初心者でも5分でわかる!貸借対照表の見方

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貸借対照表

会社の決算の際に作成されるのが貸借対照表です。
会社の経営状態が一目でわかる優れものということは知っていても、どうやって見たらいいのか、わからないということはありませんか?

この記事では、「貸借対照表」について、初心者に向けて、

  • そもそも貸借対照表とは何か
  • 貸借対照表を用いて会社の経営状態を知る方法
  • 貸借対照表にまつわるよくある疑問

についてご紹介します。

1.貸借対照表とは?

貸借対照表とは、企業が持っているすべての財産を一度に見ることができる表です。
貸借対照表は、決算の際に必要となる決算書の一つで、通常四半期ごとや各決算期末時点で作成されます。

(1)貸借対照表の目的

貸借対照表の目的は、経営状態を客観的に把握することにあります。貸借対照表から経営のリスクや課題を発見し、改善することができます。

また、貸借対照表のもう一つの目的は投資家や債権者などの利害関係者に対して、企業の財政状況や経営成績を開示することにあります。

(2)損益計算書と貸借対照表ってどう違うの?

損益計算書は「一会計期間における損益」を示しています。つまり、企業がある期間に「どのようにして、どれだけ儲けているのか」を示しています。
貸借対照表は「ある時点での財政状況」を示しています。つまり、「どのように資金を調達し、調達した資金をどのような資産として運用しているのか」を示しています。

(3)「貸借対照表」という用語の由来

そもそも、「貸借」を「対照」する表とは何を意味しているのでしょうか。貸借対照表は複式簿記のルールに則って作成されており、「貸借」という言葉はこの複式簿記に由来しています。

単式簿記と複式簿記の違い

簿記とは、お金や財産の出納や増減を記録する仕組みです。簿記は、大きく「単式簿記」と「複式簿記」に分けられます。

  • 単式簿記:お金の動きを一面から表す。お金を何に使い、あとどれだけ残っているかが記されるいわば家計簿のようなもの
  • 複式簿記:お金の動きを二面から表す。単式簿記では見ることができなかったお金と財産の増減を一緒に見ることができる

単式簿記

それでは単式簿記の具体例を見ていきましょう。
こちらは現金の増減を表す、現金出納帳です。

現金出納帳
日付 項目 摘要 入金額 支出額 残高
5月10日 売上 A商店に売上 200,000 200,000
5月11日 借入金 B銀行から借入 300,000 500,000

単式簿記は残高が基準となっているため、とても簡単でわかりやすいのが特徴です。

複式簿記

続けて、上の内容を複式簿記で表現してみます。

仕訳帳
日付 借方 貸方 摘要
勘定科目 金額 勘定科目 金額
5月10日 現金 200,000 売上高 200,000 A商店に売上
5月11日 現金 300,000 借入金 300,000 B銀行から借入

表左側の借方に入金した現金を書きます。表右側の貸方にはその発生原因を書きます。

複式簿記ではこのようにひとつの取引について、その結果と原因という二面から示します。この二面を、借方と貸方で表し、借方(結果)は表の左側に記入し、貸方(原因)は右側に記入します

前述の例だと、現金20万円、30万円は結果として手に入ったのお金なので借方に記入し、その原因である売上と銀行からの借り入れは貸方に記入します。
複式簿記は、貸方と借方の合計額は必ず一致するようになっています。

このように企業におけるお金の動きを記帳していくことを仕訳作業といい、日々の仕訳を勘定科目ごとに合計して一覧にしたものが「貸借対照表」です。貸借対照表は、表の左右の合計が必ず一致することから、「バランスシート(B/S)」とも呼ばれます。

(4)貸借対照表から読み取れる情報

貸借対照表は、企業がある時点において、どのくらいの財産や権利を所有しているかを表しています。貸借対照表からは以下の情報が読み取れます。

  • 資産    :会社が集めた資金をどのように保有・運用しているのか
  • 負債・純資産:会社が事業に必要な資金をどのように集めたのか

2.貸借対照表の見方

(1)左側に「資産」、右側に「負債」「純資産」

貸借対照表は大きく左右2つのブロックに分かれており、右側のブロックがさらに上下2つのブロックにわかれています。
左側のブロックには「資産」、右側のブロックは上から「負債」と「純資産」が記載されています。

