投資信託はいくらから始められる?
「老後資金2000万円不足」問題がクローズアップされています。その真偽は別にしても、「将来の老後資金が心配」「年金だけでは厳しいかも」と感じる方も多いようです。
そんな中で、投資に興味を持ちつつも「損をしそうで怖い」「まとまった資金がない」と尻込みしている方も少なくないのではないでしょうか。
投資信託も元本保証ではありませんが、投資する投資信託の種類や投資方法によっては、リスクを抑えて安全性を高めて投資することができます。
また、投資信託のメリットでもありますが、小額から投資することができます。
今回は、投資信託を初める際のポイント、特にいくらから始められるのかを解説します。
目次
1.投資信託とは
まず、投資信託の概要について説明します。
(1)投資信託とは
投資信託とは、私たちから集めたお金をひとつの大きな資金としてまとめて、専門家が株式や債券などに投資運用する商品のことです。
(2)投資信託の種類
投資信託をいくつかの切口で分類してみます。
投資先によって投資信託のリスクが変わってきます。債券に投資する投資信託はリスクが低く、株式に投資するものはリスクが高い、という具合です。
①投資対象で分類
・債券(国債、社債)
・株式
・不動産投資信託(REIT)
・その他
一般的には、リスクは「債券<REIT<株式」で、リターンも同じく「債権<REIT<株式」となります。
②投資先地域で分類
・国内
・海外
一般的には、リスクは「国内<海外」で、リターンも同じく「国内<海外」となります。
③運用方針で分類
・インデックス運用
日経平均株価、TOPIXなどの指数の変動程度の利回りを目指す運用方法です。指標が上がれば投資信託も上がり、逆に下がれば投資信託も下がりますので、値動きが分かりやすいものです。
また、アクティブ運用に比べて、一般的に運用費が安価なのも魅力です。
・アクティブ運用
アクティブとは積極的という意味で、指数を上回る利回りを目指す運用方法です。投資運用を任せる専門家の腕に依存することになります。
筆者の個人的な考えですが、初めて投資信託を始める方は、値動きが分かりやすく、また運用費用も安価なインデックス運用の投資信託を選ぶのが良いと思います。
2.投資信託のメリットとデメリット
(1)メリット
①少ない金額から購入可能
個別の株式や債券に投資する場合は、株式や債券ごとに最低購入価格が決まっており、ある程度まとまったお金が必要になります。
しかし、投資信託は集めたお金をひとつの資金として株式や債券などに投資しますので、その投資信託の最低購入価格は、株式や債券の最低購入価格に依存することなく、低く設定することができます。
②株式や債券などに分散投資、リスク低減
資産をいくつかの商品に分けて投資して、リスクを分散させる分散投資が基本です。
投資信託は、このような分散投資の考え方から生まれた金融商品で、さまざまな資産に分散投資して、リスクを軽減しています。
③専門家による運用
経済や金融などに関する知識を身につけた専門家が投資して運用しますので、より投資リスクが下げられます。
④高い透明性
原則として毎日、基準価格が公表されますので、皆さんが投資した投資信託の値動きや資産価値が分かるようになっています。
(2)デメリット
①コストがかかる
運用のプロに任せるので、運用を任せるための手数料を払う必要があります。
購入時の手数料、運用費用、そして解約費用で、これらは投資信託によって違います。
なるべく安価なコストの投資信託を選ぶのも、長期運用を見越した上では重要です。
②元本保証がない
運用実績が上がらず購入時よりも値下がりしてしまう可能性があります。
3.投資信託を始める際のポイント
投資信託による投資は元本保証ではありませんので、資産が減少するリスクもあります。
次のポイントに考慮して、投資信託を始めてみましょう。
(1)資産形成の目的を明確に
お金を貯める目的をはっきりさせましょう。
「結婚資金」「教育資金」「自宅購入資金」「旅行・余暇資金」「老後資金」など、皆さんそれぞれの目的があると思います。この目的によって、投資信託の選択などが変わります。
例えば、以下のような方法が考えられます。
【結婚資金/教育資金】
元本を大きく割ると困るので、比較的安全な債券を中心とした投資信託を購入する
【老後資金】
まだ30年以上の投資期間を使えるので株式の割合高めた投資信託を購入する
(2)余裕資金で行う
元本保証がありませんので、投資は日々の生活に影響にない余裕資金で行いましょう。
(3)資産の分散、時間の分散
「卵は一つのカゴに盛るな」
これは資産運用に関することわざの1つです。
資産運用では、「投資先の分散(債券と株式に分散など)」に加えて「投資時期の分散(定期積立など)」をすることにより、よりリスクを減らすことができます。
