自動車税は車を廃車にすれば支払わなくていい? 還付が受けられるって本当?
車を持っている方なら毎年5月ごろに自動車税の支払いがありますよね。ですが、都心への引っ越しなどで車が不要になるという方も多いでしょう。
この記事では、車を廃車した際に自動車税がどうなるのか、廃車によって自動車税の還付を受けるにはどうすればよいのか解説します。
目次
1.自動車税は年度途中に廃車すると還付されるって本当?
車を年度途中で廃車にすると自動車税が還付されることをご存知でしょうか?
自動車税は自動車の排気量に対して課税される税金で、4月1日時点でその車を所有している人が4月から翌3月までの1年分の税金を納めます。5月初旬ごろに都道府県から届く納付書で支払い、支払期限は5月末です。
自動車税は前払いで1年分の税金を払うシステムであるため、年度途中で廃車にした場合には余計に税金を払ってしまうことになります。そのような理由から年度途中で廃車にした場合は自動車税が還付されるという仕組みです。
(1)廃車によって自動車税の還付を受ける条件
廃車によって自動車税が還付される条件は以下の3つです。
- 乗用車を所有していること
- 抹消登録をしていること
- 地方税を滞納していないこと
次からそれぞれの条件について簡単に解説していきます。
条件① 乗用車を所有していること
まず、「乗用車」を所有していることが一つ目の条件です。乗用車とは、人員の移動を用途としている車のことです。
トラックやダンプカーなどの貨物自動車やトラクターなど農耕作業用自動車は対象となりません。また、排気量660cc以下の軽自動車も乗用車には含まれませんので注意してください。
要約しますと「乗用車」は、軽自動車以外の小型乗用車(5ナンバー、7ナンバー)と普通乗用車(3ナンバー)の自動車ということになります。
条件② 抹消登録をしていること
二つ目の条件は、「抹消登録」をしていることです。抹消登録とは公的に自動車の所有権を破棄したことを証明する手続きをいい、「永久抹消登録」と「一時抹消登録」の二種類があります。
具体例を挙げると自動車を解体して廃車にするのは永久抹消登録、一時的に所有権を手放すのが一時抹消登録です。抹消登録をするためにはナンバープレートを外す必要があるため、一時抹消登録でも公道を走ることはできなくなります。
条件③ 地方税を滞納していないこと
三つ目の条件は「地方税を滞納していないこと」です。地方税には住民税・事業税・固定資産税などがあります。地方税を滞納している場合は、その滞納している税金に自動車の還付金が優先的に充当されてしまいます。ただし、滞納している税金よりも自動車税の還付金の額の方が大きい場合には、差額分のみ還付されます。
(2)名義変更や売却によって所有権を失った場合は還付される?
ここまで、廃車によって自動車税が還付される条件を解説してきましたが、名義変更や売却によって所有権を失った場合には自動車税の還付を受けられるのでしょうか。
二つ目の条件として挙げた「抹消登録」(ナンバープレートを外し、公道を走れなくすること)を、名義変更や売却では行いません。名義変更や売却の場合は、所有者が変わっても自動車としての機能を失わずに公道を走ることが可能となります。したがって名義変更や売却では自動車税の還付を受けることはできません。
ただし、ディーラーや買取業者へ売却する場合には、自動車税の還付相当額が売却額に上乗せされていることが多いと言えます。自動車税は自動車を所有していた月数分だけを負担するのが合理的なので、あなたが売却した月以降の自動車税は次の所有者が負担すべきと考えられるためです。気になる方は売却時の見積書や契約書の内訳を確認してみましょう。
なお先ほども少し触れましたが、軽自動車(660cc以下)やバイク所有者に課せられる軽自動車税については、決められた税金を後払いで納めるため還付を受けることはできません。
2.廃車によって還付される自動車税はいつからいつの分?
