利子所得とは?利息や公社債の収益にかかる税金

利子所得 税金

利子所得は、所得税の10種類ある所得のうちの一つです。代表的なものは、預貯金の利息(利子)です。

利子所得は、一般的に源泉分離課税によって、利子が支払われる際に課税されますので、確定申告をする必要はありません。

この記事では、利子所得について詳しく説明します。

1.利子所得とは

(1)利子所得とは

利子所得とは、その名称のとおり「利子」にかかる所得です。簡単にいうと、金融機関等に金銭を貸した場合、又は預け入れた場合にもらえる利息のことをいいます。

代表的なものは、預貯金の利息(利子)や、公社債の収益の分配などにかかる所得です。

利子所得は、所得税法第23条に規定されています。

【所得税法第23条(一部省略)】
利子所得とは、公社債及び預貯金の利子並びに合同運用信託、公社債投資信託及び公募公社債等運用投資信託の収益の分配(以下、「利子等」という。)に係る所得をいう。

所得税法の中では、10種類の所得のうち、一番初めに登場します。

(2)利子所得の種類

具体的な利子所得は次の5つに限定されています。

  • ①預貯金の利子:銀行の普通預金、定期預金などの利子が該当します。
  • ②公社債の利子:国債や地方債、企業が発行する社債の利子が該当します。
  • ③合同運用信託(金銭信託、貸付信託)の収益の分配
  • ④公社債投資信託の収益の分配
  • ⑤公募公社債等運用投資信託の収益の分配

③④⑤は信託銀行などが資金を集めて、国債や社債などに投資して運用した、運用収益(利子)の分配が該当します。

(3)間違えやすい利子所得:他の所得に該当するもの

利子所得と間違えやすいものにお金を貸した場合の利息があります。個人間や法人への金銭の貸し借りで発生する利子は、利子所得に該当しません。なぜかというと、上記の①~⑤に該当していないからです。一般的な金銭の貸付による利子の所得区分は雑所得に該当します。

個人で貸金業を生業に事業を行っている場合は事業所得に該当する場合もありますが、貸付けた者と特殊な関係がある場合や、金利が低すぎる場合、保証人を付けていない場合などは「事業」として認められず、「雑所得」として課税されるおそれがあります。

その他、外貨預金をしている場合の為替変動による利益(為替差益)は利子所得に該当せず、「雑所得になります。利子部分については利子所得になります。

以下、利子所得ではなく、他の所得に該当するものを列挙しておきます。

  • 学校債、組合債……雑所得
  • 社内預金(勤務先預け金)、役員・退職者等の場合……雑所得
    (※従業員の場合は、利子所得)
  • 定期積金等の給付補填金……雑所得
    (※満期日後解約利子等は、利子所得(普通預金利息))
  • 貸金業者の貸金の利子、得意先・従業員等に対する貸付金の利子……事業所得
  • 友人に対する貸付金の利子……雑所得
  • 所得税等の還付加算金……雑所得

2.非課税となる利子所得

利子所得には、非課税となるものがあります。

  • ①障害者等の少額預貯金(元本350万円以下)の利子等(通称、障害者等のマル優)
    (預貯金、合同運用信託、公募公社債等運用投資信託、または有価証券のうち一定のもの)
  • ②障害者等の少額公債(元本350万円以下)の利子(通称、障害者等の特別マル優)
  • ③財形貯蓄(元本550万円以下)…住宅貯蓄契約と年金貯蓄契約のみ
  • ④納税準備預金の利子(租税納付目的以外に引出された期間の利子を除く)

このうち、よく知られている、2つの非課税制度をご紹介します。

(1)障害者等のマル優制度(非課税貯蓄)

「マル優」とは「障害者等の少額預金の利子所得等の非課税制度」の通称で、障害者手帳の交付を受けているなどの一定の要件を満たしている方が利用できる制度です。

マル優制度は2つ用意されており、「障害者等のマル優制度」と「障害者等の特別マル優制度」があります。「障害者等のマル優制度」と「障害者等の特別マル優制度」は非課税になる貯蓄の対象が違います。

