10月14日(木)に衆議院が解散され、10月31日(日)に第49回衆議院議員総選挙が行われることになりました。
衆議院解散から投開票までわずか17日間しかなく、これは戦後最短です。
衆議院の定数は小選挙区289、比例代表176、合計465議席です。
各党の政策・公約(マニフェスト)比較
衆院選解散から衆院選まで時間がなく、各党の政策・公約(マニフェスト)が急ピッチで作成されました。
経済政策、コロナ対策、憲法改正、原発などが大きな論点となると考えられますが、当サイトでは、給付金および税制と経済政策のみに絞って比較します。
全てを紹介しきれませんので、具体的な数値や方針を主に記述します。
公約は「個人向け」「事業者向け」に分類していますが、これは「主に個人向け」「主に事業主向け」という意味であり、両者に共通する場合もあります。
今回の衆院選では、コロナ禍で経済的に大きな打撃を受けた個人・事業者が多いことから、経済政策が大きな論点となっており、いつもの衆院選よりも具体的な数値や政策が多く見られるのが特徴です。
各党のホームページやTV・新聞メディアでのニュース情報を参考にしていますが、間違いがある場合にはご容赦ください。各政党のWEBサイトのリンクについては、衆院選特設サイトがある場合はそのページに、ない場合は政党のトップページに対してリンクを貼っています。
自由民主党(自民党)
個人向け
- 非正規雇用者・女性・子育て世帯・学生をはじめ、コロナでお困りの皆様への経済的支援。
- マイナンバーカード機能のスマートフォン搭載、健康保険証としての利用や運転免許証・在留カードとの一体化、社会保障・税・災害の3分野以外への情報連携を拡大し、マイナンバー利活用を推進
事業者向け
- 地域・業種を限定しない事業継続・事業再構築支援を、事業規模に応じて実施。
- 中小企業・小規模事業者への協力金・月次支援金の支給迅速化、実質無利子・無担保融資、返済猶予の要請、事業再構築補助金をはじめ、フリーランスの方々を含めて雇用と事業継続に必要な支援
- 飲食、宿泊、文化芸術・エンターテインメントなどの業種の事業継続を支援
- 雇用調整助成金や在籍型出向により、雇用と暮らしを守る
- コロナ禍の影響を受ける中小企業・小規模事業者の事業存続・雇用維持に、大胆かつ総合的な支援
- 中小企業・小規模事業者の新分野展開や業態転換を支援するため、事業再構築補助金を拡充
- 中小企業・小規模事業者の生産性向上・事業再編や、スタートアップの成長を、徹底的に支援
個人・事業者共通
- 数十兆円規模の経済対策
- 「金融緩和」「機動的な財政出動」「成長戦略」を総動員し、傷んだ日本経済を立て直し、「成長」の軌道に乗せる
- DX(デジタル・トランスフォーメーション)の推進をはじめ新たな経済社会システム構築
【出典】自民党:公約・政策パンフレット
公約の特徴
公約の内容は多岐にわたっていますが、全体的に抽象的な内容が多く、具体的な数値はほとんど見られません。
現在、政権を運営している党であるためか、新規の政策というよりも既存の政策の継続や拡充が多くあります。すでに実施中の内容も多いため、実現性の面では高いと考えられます。
公明党
個人向け
- 18歳以下のすべての子どもに「未来応援給付」(一人あたり一律10万円相当の支援)
- 新たなマイナポイント(一人あたり一律3万円相当)を付与
- 結婚、妊娠・出産から、幼児~高等教育までの支援を段階的に充実させる、「子育て応援トータルプラン」を策定
- 出産育児一時金(42万円)を増額
- 感染収束を前提として、「新・Go Toキャンペーン」(仮称)
事業者向け
- 「雇用調整助成金」の特例措置等について、本年12月末までリーマンショック時(中小企業で最大9割)以上の水準を確保する
- 再就職、教育訓練、非正規雇用労働者のキャリアアップ、賃上げを行う中小企業等に対する支援の拡充
- 緊急小口資金等の特例貸付や、住居確保給付金の再支給、自立支援金について、申請期限の延長や支給要件の緩和
- 賃上げや賃金格差の是正