貸借対照表
資産 負債
①流動資産 ③流動負債
現金預金
受取手形
売掛金
有価証券
商品
支払手形
買掛金
短期借入金
②固定資産 ④固定負債
土地
建物
機械
長期借入金
社債
⑤純資産
資本金
利益余剰金
合計 合計

それでは、それぞれの項目を具体的に見ていきましょう。

(2)資産は2つ、負債も2つに分類

資産

資産は「流動資産」と「固定資産」に分けられます。上段が流動資産、下段が固定資産。原則として現金化しやすいものから順番に並んでいます

①流動資産

決算から1年以内に現金化できる資産を示します。現金・預金・売掛金・有価証券・棚卸金などが該当します。

②固定資産

決算から1年以内に現金化されない資産を示します。会社で長期間使用されるものが多く含まれ、土地・建物・備品・投資有価証券(注)などが該当します。

(注)
売買を目的とする短期所有や、決算日から満期までの期間が1年以内の有価証券は「有価証券」と呼び、貸借対照表では流動資産に区分されます。それに対して、決算日から満期までの期間が1年以上の有価証券のほか、子会社や関連会社の株式などのことを「投資有価証券」と呼び、貸借対照表では固定資産に区分されます。

負債

負債とは、返済しなければならないお金。負債も資産と同じように、「流動負債」と「固定負債」にわけられます。

③流動負債

決算から1年以内に返済しなければならない負債を示します。支払手形・買掛金・未払金などが該当します。

④固定負債

決算から1年以上後に返済することになっている負債を示します。長期借入金・社債などが該当します。

⑤純資産

返済する必要のないお金。株主が出資する資本金や、過去の利益の積み上げを表します。純資産は負債と異なり、返済する必要のない資金なので、純資産がどれだけあるかが会社の健全性を判断する重要な指標になります。

3.会社の健全性を判断する4つの指標

貸借対照表は、会社の財政状況を表すものです。その会社が健全かどうかを判断するためには、一つひとつの項目に注目するよりも、それぞれの項目のバランスがとれていることが大切です。

その会社が安全で健全な経営をしているかどうか判断するための、代表的な4つの指標があります。この4つの指標を使って、会社の健全性をチェックしてみましょう。

①「自己資本比率」で会社の健全性をチェック

1つ目の指標は「自己資本比率」です。「自己資本比率」とは、会社の全財産のうち、返済しなくてもよい資本(純資産)の比率がどれくらいあるのかを示したものです。

自己資本比率(%)=自己資本(純資産)÷総資産(資産の合計)×100

自己資本比率が高ければ高いほど、返済の必要のない資金で会社が運営されていることを意味しています。つまり、自己資本比率が高いほど、その会社が健全であると言えます。逆に自己資本比率が低ければ、借金が多い会社であると考えられます。

②「流動比率」と会社の支払い能力をチェック

2つめの指標は「流動比率」です。「流動比率」とは、すぐに支払わなければならない流動負債に対して、すぐに現金化できる流動資産の比率を示したものです。「流動比率」によって、会社の支払い能力を判断することができます。

流動比率(%)=流動資産÷流動負債×100

流動比率が高いほど、その会社の支払い能力が高いと判断できます。逆に、流動比率が低いほど、すぐに現金化できる資産に対して、すぐに支払い義務の到来する負債が多いことになり、支払能力の低い会社であると判断することができます。

③「当座比率」で会社の支払い能力をさらに厳しくチェック

3つ目の指標は「当座比率」です。先ほど「流動比率」が会社の支払い能力を判断する指標であるとお伝えしましたが、「当座比率」はさらに厳しく会社の支払い能力を判断する指標です。

「流動比率」とは、流動負債に対する流動資産の比率でしたね。この流動資産の中には棚卸資産(商品や原材料など)も含まれています。もしも商品が売れなかった場合は現金化されないので、支払い能力を判断するにはやや不確実な部分があります。
流動資産のうち、確実に現金化できる、現金および預金・受取手形・売掛金などを示したのが当座資産です。「当座比率」とは、流動負債に対する当座資産の比率を示したものです。

