【2020年版】10万円の特別定額給付金
本内容は、2020年5~9月に実施された給付金に関するもので、すべての市区町村で給付金の申請は終了しました。 202…[続きを読む]
新型コロナウイルスの経済対策が緊急課題となっています。多くの人や業界から、国民全員への現金給付が要望されていますが、政府内では、富裕層への現金給付に抵抗感があるようであり、商品券の配布も検討されています。
そして、ついに、唐突ですが、布製マスクを全世帯に配布することが決定されました。
いろいろな議論があるところですが、現金、商品券、物、どんなものが良いのか検討してみます。
目次
現金ではありませんが、突然、4月1日、安倍晋三首相は、全国のすべての世帯(約5,000万世帯)に、2枚ずつ布製マスクを配布する方針を表明しました。1枚当たり200円以上かかるとのことで、466億円の費用が発生します。
正確に言うと、「全世帯」ではなく「全戸」に配布になる予定です。政府が利用を検討しているのは、郵便局の「タウンプラス」というサービスです。指定した地域の配達可能なすべての箇所に荷物を届けます。
つまり、空き家でもポストなど受け取る場所があれば配布するということです。平成30年住宅・土地統計調査によると、全国の空き家の数は846万戸ですので、最悪、1,692万枚のマスクが無駄になる可能性があります。
また、住居だけではなく事務所にも届きます。事務所にたった2枚のマスクが届いても、どう配れば良いかわからないという声も聞かれます。
日本国内、そして世界各国からも、この政策に対して批判が続出しました。「アベノミクス」を文字って「アベノマスク」という表現もされたり、エイプリルフールではないかという憶測もされました。
アベノマスクが当社の事務所(東京都新宿区)にも届きました!
「3つの密を避けましょう!」という紙と共に、マスク2枚が入っています。四角い形をしているので、はめやすいかどうか微妙かもしれません。サイズが小さいなどと批判の声もあがっているようです。
洗剤で洗って何度でも再利用可能とのことですね。
感染者数が多い地域から配布する予定であり、東京都で4月17日から配布が開始されました。
一部、不良品が見つかり回収されましたので、全国に行き渡るのは5月あるいは、もっと先になるかもしれません。
すでに述べたとおり、郵便局の職員により、マスクは住宅のポストに届けられます。宅配便のように対面式で受け取る必要はありません。
逆に、ポストが設置されていなかったり、住居であると認識されない場合には、受け取れない可能性があります。郵便局の職員さんが届けやすいように準備しておくと良いでしょう。
厚生労働省が、今回の布製マスク配布に関する相談窓口を設けていますので、こちらにご相談ください。
最初から、突然、マスクの話題になってしまいましたが、本題に入りたいと思います。
4月13日時点の最新の報道では、収入が減った世帯に対して、1世帯当たり30万円を給付する方向です。「自己申告制」とし、所得が減って給付を希望する人が申告した場合に給付します。
支給対象は、世帯主の、2月~6月のいずれか1ヶ月の月収について、
「住民税非課税の水準」については、全国で一律とし、世帯の人数別に次の表のようになります。
世帯の人数 | 給付の基準となる月収 |
---|---|
1人 | 10万円以下 |
2人(扶養家族1人) | 15万円以下 |
3人(扶養家族2人) | 20万円以下 |
4人(扶養家族3人) | 25万円以下 |
… | (以降、1人増えるごとに5万円プラス) |
詳細は下記で解説しています。
新型コロナウイルスの経済対策として、現金を支給するのと、商品券を配布するのと、どちらが効果的なのでしょうか?