- 実質無利子・無担保融資について、コロナの影響が続く当面の間、継続
- 飲食店の時短・休業に対する協力金の先払いや申請手続き・審査の簡素化
- 売上が激減している中小事業者を支援する「月次支援金」を拡充
- 「事業再構築補助金」等を大幅に拡充
- CO₂の削減効果が高い設備や、テレワークの普及に向けたハード・ソフトウェアの導入等を後押しする「グリーン・デジタルトランスフォーメーション補助金」(仮称)を創設
【出典】公明党:2021衆院選重点政策
公約の特徴
個人向けでは、3万円相当のマイナポイントや、出産育児一時金の増額、新・Go Toキャンペーンなど、ある程度、実現性が見込まれる独自の公約が特徴的です。
事業者向けでは、自由民主党との連立与党として、既存の政策の継続や拡充が多く見られます。
立憲民主党(立民)
個人向け
- 低所得者への年額12万円の現金給付
- 税率5%への時限的な消費税減税
- 年収1000万円程度まで1年間所得税免除
- 給付付き税額控除への転換、基礎控除の拡充
- 高所得者向けに所得税の最高税率を引き上げ
- 現在、分離課税になっている金融所得について、将来の総合課税化を見据え、国際標準まで強化
- ベーシック・サービス(医療、介護、障がい福祉、子育て、保育、教育、放課後児童クラブ等)の充実
事業者向け
- 時給1500円を将来的な目標に、中小零細企業を中心に公的助成をしながら、最低賃金を段階的に引き上げ
- 法人税は、所得税と同様、超過累進税率を導入
- コロナ禍が収束して経済が回復するまでの間は、インボイス制度導入延期
- グリーン(環境・エネルギー分野)、ライフ(医療・介護分野)、ローカル(農業・観光分野)で、地産地消、地域のニーズに応じた新たな地場産業を創出
- 特に、中小・小規模事業者の専門性や独自性を伸ばす公的支援を拡充
【出典】立憲民主党「政策集2021」
公約の特徴
個人向けでは、低所得者への12万円の給付金、所得税の減税(年収1000万円程度まで)、消費税5%への減税が特徴です。これらを補完する財源の詳細は触れていませんが、野党第一党として、ある程度、落ち着いた公約となっています。
事業者向けでは、時給1500円を目標に最低賃金引き上げ、インボイス制度導入延期が特徴的です。また、法人税にも累進税率を導入するなど、大企業優遇税制を是正する内容を盛り込んでいます。
日本共産党(共産)
個人向け
- 収入が減った人向けに、1人10万円を基本に「暮らし応援給付金」を5兆~6兆円規模で支給、中間層(年収1000万円未満程度)を含め幅広く対象・生活が困窮している低所得者には手厚い支給
- 消費税率を5%に引き下げ
- 生活保護を「生活保障制度」に改め、必要な人がすべて利用できる制度に、支給水準を生存権保障にふさわしく引き上げる、保護申請の門前払いや扶養照会をやめる
- 「住居確保給付金」「生活福祉資金特例貸し付け」の支援の延長・拡大、給付への切り替えなどの支援を強化
- フードバンク、子ども食堂など民間の食料支援の取り組みに公的な支援
- 大学・短大・専門学校の学費をすみやかに半額に引き下げ、高等教育の無償化、入学金制度をなくす
- 「自宅4万円、自宅外8万円」の給付奨学金を75万人が利用できるように拡充、すべての奨学金を無利子に、奨学金返済が困難になった場合の減免制度
- 学生支援緊急給付金の継続的な実施、休学や卒業延期した学生の学費補助など
- 高校教育の無償化
- 学校給食の無償化
- 児童手当の18歳までの支給、児童扶養手当、就学援助の額と対象の拡大
- 富裕層の株取引への税率を欧米並みの水準に引き上げ
- 所得税・住民税の最高税率を現行の55%から65%に引き上げ
- 富裕層の資産に毎年低率で課税する富裕税や、為替取引額に応じて低率の課税を行うなど、新たな税制を創設
事業者向け
- 最低賃金を中小企業への十分な支援とセットで時給1500円に引き上げ
- 中小企業、個人事業主、フリーランスに持続化給付金・家賃支援給付金を再支給するとともに、コロナ危機が終息するまで継続