車を廃車(抹消登録)することで、自動車税の還付を受けられるという説明をしてきました。では、還付される自動車税はいつからいつの分が還付されるのでしょうか。
自動車税は4月1日時点での所有者が前払いで1年分を納付しますが、そのうち還付されるのは「廃車手続きが完了した翌月~3月分」の金額が月割りで還付されます。
例えば、9月15日に車の廃車手続きをしたとします。この場合9月分の自動車税は負担しなければならず、還付を受けられるのは10月分~翌3月分までの6ヶ月分となります。還付金の計算は月割りで行うため、廃車手続き完了日が9月1日でも9月30日でも還付される金額は変わりません。また、3月中に廃車手続きが完了した場合には還付を受けられないということになります。
5月までに廃車手続きが完了した場合は自動車税の支払いは不要?
自動車税の支払期日である5月末日までに廃車手続きが完了した場合でも、その年の自動車税は支払わなければなりません。1年分の自動車税を一旦支払い、後ほど残存期間の月割り還付金が振り込まれるという流れです。
自動車を廃車にするベストのタイミングとは?
自動車税を支払うべき人は「4月1日時点」で自動車を所有している人です。したがって3月31日までに廃車手続きを完了させれば、次年度の自動車税を支払う義務が発生しません。このような理由から、3月は廃車手続きが込み合うことが予想されるため注意が必要です。
自動車を廃車にする予定がある場合には、3月31日までの廃車手続きが間に合うよう早めに引取り業者に連絡を取るなど計画的に進めましょう。
3.廃車によって自動車税はいくら戻ってくる?
自動車税は、月割りで還付されることを解説してきました。では、一体いくら還付されるのでしょうか? 一般的な車両を例に挙げて見ていきましょう。なお、先ほども少し触れましたが、還付金額は以下の計算式で計算しています。
車種 | 自動車税 | 廃車日 | 還付額 |
---|---|---|---|
トヨタ ノア(2000cc) | 45,000円 | 4月1日~4月30日 | 41,250円 |
9月1日~9月30日 | 22,500円 | ||
3月1日~3月31日 | 0円 |
※エコカー減税対象外、自動車登録年13年以内と仮定しています。
4.廃車による自動車の還付手続きと還付時期
ここからは廃車にした場合の自動車税の還付手続き方法と、還付の時期について解説します。
(1)廃車による自動車税の還付を受けるための手続き
廃車手続きは管轄の陸運支局で行います。必要となる書類は以下の通りです。
永久抹消登録 | 一時抹消登録 | |
---|---|---|
お店に廃車を依頼する場合 | ・申請書 ・所有者の印鑑証明書 ・委任状 ・車検証 ・ナンバープレート(前後) (解体処理が行われた場合は追加で以下の書類) ・解体日が記載された報告書 ・移動報告番号 |
・申請書 ・所有者の印鑑証明書 ・委任状 ・車検証 ・ナンバープレート(前後) |
自分で廃車手続きを行う場合 | 上記に加え以下の書類 ・手数料の納付書 ・永久抹消登録申請書 ・自動車税自動車取得税の申告書 ※委任状は不要 |
上記に加え以下の書類 ・手数料の納付書 ・一時抹消登録申請書 ・自動車税、自動車取得税申告書 ※委任状は不要 |
なお、盗難によってナンバープレートが提出できない場合には、提出できない理由を記した「罹災証明書」が必要となります。
陸運支局で抹消登録をすると自動的に市区町村へ情報がいくため、特に還付金申請の手続きをしなくても自動的に還付金が振り込まれます。還付金の受け取り方法には抹消登録時に申請した口座に入金してもらう方法と、後日送られてくる送金通知書を持って郵便局または銀行で受け取る方法があります。
(2)廃車手続きによる自動車税の還付の時期
還付金の受け取りまでは通常2ヶ月半程度かかります。3ヶ月以上経っても入金がなかったり、送金通知書が届かない場合には、所轄の自治体に問い合わせてみましょう。
5.廃車と自動車税の還付に関するQ&A
ここからは廃車と自動車税の還付に関するQ&Aをまとめました。
(1)廃車によって還付されるのは自動車税だけですか?
