深刻な新型肺炎拡大「日本政府は私達を守ってくれるのか?」

執筆
荒井薫
労働省→公認会計士→コンサルタント→事業会社CFO&国際ブランド付きプリペイドカード事業の立ち上げをやりました。子供の頃から物書きになりたかったため、書く感性を磨きながら、皆さんに様々な情報をお伝えしていければと思っています。
コロナウイルス アメリカ 国会議事堂

3月下旬に一気に悪化した新型肺炎・コロナウイルス感染症の蔓延は収まる様子はありません。
当初は、中国を中心としたアジア地域の疫病と捉えられていましたが、現在、その中心は欧米に移っています。

トランプ大統領は、現地時間3月27日に2兆ドルもの大型経済対策法案を議会に諮り、成立させています。一方、日本では、具体的な施策は、2020年度予算を成立させた後、今後具体的内容を国会で審議して決定されます。つまり、現時点(4月5日時点)ではその骨子は固めたものの、詳細を含めて決定事項ではありません。

そして、その詳細について、情報は錯そうしています。当初、国民全員に一律支給をする方向でしたが、一定の条件を満たした収入減少に直面する世帯に絞る方向です。いきなり出てきた牛肉券や旅行券の案は国民の反発を招きました。この記事では、4月5日時点の情報に基づき、分かり易く日米比較を速報解説したいと思います。

1.日本とアメリカの経済対策の進捗状況の違いについて

アメリカでは、3月上旬にいち早く非常事態宣言をしたカリフォルニア州、ニューヨーク州ニュージャージー州を中心に新型肺炎が爆発的に広がっています。現在一番深刻な状況に陥っているのは、ニューヨーク州です。

アメリカの国土は広いですが、経済の鍵を握るのは、カリフォルニア州、ニューヨーク州他幾つかの有力州です。この2つの州で新型肺炎の蔓延が深刻であることから、アメリカのトランプ大統領は、当初楽観的に捉えていたスタンスを変えて、2兆ドルもの大型経済対策法案を議会に諮りました。

そして、3月27日(現地時間)に上下両院の賛成を得てその対策法案は成立しました。

一方日本では、2020年度予算案を、3月27日に参議院本会議で可決成立させています
この予算案は102兆円を超えるもので、8年連続で過去最大を更新しています。しかしながら、この予算は、2020年度を通じた一般予算であり、この中の一部予備費から、5000億円を今後策定する緊急経済対策の財源を充当する予定となっています。

つまり、日本では具体的な緊急経済対策は、これから国会での審議を経て決定されることとなっており、まだ具体的には一切決定はされていません。

1-1.アメリカの緊急支援策の概要

リーマン危機は、金融機関の突然の信用収縮をトリガーとする経済危機であったので、当時の経済対策は金融機関への公的資金注入が主たる柱でしたが、今回は企業と家計に直接大量のマネーを注ぎ込む施策が中心となっています。
家計に対しては、大人最大1200ドル、子供には500ドルを支給することが骨子となっています。そして、年収7万5千ドル未満の国民は全員が支給対象であり、それを超える場合には給付額を段階的に縮小して、9万9千ドル超の国民は対象外となります。

労働者の多くはレイオフ(一時帰休)や無給休暇を余儀なくされており、最近の政府の発表によると失業者数は3月までに累計1000万人程度まで急増しています。
そのため、給付金は、家賃や食費など短期的な生活費を補填する狙いがあります。また、失業給付も週600ドルを加算することとなっており、家計への直接支援は5000億ドル規模とかつてないほどの規模になっています。

1-2.日本の緊急支援策案の方向性

日本では、財源はまず2020年度予算の予備費を充当することとします。政府は、迅速に進めると言っており、4月上旬には20年度補正予算案を編成して国会に提出する予定になっています。4月5日段階では、「自民党案をベースとした政府案の骨子が固まった」段階です。

家計への生活支援策として現金を給付することが想定されています。安倍首相は、かねてより、「思い切った額を考えていきたい」と発言を繰り返しており、同時に、「逼迫度を考えれば、ある程度ターゲットを絞って給付するべきである」として、所得が減少した世帯などに給付対象を絞り、その給付額は30万円とすることで、政府与党内で調整が図られました。

さらに、政府は、新型コロナウイルスの感染拡大で資金難に陥る中小零細企業に対して、用途制限を設けない現金を給付する方針を明らかにしています。また、全国の地方銀行や信用金庫を通じて、中小企業向けの無利子・無担保融資も行うこととしています。いずれも過去前例がない政策で、未曽有の窮地に陥っている中小企業の資金繰りを支えるとしています。

2.素早く支給するアメリカ、早くても5月末の日本

アメリカでは、法案の成立を受けて、4月末と5月末の2か月に分けて現金支給を全米で行うための準備を進めています。
対して、日本は、政府において4月10日までには緊急支援策をまとめて、国会で審議を行い支援策が成立しても、その支給は早くても5月末というのが精いっぱいのスケジュールとなっています。

後述するように、野党からは、現金支給案を一部の世帯のみという案には根強い反対案があるために、審議が二転三転することも予想されます。その場合には、実際の支給が更に先送りされる可能性もあります。日本の倍以上の人口がいるアメリカで、どうして、こんなに素早い対応が可能なのでしょうか?