- 雇用調整助成金のコロナ特例も継続
- コロナ対応借入分を軽減・免除する仕組み
- 中小企業予算を1兆円規模に増額
- 消費税のインボイス制度を廃止
- コロナ危機で納税困難に陥っている事業者に消費税を減免
- 大企業優遇税制を廃止・縮小
- 法人税率を安倍政権以前の28%に戻す
【出典】日本共産党:2021総選挙パンフ
公約の特徴
具体的な公約・政策の多さでは最も多い党です。
個人向けでは、一部は立憲民主党と似ており、収入が減った人に1人10万円の給付金、消費税5%への減税が掲げられています。大学等の授業料の半減、入学金の廃止、「自宅4万円、自宅外8万円」の給付奨学金といった教育分野での具体的な方針が盛り込まれているのが特徴です。
事業者向けでは、時給1500円へ引き上げ、大企業優遇税制を廃止など立憲民主党と同等な内容のほか、インボイス制度廃止、コロナで苦しむ事業者に消費税を減免など、立憲民主党よりも突っ込んだ内容が掲げられています。
日本維新の会(維新)
個人向け
- 2年(目安)に期間を限定した消費税5%への引き下げを
- 年金保険料をゼロ
- NISAを恒久措置とし、投資枠の上限拡大、20年間のつみたて期間を確保
- 義務教育および幼児教育、高校、大学の全過程での完全無償化
- 給食の無償化
- 公的年金を賦課方式から積立方式に移行し、払い損がなく世代間で公平な仕組みを作る
- 最低所得保障制度(給付付き税額控除またはベーシックインカム)
個人・事業者共通
- 所得税・法人税を減税する「フロー大減税」
- マイナンバー制度の活用や銀行口座との紐付けにより、個人・法人の資産と収入を正確に把握し、効率的かつ公平で抜け漏れのない徴税を行う
【出典】日本維新の会政策提言
公約の特徴
「維新八策 2021」と称された基本政策を掲げており、全体的に政治論的な毛色が強い内容となっています。
個人向けでは、消費税5%への減税、年金保険料ゼロ、教育の完全無償化などが特徴です。
事業者向けは、各産業分野別の細かい政策が掲げられています。
「フロー大減税」と称して、消費税・所得税・法人税などの大減税について触れています。
国民民主党(国民)
個人向け
- 一律10万円を現金給付(低所得者は20万円、高所得者には確定申告時に課税)
- 5%に消費税減税(コロナ禍の影響が収束し、経済が回復するまで)
- 日本型「ベーシックインカム」創設(「給付付き税額控除」 と「プッシュ型支援」)
- 教育の無償化、3歳から義務教育
- 児童手当一律月額15,000円(18歳まで)
- 総合支援資金の再貸付延長
- 税・保険料の猶予延長、減免措置の延長・拡充
- 富裕層への課税強化
事業者向け
- 中小企業を支援しつつ最低賃金引き上げ
- 中小企業の社会保険料負担半減
- 事業規模に応じて家賃など固定費の9割(最大月2億円)を支給
- 事業者の消費税納税免除(コロナ禍の影響が収束するまで)
- インボイス制度を廃止
【出典】国民民主党:政策パンフレット
公約の特徴
個人向けでは、他の野党と似ており、1人10万円の給付金、消費税5%への減税、ベーシックインカム等が掲げられています。教育無償化とともに3歳から義務教育という部分は特徴的です。
事業者向けでは、共産党と同じく、インボイス制度廃止、消費税納税免除のほか、家賃など固定費の9割(最大月2億円)を支給というのが特徴的です。
れいわ新選組(れいわ)
個人向け
- 最大3ヶ月間、1人あたり毎月20万円の現金給付
- エッセンシャルワーカーには危険手当24,000円
- ステイホーム期間中、消費税ゼロ、社会保険料ゼロ、水道・光熱費ゼロ、通信費ゼロ
- 消費税を廃止
- 社会保険料負担を軽減(後期高齢者医療制度を全額公費に)「現役世代」が平均して毎月約5000円可処分所得が増える
- デフレ脱却給付金(目標とするインフレ率に到達するまで1人3万円を給付)
- 全ての子どもに毎月3万円の給付金。
- 小中学校に無償給食
