世界の消費税率が高い国/低い国ランキング【2023年版】
日本の消費税の税率は10%ですが、これを「高い」と感じている人は多いでしょう。
でも、世界には、消費税の税率がもっと高い国がたくさんあります。一方で、日本より税率が低い国もあります。
世界の消費税の税率が高い国・低い国のランキングを紹介します。
目次
1.世界の消費税率が高い国ランキング
ランキングでは、どの国と比較するかが重要です。
財務省が発表しているバージョンがありますがヨーロッパ諸国に偏っていますので、独自調査によるランキングも作成しました。その両方を紹介します。
(1)財務省バージョン
財務省HPの「消費税などに関する資料」ページで、OECD諸国など51カ国の「付加価値税率の比較」を掲載しています(付加価値税は消費税に相当する税金です)。
これによると、世界で消費税が最も高い国はハンガリーで27%です。
そして、消費税率が高いトップ20は次のとおりです。
順位 | 税率 | 国名 |
---|---|---|
1位 | 27% | ハンガリー |
2位 | 25% | クロアチア、デンマーク、ノルウェー、スウェーデン |
6位 | 24% | フィンランド、ギリシャ、アイスランド |
9位 | 23% | アイルランド、ポルトガル |
11位 | 22% | イタリア、ポーランド、スロベニア |
14位 | 21% | ベルギー、チェコ、ラトビア、 リトアニア、オランダ、スペイン |
20位 | 20% | オーストリア、ブルガリア、エストニア、 フランス、スロバキア、英国 |
上位には見事にヨーロッパの国ばかりが並んでいます。また、ノルウェーとアイスランド以外はすべてEU(欧州連合)に加盟しています。
ちなみに、日本は、51カ国中、41位です(同順位に6カ国)。
日本政府は、このデータを参照して、日本の消費税率は低いので、もっと税率をあげる余地があると主張したいようですが、もともと税率が高いOECD諸国ばかり掲載されており、データに偏りがあるように思われます。
(2)独自調査ランキング
そこで、独自調査で、全世界97カ国中のランキングを作成してみました。消費税率が高いトップ20です。
順位 | 税率 | 国名 |
---|---|---|
1位 | 27% | ハンガリー |
2位 | 25% | クロアチア、デンマーク、ノルウェー、スウェーデン |
6位 | 24% | フィンランド、ギリシャ、アイスランド |
9位 | 23% | アイルランド、ポルトガル |
11位 | 22% | ウルグアイ、イタリア、ポーランド、スロベニア |
15位 | 21% | アルゼンチン、ベルギー、チェコ、ラトビア、 リトアニア、オランダ、スペイン |
ウルグアイ、アルゼンチンを加えた以外は、財務省バージョンとほとんど変わりません。
日本は、97カ国中、68位です(同順位に9カ国)。順位としては全体のうち、3分の2くらいに位置していますので、財務省バージョンよりは、順位が少し改善されているかもしれません。
(3)欧州の消費税率はなぜ高い?
ヨーロッパの消費税率は、なぜこれほど高いのでしょうか。
高負担が当たり前
ヨーロッパでは、高福祉・高負担の思想が根付いていて、税金を多く払ってでも安心を確保したい、と考える人が多いです。
国民全体の所得に占める税金と社会保障費の負担の割合を示す指数に国民負担率がありますが、ヨーロッパは国民負担率が高い国が多いです。
参考までに、2020年の国民負担率のトップ5です。すべてヨーロッパ諸国です。
- 1位:ルクセンブルク 84.6%
- 2位:フランス 69.9%
- 3位:デンマーク 65.9%
- 4位:ベルギー 61.8%
- 5位:イタリア 60.8%
【参照】財務省:国民負担率の国際比較(OECD加盟36カ国)
ちなみに、日本の国民負担率は47.9%ですので、それよりかない高いです。
EUの基準:最低15%
EUでは、1992年のEC指令の改正により、1993年以降、付加価値税の標準税率を15%以上とすることが決められています。そのルールのため、欧州諸国の消費税率が高くなっています。
食料品・日用品は軽減税率で低い
ランキングで紹介した消費税率は標準税率です。消費税率の高いほとんどの国では、食料品や日用品などに軽減税率が適用され、たいたい約半分くらいの低い税率となっています。また、0%や免除の品目もあります。
嗜好品や高級品などの税率が高い一方で、食料品・日用品などの税率を下げることで、一般庶民が困らないようにしています。
2.世界の消費税率が低い国ランキング
こんどは、消費税率が低い国のランキングです。
(1)財務省バージョン
財務省HP掲載データでの、消費税率が低い国TOP10です。
順位 | 税率 | 国名 |
---|---|---|
1位 | 5% | 台湾 |
2位 | 7% | ラオス、タイ |
4位 | 7.7% | スイス |
5位 | 8% | シンガポール |
6位 | 10% | オーストラリア、カンボジア、日本、韓国、ベトナム |
※財務省のグラフではインドネシアの消費税率は10%となっていますが、2023年8月現在、税率は11%です。
スイスを除いて、アジアの国々が並びました。日本も消費税率が低い国のTOP10にランクインしています。
世界で消費税が最も低い国は台湾で5%です。
(2)独自調査ランキング
財務省バージョンでは、そもそも消費税がない国が含まれていません。
そこで、独自調査で、消費税がない国も含めて、全世界97カ国中のランキングを作成しました。消費税率が低いトップ20です。
順位 | 税率 | 国名 |
---|---|---|
1位 | 0% (なし) |
ブルネイ、香港(※1)、マカオ(※1)、イラク、 カタール、クウェート、シリア、リビア |
9位 | 5% | 台湾、ミャンマー、アラブ首長国連邦、 オマーン、バーレーン |
14位 | 6% | 米国(※2) |
17位 | 7% | タイ、ラオス、パナマ |
18位 | 7.5% | ナイジェリア |
19位 | 7.7% | スイス |
20位 | 8% | シンガポール |
※1 香港、マカオは中国の特別行政区ですが、本ランキングでは国として扱っています。
※2 米国には消費税がありませんが、州や都市によって売上税があります。ここでは、首都のワシントンD.C.の税率6%で比較しました。
財務省バージョンとは、ランキングがだいぶ変わりました。ちなみに、日本は22位です。
(3)中東・アジアの消費税率はなぜ低い?
