年間の売上を12で割って月平均の売上を計算し、45万円です。それを、2019年11月から12月までの売上欄に転記します。
2019年 | 2020年 | 合計 | |||
---|---|---|---|---|---|
11月 | 12月 | 1月 | 2月 | 3月 | |
45万円 | 45万円 | 40万円 | 30万円 | 50万円 | 210万円 |
2021年 | 2022年 | 合計 | |||
---|---|---|---|---|---|
11月 | 12月 | 1月 | 2月 | 3月 | |
30万円 | 30万円 | 20万円 | - | - | - |
すると、2020年1月の売上は40万円でしたが、今年1月の売上は20万円ですので、売上は50%減少しました。
2019年11月から2020年3月までの5ヶ月間の売上合計は210万円ですので、給付額は、210万円から、1月の売上20万円に5をかけた金額を引いて、110万円となります。
ただし、最大50万円ですので、給付額は最終的に50万円となります。
(4)青色⇒白色に変更したケース
次のパターンは、2019年は青色で、2020年に白色に変更したケースです。
年 | 年間売上 | 月平均 |
---|---|---|
2019年 | 540万円 | - |
2020年 | 360万円 | 30万円 |
2019年の月々の売上はわかっています。2020年は年間の売上を12で割って月平均の売上を計算し、30万円です。それを、2020年1月から3月までの売上欄に転記します。
2019年 | 2020年 | 合計 | |||
---|---|---|---|---|---|
11月 | 12月 | 1月 | 2月 | 3月 | |
60万円 | 50万円 | 30万円 | 30万円 | 50万円 | 200万円 |
2021年 | 2022年 | 合計 | |||
---|---|---|---|---|---|
11月 | 12月 | 1月 | 2月 | 3月 | |
30万円 | 30万円 | 20万円 | - | - | - |
すると、2019年11月の売上は60万円でしたが、2021年11月の売上は30万円ですので、売上は50%減少しました。
2019年11月から2020年3月までの5ヶ月間の売上合計は200万円ですので、給付額は、200万円から、11月の売上30万円に5をかけた金額を引いて、50万円となります。
ただし、最大50万円ですので、給付額は最終的に50万円となります。
まとめ
最後に、今回の内容をまとめてみます。
- 事業復活支援金の個人事業主の最大金額は、売上50%以上減少なら50万円、売上30%以上減少なら30万円
- ただし、上限金額なので、必ず50万円もらえるわけではありません。
- 当てはまる月が複数あるときは、売上が最も少ない月を選ぶと有利です。
- 白色申告の場合、年間売上を12で割って月平均を計算し、その値を利用します。
- 売上が50%以上減少した月がない場合には最大30万円しかもらえませんので、3月まで待ったほうが良いかもしれません。