当座比率(%)=当座資産÷流動負債×100

当座比率が100%以上あれば、その会社の短期での支払い能力が十分にあると判断できます。逆に100%未満だと、短期での支払い能力が不十分だと判断できます。
仮に流動比率が200%以上あるのに、当座比率が100%以下になるような場合は注意が必要です。過剰に在庫を抱えている、もしくは長期間商品が売れ残っている疑いがあります。

④「固定比率」で会社の長期的な支払い能力をチェック

4つ目の指標は「固定比率」です。自己資本に対する固定資産の比率を示しています。「固定比率」によって、会社の長期的な支払い能力を判断することができます。つまり、固定資産に投資した資金が、どれくらい自己資本でまかなわれているかを表しています。
固定資産は土地・建物・備品・投資有価証券といった、すぐに現金化できない資産なので、できるだけ返済義務のない自己資本でまかなわれていたほうが良いとされています。

固定比率(%)=固定資産÷自己資本×100

固定比率が100%以下であれば、固定資産より自己資本のほうが大きいということがわかります。つまり会社が長期的に保有する固定資産を自己資本だけでまかなっており、経営は健全な状態にあると判断できます。

4.貸借対照表でよくある疑問

債務超過とはどのような状態なのか

よく耳にする「債務超過」とはどのような状態を指すのでしょうか。債務超過は貸借対照表から理解することができます。

債務超過は、会社が抱えている負債の総額が、資産の総額を超えている状態です。言い換えると、会社が持っている資産すべて返済に充てたとしても、負債をなくすことができない状態なのです。

しかし、債務超過が必ずしもすぐさま倒産に結びつくわけではありません。その理由としては、負債の中にはすぐに支払わなくてもよい固定負債などが含まれていることや、流動資産に余裕があれば直近の支払いは滞らないといったことが挙げられます。

とはいえ、債務超過が会社の経営にとって危険な状態であるには変わりありません。債務超過に陥ると、金融機関からの融資を受けることが難しくなり、取引先や仕入れ先からの信用も失ってしまいます。債務超過の状態が続けば、いずれは会社の存続が難しくなるでしょう。

債務超過と赤字はどう違うのか

債務超過と赤字は、どちらも経営状態の悪化を意味している点では共通しています。ただし、債務超過は貸借対照表から発生するのに対して、赤字は損益計算書から発生します。
債務超過はある時点での負債が資産を超えている状態であり、赤字は一定期間での費用が収益を超えている状態を意味します

債務超過と同じように、赤字だからと言って、すぐさま倒産に繋がるわけではありません。赤字であったとしても、翌年以降に売り上げを伸ばして支出をまかなうことができれば赤字を解消できます。ただし、赤字が継続して純資産が減ってしまうと債務超過に繋がるので注意が必要です。

人は資産じゃなくてコストになる

「我が社にとっては人が資産です」という言葉をよく耳にします。確かに、人がいなければ会社は成り立ちません。そう考えると会社にとって、人は資産と言えます。
しかし会計上はどうなのでしょうか?実は、人(従業員)は資産ではなくてコスト(費用)として計上されます。なぜなら従業員を雇えば、会社は従業員に対して月給あるいは賞与の支払い義務が発生するからです。月給も賞与も会計上は費用だからです。

まとめ

会社の経営状態が一目でわかるのが貸借対照表です。会社の健全性をチェックし、会社の課題を発見するために、ぜひ貸借対照表を役立ててみてくださいね。

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服部
監修
服部 貞昭(はっとり さだあき)
東京大学大学院電子工学専攻(修士課程)修了。
CFP(日本FP協会認定)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。
ベンチャーIT企業のCTOおよび会計・経理を担当。
税金やお金に関することが大好きで、それらの記事を2000本以上、執筆・監修。
「マネー現代」にも寄稿している。
エンジニアでもあり、賞与計算ツールなど各種ツールも開発。
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