中東諸国には、消費税がないか、あっても税率が低い国が多いです。
中東は石油マネーで国の財政が潤っており、国民からの税金をあまり必要としていないからでしょう。
ただ、かつては、アラブ首長国連邦、オマーン、バーレーンも消費税(付加価値税)がなかったのですが、最近になって消費税を導入しました。
ブルネイは石油・天然ガスの産出国で人口が少ないため、一人当たりGDPがASEAN域内ではシンガポールに次いで2番目に高いです。個人所得税や消費税はなく、国民は医療・教育費も無料です。
香港・マカオは国ではなく中国の特別行政区ですが、消費税はなく、所得税・法人税の税率も低いです。まさに、タックスヘイブンの様相を呈しています。
台湾の人たちは、税金も社会保障もあまり好まないようで、2017年の台湾の国民負担率は19.3%でした。これはOECD(経済協力開発機構)加盟国と比べると際立って低い数値です。参考までに、2017年の国民負担率は、デンマーク46%、ドイツ39.5%、日本30.6%、アメリカ27.1%、韓国26.9%でした。
つまり台湾の人たちは「税金の負担を軽くして自主自立で行こう」と考えていることがわかります。
3.その他の国のランキング
上位でも下位でもない中間の、その他の国の独自調査のランキングを、税率の高い順に掲載しておきます。
順位 | 税率 | 国名 |
---|---|---|
22位 | 20% | モロッコ、英国、ウクライナ、 エストニア、オーストリア、スロバキア、 フランス、ブルガリア、ロシア |
31位 | 19% | アルジェリア、チュニジア、コロンビア、 チリ、キプロス、ドイツ、ルーマニア |
38位 | 18% | インド、トルコ、コートジボワール、 ペルー、マルタ |
43位 | 17% | パキスタン、イスラエル、 ブラジル、ルクセンブルク |
47位 | 16% | ケニア、モザンビーク、 ベネズエラ、メキシコ |
51位 | 15% | スリランカ、バングラデシュ、 サウジアラビア、エチオピア、ガーナ、 南アフリカ共和国、ニュージーランド |
58位 | 14% | エジプト |
59位 | 13% | 中国、カナダ(※1)、 コスタリカ、ボリビア |
63位 | 12% | ウズベキスタン、カザフスタン、 フィリピン、グアテマラ |
67位 | 11% | インドネシア |
68位 | 10% | 韓国、カンボジア、ベトナム、 マレーシア、モンゴル、日本、 アフガニスタン、オーストラリア、バハマ |
77位 | 9% | イラン |
※1 カナダは州によって税率が異なります。ここでは、首都オタワがあるオンタリオ州の税率13%で比較しました。
4.日本の消費税の税率は将来20%になる?
日本の消費税は2019年10月1日に8%から10%に増税されました。
ただ、OECDは、日本の消費税は将来的に20~26%にすべきである、と提言しています。なぜなら、日本の財政赤字の額が今や天文学的数字になり、世界経済に悪影響を与ええる恐れがあるからです。
日本の借金のことを「公債残高」といいますが、その金額は2022年度末(2023年3月末)時点で1,270兆円になりました。これは赤ちゃんからお年寄りまで、国民全員が1人1,041万円の借金を背負っている計算になります。
OECDは消費税を増税しないのであれば、他の税金を増やすか歳出削減をすべきである、とも提言しています。
日本の財政赤字の最大の原因は社会保障です。つまり医療や福祉関連のお金です。医療も福祉もお金がかかるわけです。