住民税を安くする方法にはどんなものがある?|節税方法と効果を解説
お仕事をしている方なら誰にとっても頭が痛い「住民税」の負担……少しでも軽くしたいところですよね。今回の記事では住民税…[続きを読む]
住民税は高額な税金で、収入のある皆さんにとって重い負担となっているでしょう。
この記事では、住民税の支払いが苦しいとき、どうしても支払うことが難しいときにどうすればいいのか、税理士事務代表の杉谷大輔さんに解説していただきます。
目次
個人が支払う住民税(個人住民税)は、道府県民税と市町村民税※を総称した税金で、市町村(特別区)に納めます。
この住民税の負担が重すぎて支払いが難しい場合、市町村に掛け合って負担を軽減することは可能なのでしょうか? どのような対応が可能なのでしょうか?
※東京都は都民税で、東京都23区の場合は特別区民税
住民税が支払えない、と思った時はまずは市町村(特別区)の市民税担当へ相談しましょう。
Google検索で、「〇〇市(お住まいの市)+個人住民税+支払い」で検索すれば、担当する部署の電話番号が出てきます。
支払いが困難となった理由や経済状況によっては、
することも可能です。
どういった方が猶予などを受けられるかはお住まいの市町村によって取り扱いが異なりますが、たとえば大阪市の場合、次のいずれかに該当する人のうち、住民税を一括で支払うことが困難な人については、申請によって市税の支払いが最大1年間猶予されます。
出典:大阪市HP
市町村によって取り扱いが異なりますが、多くの市町村で救済措置が用意されています。
たとえば大阪市では、解雇や倒産によって失業した方については、前年と比べて収入の減少が見込まれなかったとしても最大で全額の免除を受けることができます。また、解雇や倒産による失業でなくても、今年の所得の金額が前年の6割以下に減少することが見込まれる場合は、所得の減少割合に応じた減額を受けることも可能です。
なお、大阪市の場合、減免を受けるためには預貯金などの金融資産が一定金額以下であることが要件の一つとなっているので、実際に減免の申請を行う場合はご注意ください。
出典:大阪市HP
住民税には個人住民税と法人住民税がありますが、サラリーマンの方や個人事業主の方が負担する「個人住民税」の納付方法には以下の3通りがあります。
特別徴収と普通徴収は選択制でないため、会社から給与を受けているサラリーマンやアルバイトが普通徴収を希望したとしても、会社がそれを認めることはできません。
特別徴収における住民税の個人ではなく勤務先の会社が行うので、個人としてその支払いの猶予や分割を受けることはできません。一方、(1)(2)で解説した減免は普通徴収と同様に受けることが可能です。
普通徴収の方が期限(6月末、8月末、10月末、翌1月末)までに住民税の支払いを行わず滞納となった場合は、滞納となった期間に応じた延滞金が発生します。
延滞金の率は納期限後1か月までが年2.4%、それ以降が年8.7%ですから、たとえば10万円の住民税を1年後に納付した場合の延滞金は約8,100円です。
住民税が支払えないからといって支払いをせずにおくと延滞金の額がどんどん膨れ上がっていきます。住民税の支払いの猶予を受ければ延滞金がかからなくなるので、放置せずに市町村の税務担当課へ相談しましょう。
なお、住民税の支払いをしない場合は市町村から督促状が届き、それをも放置すると給与や銀行口座、あるいは個人の財産が差し押さえられ、そこから住民税が強制的に徴収されます(差し押さえは法律に基づいて行われるもので、差し押さえに個人の同意は必要ありません)。
住民税の使い道は地方自治体によって異なりますが、たとえば姫路市の2019年度決算を見ると、支出額が最も多いのは民生費(社会福祉、子育てや生活保護などの費用)で、次いで土木費(道路、公園、住宅の建設や管理などの費用)、教育費の順番でした。
特に民生費の金額は、どの自治体においても高齢化社会の進展に伴って今後更に増えていくと考えられるため、一人当たりの住民税の負担額は増えることはあっても減ることはないものと思われます。
出典:姫路市
現行の住民税所得割の税率(標準税率)は10%の単一税率ですが、2006年以前は所得に応じて5%、10%、13%の複数税率でした。2006年以前に5%の税率が適用されていた方は、2007年から住民税率が倍になったわけですから、「高くなった」と感じたと思われます(その分、所得税が減額されました)。
また、住民税には「所得割」と「均等割」があります。このうち均等割について、東日本大震災を教訓として地方自治体が実施する防災のための施策の財源に充てるため、2014年から均等割の金額が1,000円増えました(内訳は都道府県民税が500円、市町村民税が500円)。
更に、独自の施策に基づいて均等割の金額を増やす地方自治体もあります。たとえば神戸市は、認知症の早期受診を推進するための診断助成制度や、認知症の方が外出時などで事故に遭われた場合に救済する事故救済制度を創設するために、均等割の税率を400円増やしました。
