中国の増値税と消費税

中国には、増値税、消費税という2種類の税があります。よく、増値税は日本でいう消費税と言われていますが、実はこの言い方は語弊があります。
中国でいう増値税とは、最終税金負担者は消費者ですが、品目ごとではなく、業者のサービス内容によって税率が変わります。
また、消費税は、10種類の品目にのみ、消費者が購入する際に課税されます。
この記事では、中国の消費税、増値税について詳しく説明していきます。
1.中国の増値税
中国では、ほとんどのものやサービスに「増値税」が含まれています。英語ではVAT(Value Added Tax)と言います。
増値税は商品、サービスに付く間接税です。つまり、納税義務者(税金を納める義務がある人)と担税義務者(税金を負担する人)が異なっています。「増値」という意味は、「増加した価値」という意味で、増値税は、原材料の値段と売り上げた最終商品の値段の差額に増値税がかかる仕組みになっています。単純に言うと、利益につく税金で、消費税とは異なります。
例えば個人事業主Aが、税率17%の商品を一つ100元(税込)で仕込んだ場合、増値税が17元含まれています。また、この商品を200元(税込)で転売した場合、34元は増値税として支払われていることになります。差額は100元のため、Aは増値税17元を納付しなくてはいけません。
中国では1979年に増値税を導入し、今は財政収入に一番大きい税種になっています。レシート(中国では、「发票」fa piao)に増値税の税率が記載されていないため、国民的に課税されている実感はあまりありません。実際、2019年4月に増値税が減税されていますが、それは事業者に対して負担を減らすのが目的で、物価はあまり変わらなかったため、消費者にはあまり影響を与えてはいませんでした。
それでは、中国の増値税の独特な仕組みを見ていきましょう。
納税人
中国増値税の納税者は、物品を販売したり、組立作業や修理サービスを行う、又物品を輸入する法人と個人になります。外資企業は1994年1月1日までは増値税の対象ではなく、工商統一税を代わりに納めていましたが、そのあと納税義務者になりました。
増値税は、増値税専用領収書を扱うため、納税人の会計能力がある程度要されます。ほとんどの納税人はその能力がかけていると想定し、納税対象を、経営規模、会計能力に基づいて、小規模納税人、一般納税人に分類しています。
- 小規模納税人
- 一般納税人
小規模納税人
小規模納税人とは、年売上高が50万元以下の生産業者、労務提供者(生産又労務提供の売上高が50%以上)、又年売上高が80万元以下のそれ以外の納税者が当てはまります。
一般納税人
一般納税人とは、年売上高が50万元超の生産業者、労務提供者(生産又労務提供の売上高が50%以上)、又年売上高が80万元強の卸売り業者が当てはまります。
増値税の税率
小規模納税者及び簡易納税方式に適用する一般納税人
物品の販売、加工、修理サービス | 3% |
不動産売買、賃貸、土地使用権売買、派遣 | 5% |
個人の不動産貸し出し | 1.5% |
セカンドハンド物品の販売、一般納税人の自分が使ったものの転売 | 2% |
一般納税人
物品の販売又は輸入、派遣 | 13% |
軽減税率:以下の物品の販売又は輸入: 1.農産品、食用油 2.水道水、暖房、冷房、天然気 3.本、新聞紙、雑誌、電子出版物 4.飼料、農薬、農用有機物 5.国務院が決めるその他貨物 |
9% |
物流サービス | 9% |
郵政サービス | 9% |
基礎電信サービス 増値電信サービス |
9%
6% |
建築サービス | 9% |
不動産売買 | 9% |
金融サービス | 6% |
先端サービス (鑑定、物流補助、文化、コンサルなど) |
6% |
有形動産貸し出し | 13% |
不動産貸し出し | 9% |
生活サービス (旅行、外食、ホテルなど) |
6% |
無形資産の売買 著作権、商標、自然資源などの権益転譲 |
6% |
土地使用権転譲 | 9% |
増値税免税品目
以下の品目は増値税が免税されます:
- 農家が自販する農産品
- 避妊具又は避妊目的の薬品
- 古本
- 科学研究・実験・教育に使う輸入機器設備
- 外国政府又国際組織が無償で輸入する物資と設備
- 障害者の組織から直接輸入する障害者専用の物品
- 個人が販売する自分が使ったもの
このほかの免税対象は国務院が規定することになり、地域部門は免税、減税政策を作ってはいけないことになっています。
2.中国の消費税
中国の消費税は、増値税に加えて、さらに課税されます。
「値内税(价内税)」という仕組みがあり、消費税は、ほとんどの場合物品の生産、委託加工、輸出過程で課税されます。一部の高級アクセサリーは小売りの段階でも課税されます。
日本の消費税と同じく、中国の消費税も間接税で、担税者は消費者になります。
その課税対象は主に高級品、健康被害の恐れがあるもの、環境被害の恐れがあるものに課されており、その目的は産業構造を調節すること、消費者を誘導することです。
納税人
上述の通り、消費税の納税人は中国国内において、生産、委託加工、卸売り又輸出業の法人又は個人が該当します。
そのため、中国国内で生産工場などを持つ外資企業ももちろん納税人になります。
課税品目
現在課税されている品目及び税率はこのようになっています:
品目 | 税率 |
タバコ | 30%~56% 種類によって税率が変わる |
お酒 | 白酒:20%+o.5元/500g 黄酒:240元/t ビール:10% |
高級化粧品 | 15% |
ジュエリー | 金、銀、白金、ダイヤモンド類:5% その他:10% |
爆竹、花火 | 15% |
ガソリン | 1.2~1.52元/l |
バイク | 250ml:3% 250ml以上:10% |
小型車 | 1%~40% |
ゴルフ用具 | 10% |
高級腕時計 | 20% |
クルーザー | 10% |
割り箸 | 5% |
塗装料 | 4% |
電池 | 4% |
中国の消費税は1994年に設立され、2006年、2008年、2009年に少しずつ改正されています。
まとめ
中国の増値税と消費税にちょっと理解ができましたか。
中国では税率がレシートなどに書かれていないため実感が薄くなりますが、このように中国でも独特な税制が整備されていることを知っていただければ幸いです。