廃車によって還付されるのは自動車税だけではありません。自動車税以外にも下記のものが還付されます。
- 自動車重量税
- 自賠責保険
- 任意保険
自動車税の還付手続きは先ほど説明した通りですので、それ以外の還付手続き方法を簡単に解説します。
自動車重量税
自動車重量税が還付されるのは以下のいずれかに該当する場合です。
- 解体を事由とする永久抹消登録申請を行った場合
- 解体届出と同時に還付申請を行った場合
上記いずれかの申請を行った場合、車検残存期間に対応する自動車重量税額の還付を受けることができます。還付申請は後からは申請できないため注意が必要です。ただし、一般的には解体を依頼した業者などが手続きを代行してくれます。なお、還付金額の計算式は以下の通りです。
自賠責保険
自動車を廃車(一時抹消登録・永久抹消登録)した際に、自賠責保険の有効期限が一ヶ月以上残っている場合に還付が受けられます。還付を受けるためには自賠責保険の解約手続きを行う必要があります。手続きは各保険会社の窓口で行うのが通常ですが、保険会社によっては郵送での手続きに対応している場合もあります。
解約の際には抹消登録の証明書が必要となりますので、忘れずに持参しましょう。
任意保険
今後車に乗る予定が無い場合には、任意保険の解約の申し入れを保険会社にすることで解約返戻金を受け取ることができます。解約返戻金の計算方法は保険会社によって異なるため、気になる方は解約の際に保険会社に確認しましょう。
(2)廃車しても自動車税の還付を受けられないケースはありますか?
廃車すれば必ず還付金が振り込まれるというわけではありません。還付を受けられないケースごとにその理由を解説します。
①4月1日の時点でその車を所有していなかった
自動車税は4月1日時点の所有者に課せられる税金であるため、そもそも4月1日時点で自動車を所有していなかった場合には還付を受けることができません。
②廃車をした車が「乗用車」ではなかった
自動車税の還付は「乗用車」に限られており、トラックなどの貨物自動車や農耕作業用自動車などは自動車税の還付対象から除かれています。また、軽自動車やバイクは軽自動車税がかかりますが、これらを年の途中で廃車にしても軽自動車税は還付されません。
③廃車日が2月末日を過ぎてしまった
自動車税の還付金額は廃車日の翌月から月割りで計算します。したがって2月末日以降に廃車にした場合は3月31日までに1ヶ月以上の残存期間が無い為、還付を受けることができません。
④地方税の未納がある
他の地方税(市県民税・固定資産税など)の未納がある場合は、還付金は滞納している税金の補填にまわされてしまうため還付を受けることはできません。ただし、滞納している税金の額より還付金の額の方が大きい場合はその差額分のみ還付されます。
⑤自動車税自体の未納がある
過去の自動車税を滞納している場合、まずはその自動車税の支払いをする必要があります。過去の自動車税を全て支払った後に廃車後の月割り期間分の自動車税が還付されます。
①~⑤に当てはまらないが還付されない
上記①~⑤の条件に当てはまらない場合で、還付されない場合はどうしたらよいのでしょうか? その場合は、まず廃車を依頼した業者に問い合わせてみましょう。2月中に車を引き渡していても、廃車手続きの完了が3月になってしまったという場合も考えられます。廃車手続きが2月中に完了している場合には、気付いていない税金の未納などがあるかもしれません。所轄の自治体に問い合わせてみましょう。
(3)廃車以外で自動車税の還付を受けることはできますか?
基本的には、廃車する以外に自動車税の還付を受けることはできません。
ただし、自動車の売却をディーラーなどに依頼する場合は、売却金額に自動車税の残存期間に相当する金額が加算されていることが一般的です。気になる方は見積もりの際に明細を確認してみましょう。
まとめ
年度途中に廃車すると自動車税は還付される?
自動車税は前払いで1年分の税金を払うシステムであるため、年度途中で廃車にした場合には余計に税金を払ってしまうことになります。そのため年度途中で廃車にした場合は自動車税が還付されます。
廃車によって自動車税の還付を受けられるのはどんなケース?
以下の3つの条件を全て満たしている場合、廃車によって自動車税が還付されます。
- 乗用車を所有していること
- 抹消登録をしていること
- 地方税を滞納していないこと
廃車によって自動車税はいくら戻ってくる?
廃車によって還付される自動車税の金額は下記の式で計算できます。