今後も同じような施策を講じる地方自治体があれば、その地方自治体の均等割の金額が増えることも想定されます。
出典:神戸市HP
先ほども少し触れましたが、私たちが払っている住民税は以下の二つの合計です。
所得割と均等割それぞれについて、地域によってどのくらいの差があるのかを解説します。
所得割の税率はほとんどの地方自治体において標準税率である10%(道府県民税率が2%の場合は市町村民税が8%、道府県民税率が4%の場合は市町村民税率が6%)のため、ほとんどの自治体で所得割の金額は[前年の所得×10%]で計算できます。
ですが、これとは異なる税率を設定している地方自治体もあります。
まず市町村民税について、総務省の統計である「市町村民税及び固定資産税の税率等別市町村数調(令和2年度)」によれば、2020年4月1日時点で標準税率と異なる税率を採用している市町村は次のとおりです。
市町村 | 税率 | 標準税率との差 |
---|---|---|
愛知県名古屋市 | 7.7% | -0.3% |
兵庫県豊岡市 | 6.1% | +0.1% |
大阪府泉南郡田尻町 | 5.4% | -0.6% |
このうち名古屋市と田尻町は政策的な減税で、豊岡市は財政逼迫による増税です。かつて、北海道夕張市が厳しい財政状況にあることを理由に市民税所得割の税率を0.5%増やしていました。
今後、過疎化の進行などで財政状況が悪化した地方自治体の中には、市町村民税所得割について超過税率を採用して財政を立て直そうとするものも増えてくるのではないかと思われます。
次に都道府県民税について、同じく総務省の統計である「超過課税の状況」によれば、所得割について超過税率を採用している都道府県は1つありますが、この1県は神奈川県です。神奈川県の県民税率は2.025%または4.025%で、標準税率よりも0.25%高い税率となっています。
なお、東京都区内における所得割の税率について、都民税は4%、特別区民税は6%で、区によって違いはありません。
均等割の標準税率は都道府県民税が3,500円、市町村民税が1,500円ですが、所得割と同じく標準税率とは異なる税率を採用している地方自治体もあります。
まず市町村民税について、先ほど紹介した「市町村民税及び固定資産税の税率等別市町村数調(令和2年度)」によれば、2020年4月1日時点で標準税率と異なる税率を採用している市町村は次のとおりです。
市町村 | 税率 | 標準税率との差 |
---|---|---|
神奈川県横浜市 | 4,300円 | +800円 |
兵庫県神戸市 | 3,900円 | +400円 |
愛知県名古屋市 | 3,300円 | -200円 |
大阪府泉南郡田尻町 | 3,200円 | -300円 |
次に道府県民税について、「超過課税の状況」によれば、所得割について超過税率を採用している都道府県は30あると記載されています。
たとえば宮城県の税率は「みやぎ環境税」の実施に伴って標準税率よりも1,200円高い2,700円、神奈川県の税率は「水源環境を保全・再生するための個人県民税超過課税」の実施に伴って標準税率よりも300円高い1,800円が採用されています。
東京都区内における均等割の税率につき、都民税も特別区民税も標準税率を採用しているため区によって違いはありませんが、たとえば品川区のように軽減措置を条例で定めている区もあります(同様の軽減措置は、荒川区及び足立区のホームページにも掲載されていました)。
要件 | 税額 | 標準税率との差 |
---|---|---|
均等割を支払う義務のある者を 2人以上扶養している納税義務者であること |
2,500円 | -1,000円 |
均等割を支払う義務のある被扶養者であること | 2,000円 | -1,500円 |
出典:品川区HP
いかがでしたでしょうか。今回は住民税が払えない時の対応についてお伝えしました。住民税の支払いが難しいときはそのまま延滞せずにすぐに市町村に相談しましょう。
また、以下の条件に当てはまる方は住民税を節税できる可能性があります。
1つでも当てはまる方は以下の記事で住民税の節税について解説していますのでぜひ併せてご覧ください。
住民税が支払えない、と思った時はまずは市町村(特別区)の市民税担当へ相談しましょう。
Google検索で、「〇〇市(お住まいの市)+個人住民税+支払い」で検索すれば、担当する部署の電話番号が出てきます。
普通徴収の方が期限までに住民税の支払いを行わず滞納となった場合は、滞納となった期間に応じた延滞金が発生します。
その後も住民税の支払いをしない場合は市町村から督促状が届き、それをも放置すると給与や銀行口座、あるいは個人の財産が差し押さえられ、そこから住民税が強制的に徴収されます。