- 奨学金徳政令。奨学金返済に苦しむ約580万人の借金をチャラに
- 学費を無償化。幼児から大学生まで、保育・教育は完全無償化
- 国民健康保険・協会けんぽの国費割合を増やして保険料を引き下げ
- 介護保険の国費割合は 50%以上にして保険料を引き下げ
- 生活保護制度の拡充、最低保障年金の検討
事業者向け
- ステイホーム期間中、すべての事業者に粗利補償
- ローンなど債務の猶予、利息の補填
- 最低賃金を全国一律1500円に
【出典】れいわ新選組:政策
公約の特徴
全体的に最も挑戦的な公約を掲げています。
個人向けでは、最大3ヶ月間1人あたり毎月20万円の給付金、子供に毎月3万円の給付金、消費税廃止、ステイホーム期間中は社会保険料・光熱費・通信費ゼロなどが特徴です。580万人の奨学金を帳消しというのもインパクトがあります。ただし、その財源については触れられておらず、実現性は未知数です。
事業者向は、ステイホーム期間中は粗利補償という部分が特徴です。
社民党(社民)
個人向け
- 消費税3年間ゼロ
- 生活困窮者に緊急に特別給付金10万円を支給
- 低所得の子育て世帯に対する生活支援特別給付金を速やかに支給
- 社会保険料の軽減
- 住居確保給付金の支給期間を撤廃し、普遍的な家賃補助制度へ改変、民間のアパート空き室を借り上げ、現物給付を行う
- 生活保護制度を利用しやすく
- 富裕層への課税強化
事業者向け
- 最低賃金を全国一律1500円に引き上げ
- 内部留保への課税、大企業への課税強化
【出典】社民党:2021年 重点政策
公約の特徴
個人向けでは、他の野党と似ており、1人10万円の給付金、消費税3年間ゼロ等が特徴です。
事業者向けも、他の野党と似ており、最低賃金1500円に引き上げ、大企業の課税強化等が特徴です。
NHKと裁判してる党弁護士法72条違反で (N党)
個人向け
- 10万円以上相当の期限付き電子マネー
- 消費税を5%に減税
- ベーシックインカムの導入
【出典】NHKから国民を守る党:基本政策
公約の特徴
一部の内容しか公約が発表されていません。
個人向けとして、他の野党と同じく、消費税5%に減税、ベーシックインカムの導入が掲げられています。
政策・公約まとめ
各政党の政策・公約を一部の内容に絞ってまとめます。
政党
略称 |
給付金 |
消費税 |
他 |
自民 |
非正規など一部に経済的支援 |
(言及なし) |
数十兆円の経済対策 |
公明 |
・18歳以下に一律10万円相当
・マイナンバーカードに
3万円相当ポイント |
(言及なし) |
|
立民 |
低所得者に年間12万円 |
5%に減税(一時的) |
年収1000万円程度まで
1年間所得税免除 |
共産 |
収入が減った人向けに
基本10万円 |
5%に減税 |
学生に給付奨学金 |
維新 |
ベーシックインカム |
5%に減税(一時的) |
年金保険料ゼロ |
国民 |
一律10万円、
低所得者は20万円 |
5%に減税(一時的) |
子供に月額1万5千円 |
れいわ |
最大3ヶ月間、月額20万円 |
廃止 |
社会保険料ゼロ(一時的)
子供に月額3万円 |
社民 |
生活困窮者に10万円 |
3年間だけ0% |
|
N党 |
10万円以上相当の
期限付き電子マネー |
5%に減税 |
|
給付金については、多くの党が10万円~20万円の範囲で、一律もしくは低所得者に給付を検討しています。最もインパクトのある公約を掲げているのは「れいわ」で、最大3ヶ月間、毎月20万円となっています。
消費税については、現行与党の自民・公明以外の野党の多くが5%減税を掲げています。「れいわ」が廃止、「社民」が3年間だけゼロを掲げています。
他、立憲民主党が、年収1000万円程度までの人の所得税を1年間免除を発表しています。学生に給付奨学金であったり、年金保険料をゼロ、子供に給付金を掲げている政党もあります。
その他
選挙の仕組みについて
衆院選は小選挙区と比例代表制の2つの方式に分かれています。仕組みを詳細を下記で解説しています。