4.投資信託を始められる金額
投資信託は1万円程度から始められます。
(1)通常1万円から、ネット証券だと100円から可能
投資信託はいろいろな販売会社(銀行や証券会社など)で購入することができます。
最低金額は、販売会社や購入方法(「一括購入」か「積立購入」か)でも変わります。
通常は「1万円/月」を最低金額とされることが多いです。
積立購入で購入する場合は、月額5000円や1000円と更に少額でスタートできます。
SBI証券、楽天証券、マネックス証券などのネット証券だと100円から投資信託を始めることもできます。
ネット証券の最低購入金額が極端に低いのは、店舗を持たないからです。店舗の維持・管理費用などが発生しない分、コストが抑えられるということです。
(2)主な販売会社別の最低金額
主な販売会社別の最低投資金額です。
(①~③:銀行 ④~⑥:証券会社 ⑦~⑨:ネット証券会社)
一括購入の場合 | 積立購入の場合 | |
---|---|---|
①三菱UFJ銀行 | 1万円以上 | 毎月通常5,000円以上 |
②三井住友銀行 | 投資信託による | 窓口:毎月1万円以上 ネット:毎月1,000円以上 |
③みずほ銀行 | 窓口:20万以上 ネット:1万円以上 |
毎月1,000円以上 |
④野村証券 | 投資信託による | 窓口:毎月5,000円以上 ネット:毎月1,000円以上 |
⑤大和証券 | 毎月1,000円以上 | |
⑥SMBC日興証券 | ||
⑦楽天証券 | 100円以上 | |
⑧SBI証券 | ||
⑨マネックス証券 |
5.100円から投資を始めるメリットとデメリット
投資信託のメリットとデメリットについては上記に説明しましたが、ここでは、「100円投資」に限定して説明します。
(1)メリット
①投資の経験ができる
いきなり本格的に投資信託を始めることに抵抗があるという方は、まずは少額から投資してみることで、次の観点で経験を積むことができます。
- どこで、どのように投資信託が購入できるのか
- 購入や運用に必要な費用はどれくらいか
- 投資先(債券、株式など)の違いと値動き(利益や損失の程度)
- なぜ投資信託の値段が上がったり下がったりするのか(経済や政治の影響など)
最終的には、「自分の投資目的に合った投資信託」を見つけられ、また「できれば損しないように、損をした場合でも損失を抑えるにはどうすればよいか」も勉強でき、本格的な投資に活かせます。
②経済や政治に興味を持つようになる
投資信託の価格は、経済や政治の動きに影響されます。
「米国がくしゃみをすれば日本は風邪をひく」と言われたこともありますが、最近では、米国のトランプ大統領がツイッターを更新すると株価が動き、投資信託の価格が動くこともあります。
自分自身で少額でも投資信託を持つことにより、政治経済の動きを自分のこととして考えるようになります。
今後本格的に投資する上で、投資先の選定やリスク低減に役立ちます。
③リスクが少ない
100円投資は、損失が出てもその絶対額は小さく、「いきなり大金を投資して、大きな損失は出したくない」「どれくらい損失が出るリスクがあるのか知りたい」という人にとっては、オススメの方法です。
(2)デメリット
個人的には、100円投資に気になるデメリットはありません。
強いてあげるなら、「利益が少ない」ことと、「購入可能な商品が限定される」ことがデメリットでしょうか。
利益が少ない点については、「考え方の問題」だと思います。
100円投資は蓄えることを期待するのではなく、あくまで、勉強/経験を積むことが主目的ですので、貯蓄を目的する投資とは分けて考えましょう。
どうしても気になるなら、投資額を上げましょう。
購入可能な商品が限定されるほうは、少し厄介です。
初期投資額が少額だと、購入可能な投資信託の銘柄の種類が限られます。また、小額投資ですので、多くの銘柄を買うことは難しいと言えます。
勉強目的なのに、勉強になるような経験が出来ない、と悩むことになるかもしれません。
そこで、次のような投資信託を選ぶ手法を提案します。
- 債権中心の投資信託
- 株式中心の投資信託
- 不動産中心の投資信託
これは、財産3分法と言って、債券・株式・不動産に分割して投資する方法です。この3種類の投資信託に100円投資しても300円投資ですみます。
それぞれの値動きなどを比較すると面白く、勉強になると思います。
6.まとめ
投資信託は小額から、最低100円から始められます。
利益は出ませんが、勉強になるという大きなメリットがあります。
少額から始めてみて、投資信託が自分に合わなければやめれば良いし、慣れてきたら金額を増やしていくのが良いと思います。
何事でも、ご自分で経験してみないと分からないことがあります。食べず嫌いにならずに、まず、小額から投資信託を始めてみましょう。