現金を支給すれば、今困っている人を助けることができます。一方で、現金を給付しても消費に回るか疑問なため、商品券を配布したほうが良いという意見もあります。
2008年に起きたリーマン・ショックの際にも国民全員に現金が給付されましたが、消費に回ったのは25%にすぎなかったという調査結果があります。
消費を促すためには、商品券のほうが良さそうですが、利用できる地域や店が限られてしまうと、利用されない可能性もあります。
現金支給と商品券の配布と、どちらが良いのか、いろいろな意見があるようですが、そもそも、それぞれの目的が違うと、筆者は考えます。
政府が行うべき経済対策は大きく分けて次の2つがあります。
そして、それぞれごとに時期と対策が異なります。
時期 | 目的 | 対策 |
---|---|---|
コロナウイルス 終息前 |
生活資金で困っている人の保障 | ・現金給付 ・資金貸付 |
コロナウイルス 終息後 |
落ち込んだ消費の喚起 | ・商品券の配布 ・各種の割引 ・ポイント付与 |
コロナウイルス感染症が拡大している現時点において、商品券配布などの消費喚起をすれば、人々がお店に行くなどの行動をして、コロナウイルスをより広めることになります。
コロナウイルス感染を抑えるためには、世界各国が行っているように、国民の行動を制限するのが有効ですが、そうすると、収入が減って生活に困る人が出るため、その人を救済する必要があります。その最も手っ取り早い手段が「現金給付」です。
資金貸付も当然有効ですが、あくまでも「貸付」であり、将来、返済する必要があります。また、貸付である以上、審査がありますので、申請して即時にお金を入手するというわけにはいきません。
所得制限を設けるべきという意見もありますが、そもそも、所得が高い人が必ずしも富裕層ではありません(平年の所得が高くても、住宅ローン等があり急に収入が激減すれば、生活が苦しいことに変わりはありません)。
また、国税庁の平成30年分民間給与実態統計調査によると、給与収入1,000万円超の人は給与所得者全体の5%です。給与収入800万円超で見ても、全体の9.8%です。
その人たちに現金給付がされるデメリットよりも、所得制限の議論のために現金給付が遅れて、破産者や倒産が増えるデメリットのほうが大きいのではないかと考えます。
国民全員への給付を拒否する理由として、「富裕層にも配ると国民の理解が得られない」というものがあります。国民の理解が得られるかどうかはともかくとして、富裕層への給付は本当に問題なのでしょうか?
ここで「富裕層」とは、誰を指しているか明確でありませんが、野村総合研究所が2017年に発表した分類によると、次のようになります。
分類 | 純金融資産額 | 世帯数 | 金額 |
---|---|---|---|
超富裕層 | 5億円以上 | 8.4万世帯 | 84兆円 |
富裕層 | 1億円以上5億円未満 | 118.3万世帯 | 215兆円 |
準富裕層 | 5,000万円以上1億円未満 | 322.2万世帯 | 247兆円 |
アッパーマス層 | 3,000万円以上5,000万円未満 | 720.3万世帯 | 320兆円 |
マス層 | 3,000万円未満 | 4,203.1万世帯 | 673兆円 |
【引用】野村総合研究所:図1:純金融資産保有額の階層別にみた保有資産規模と世帯数
仮に「富裕層」を上記の表の「超富裕層」「富裕層」の2つと定義すると、「富裕層」の全世帯数は126.7万世帯です。これは全世帯の約2.4%に過ぎません。
富裕層を含めて現金給付したとしても、富裕層を外した場合と比較して、財政的な負担はほとんど変わらないのではと考えられます。
政府与党内では、訪日外国人の激減を受けて、和牛の需要が減少したとして、「お肉券」の発行が検討されました。また、影響を受けた漁業の振興策として「お魚券」の発行も検討されました。
このように特定の用途だけに絞った商品券にどれだけ効果があるか疑問であり、特定の業界だけが優遇される状況は不公平で問題ではないかと思われます。
現在、生活資金に困っている人たちに対して至急での生活保障が必要とされている段階で、このように特定の商品券の話題が持ち上がるということは、政府が迷走している可能性も捨てきれません。
3月30日時点で、結局、これらの商品券の発行は見送りとなったようです。