2-1.IRS(米国歳入省)が全て直接対応するアメリカ

先日の記事では、アメリカの確定申告制度について分かり易く説明をしています。

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アメリカでは、IRSが、直接アメリカ全国民の納税を管理しています。そして、アメリカには、住民票や戸籍という制度がありません。州や市の、セーフティネットなどの管理と税金徴収関連業務は一元管理されていません。是非はともかく、アメリカでは、連邦の官庁であるIRSが、全納税者を直接管理しているのです。

そのため、納税者の前年度の収入や納税額はすべてIRSと国民が直接やり取りをしています。そこには、年末調整のように企業が介在することもないのです。
これが、アメリカにおいて、素早い給付金支給を可能とする仕組みとなっています。

2-2.日本の支給金は地方自治体が実施

日本では、すべての国民が確定申告をするわけではありません。大抵のサラリーマンは年末調整を行っていて、企業を介して収入や納税額が、税務署に報告されるようになっています。

そして、政府が今回決定する給付金は、納税管理をしている税務署ではなく、地方自治体である市町村が実際の支給実務を行います。
市町村は、税務署と住民の納税情報を共有していますが、市町村の住民に関するデータベースは、住民票がベースになっています。このため、支給対象者を絞るとなると、その確認作業から、実際の支給まで煩雑な手続きが必要となります。
これが、日本において、給付金支給に関して時間がかかる最大のポイントです。

この煩雑な支給手続きに対する非難がかなり強いため、政府は、この30万円の給付金の支給については、自己申告制度を採用する意向です。

対象世帯が全国5300万世帯のうち、約1000万世帯と想定されるため、行政側が個別に判定することは不可能であるため、市町村の窓口への自己申告制として、収入減少を証明する書類を提出することで、原則支給を認める案で調整が続いています。なお、この給付金は特例措置として非課税となるので、この給付金は翌年の確定申告で収入には見做されません。
また、給付対象は、日本に合法的に滞在する外国人も含める方向で検討されているようです。

2-3.具体的な支援策の内容の行方

先日の安倍首相のテレビ演説では、一定の所得層以下に絞り、その代わり支給額はそれなりにインパクトのあるものにするという案を採用する方向と言っていましたが、その演説の数日前に行ったエコノミストや有識者へのヒアリングでは、様々な意見が出ていたと聞いています。

その有力な意見として、全国民支給(ただし来年の納税時に高額所得者は納税という形で徴収されるので、結果的に低所得者の手元により大きな金額が残るやり方)があります。これは、新型肺炎の蔓延で、経済活動が停滞していることから、お金を使う余裕がある一定の富裕層に一旦お金を渡すことは一つの有力な経済刺激策になるということ、そして、何よりも支給手続きがシンプルなので早期支給が可能という点がポイントです。
その他、消費税軽減を主張している野党もいます。

また、何を血迷ったか、海外への高級食材輸出が途絶えて、「インバウンド消費が落ち込んだため、消費が減っている牛肉を買うための牛肉券を発行したら」と言う案が自民党内から出てきて、世論の反発を受けました。

これらの情報が入り乱れて、さみだれ式にセンセーショナルにメディアが取り上げるため、私たち国民は、何が決まった事なのか、何が政府の言っていることなのか、とても分かり難い状態となっています。

けれども、4月5日現在で、日本政府として、決定した施策は一つもありません。
なぜならば、日本では、現在、その施策案を政府が考えている期間であるからです。施策案が確定するのは国会審議を経て、国会を通過してからです。

3.まとめ

現在、新型肺炎蔓延で誰が被害を受けているのか?という点で、世代間対立のような状況が生まれています。学校に行けない子供達、その子供たちのために働けないご両親たちがいます。それに対して、呑気に年金を貰って、海外旅行に行ったりジムにいったり、マスクを買い占めて、勤労世代の足を引っ張っているという批判の声を浴びている高齢者たちにも言い分はあるでしょう。

どちらが正しくて、どちらが間違っているのかについては、一概に言えません。
立場が違えば、主張することも変わるのは当たり前です。

1つだけ今考えておくべきことは、もし高齢者優遇になっていると思ったら、それは、選挙権を高齢者並みに行使しない若者達にも責任の一端があるのです

今回は、感染者の管理は都道府県が主導しているため、知事がメディアに顔を出す機会が増えています。これを機会に、私達は、選挙や政治のことにきちんと関心を持つことの重要性を認識するべきであると思います。

執筆
荒井薫
労働省→公認会計士→コンサルタント→事業会社CFO&国際ブランド付きプリペイドカード事業の立ち上げをやりました。子供の頃から物書きになりたかったため、書く感性を磨きながら、皆さんに様々な情報をお伝えしていければと思っています。

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