アメリカの消費税(売上税)と軽減税率

アメリカには、実は一部を除いて消費税はありません。
ただし、買い物したときに支払わなければならない「消費税に似た」税金があります。これを売上税(Sales Tax)といいます。
この記事では、アメリカの売上税の仕組みと税率を紹介するとともに、なぜSales Taxは売上税と訳されているのか、消費税となにが違うのかについても解説します。
目次
1.アメリカの売上税の仕組み
日本の消費税は、消費者が小売店で商品やサービスを買うときに課されるだけでなく、メーカーが原材料を仕入れたり、小売店が商品を仕入れたりするときにも課せられます。
一方、アメリカの売上税は、消費者が小売店で商品を購入したときにだけ課されます。メーカーが原材料を仕入れたときや、小売店が商品を仕入れたときには売上税は課されません。
これが消費税と売上税の最大の違いです。
また、日本ではサービスを購入したときも消費税と呼びますが、アメリカではサービスを購入した時は使用税(Use Tax)と呼んでいます。
2.アメリカにも消費税はあるが少し特殊
日本の消費税は、アメリカでは売上税や使用税(以下、売上税など)と呼ばれていますが、アメリカにもExcise Taxという税があり、これは「消費税」と訳します。
アメリカのこの消費税は、タバコ、アルコール飲料、トレーラー、タイヤ、石油製品など、特定の商品にしか課せられません。
したがって、アメリカにも消費税と呼ばれる税はあるが、日本の消費税とは少し異なる、と覚えておいてください。
3.売上税の税率は州によって変わる
日本の消費税の税率は国内どこで消費しても一律ですが、アメリカの売上税などは、州によって異なります。
代表的な州でいうと、ニューヨーク州とハワイ州は4%、カリフォルニア州は最も高率の7.25%、フロリダ州は6%、イリノイ州とマサチューセッツ州とテキサス州は6.25%などとなっています。
そしてアラスカ州、デラウェア州、モンタナ州などでは、売上税は課されません。
4.季節や時間によって異なる、アメリカの軽減税率
軽減税率は、増税すると消費行動に悪影響を及ぼす商品のみ、税率を下げる仕組みで、アメリカにもあります。
例えば、アーカンソー州の売上税は6.5%ですが、食料品は1.5%に引き下げられています。イリノイ州は一般商品の税率が6.25%なのに対し、食料品と薬は1%です。
さらにアメリカでは、新学期の時期は衣料品が非課税になったり、朝だけコーヒーが非課税になったりすることもあります。
さて、これまで「日本の軽減税率は複雑だ」と思っていた方も、州によって税率が変わり、商品や季節や時間によっても税率が変わるアメリカの軽減税率を知ると「日本の複雑さはそれほどでもない」と感じるのではないでしょうか。
5.ホテルと外食の税金
アメリカの税金は、ホテルとレストランでお金を使うと、さらに複雑になります。なぜなら都市によって、ホテル税や外食税が課せられているからです。
ホテル税は、ニューヨーク「14.375%+3.5ドル」、ニューオリンズ「13%+1~3ドル」サンフランシスコ「14~15.5%」、シカゴ「16.4%」、ワシントンDC「14.5%」、ロスアンゼルス「14~17%」、などとなっています。
税率以外にもドルが課される場合や率が変動することがあり、日本人旅行者のような短期の滞在者がこうした都市を渡り歩く場合、覚えることは至難の業です。
外食税も複雑で、課せられる場合は10%前後なのですが、「外食税はない」地域でも、外食時に売上税が課せられることがあります。
そしてアメリカ全土でチップの習慣があるので、ホテル税や外食税に加えて、ホテルやレストランではチップを支払わなければなりません。
6.旅行者が知っておくべき「旅行者払戻制度」
アメリカではテキサス州などで、旅行者に売上税を戻す「旅行者払戻制度」があります。旅行者が州内で商品を購入し、未使用のまま州外に持ちだした場合、消費ではなく輸出と考えることができるので、消費に課す売上税を返却するのです。このルールは「出国」を前提としています。
デパートや空港で手続きできますので、尋ねてみてください。
まとめ
アメリカには、一部を除いて消費税はありませんが、売上税があります。消費者の立場からいえば、両者は同じで、買い物をすれば課されます。
州によって税率が異なるので、全米横断を考えている人は「ころころ」変わってわずらわしいかもしれませんね。