障害者等のマル優制度」は預貯金、合同運用信託、公募公社債等運用投資信託、または一定の有価証券の貯蓄が対象です。元本の合計額が350万円までの利子が非課税になります。

障害者等の特別マル優制度国債及び地方債が対象で、額面350万円までの利子が非課税になります。「障害者等のマル優制度」とは別枠で利用できるため、合計700万円までが非課税になります。

【参考外部サイト】国税庁|障害者等のマル優(非課税貯蓄)

(2)勤労者財産形成貯蓄制度(財形貯蓄)

財形貯蓄制度を導入している事業者のもとで雇用されている方が利用できる貯蓄制度です。財形貯蓄には、次の3種類があります。

  • 勤労者財産形成貯蓄(一般財形貯蓄)…使途自由な貯蓄
  • 勤労者財産形成年金貯蓄(財形年金貯蓄)…年金のための貯蓄
  • 勤労者財産形成住宅貯蓄(財形住宅貯蓄)…持家の取得のための貯蓄

財形貯蓄のうち、「財形住宅貯蓄」と「財形年金貯蓄」の利子所得が非課税になります

「財形年金貯蓄」は老後のために行う貯蓄制度です。定期的に賃金から控除し、事業主を通じて積み立て、60歳以降の契約所定の時期から5年以上の期間にわたって年金として支払いを受けることを目的とした貯蓄です。元本550万円までの利子所得が非課税になります。

「財形住宅貯蓄」は、住宅を取得する目的で貯蓄する場合の制度です。定期的に賃金から控除し、事業主を通じて積み立て、持家の取得、または持家の増改築(リフォーム)等を目的とした貯蓄です。元本550万円までの利子所得が非課税になります。

「財形住宅貯蓄」と「財形年金貯蓄」を併用することはできますが、両方を合計して550万円までしか非課税となりません。

【参考外部サイト】厚生労働省|財形貯蓄制度

3.利子所得の金額

利子所得の金額は、その年中の利子等の収入金額とします。

その年分の利子所得の金額の計算上、収入金額とすべき金額は、原則として、その年において収入すべき金額(金銭以外の物または権利その他経済的な利益をもって収入する場合には、その物等のその取得等する時における価額)とします。
但し、無記名公社債の利子等は、その年において支払を受けた金額とします。

利子所得 = 利子等の収入金額

利子所得に経費はありません。

4.利子所得の課税方法

利子所得は、利子の種類によって、課税方法が異なります。

(1)源泉分離課税

預貯金などの利子所得は「源泉分離課税」によって課税されます。「源泉分離課税」とは、他の所得と完全に分離して課税する制度です。

原則として、一律20.315%(所得税および復興特別所得税15.315%、地方税5%)が課税されます。

金融機関等の利子の支払い者が、利子を支払う際に所得税を源泉徴収して税務署へ納付を行います。これで納税が完結する仕組みで、利子を受取る人は、手続き(確定申告)をする必要がありません。

源泉分離課税の対象は、次のとおりです。

  • 私募債の利子(同族会社が発行した社債の利子で同族株主等が受けるものを除く)
  • 預貯金の利子
  • 合同運用信託の収益の分配
  • 私募公社債投資信託の収益の分配
    など

(2)総合課税

上記の私募債の利子のうち、同族会社が発行した社債の利子で同族株主等が受けるものは、「総合課税」により課税されます。

他の所得と総合して総所得金額を構成し、超過累進税率により所得税が課税されます。

(3)申告分離課税

次の利子等は、他の所得と区分し、「上場株式等に係る配当所得等の金額」(課税所得金額は、「上場株式等に係る課税配当所得等の金額」)とすることができます。つまり、上場株式等の譲渡損失がある場合には、損益通算をすることが可能です。
なお、源泉徴収税額は、確定申告により精算されます。

  • 特定公社債(国債、地方債、公募公社債など)の利子
  • 公募公社債投資信託の収益の分配
  • 公募公社債等運用投資信託の収益の分配
  • 金融商品取引所に上場されている公社債等の利子等
    など

特定公社債の範囲は、次のとおりです。

  • 国債および地方債
  • 外国債および外国地方債
  • 会社以外の法人が特別の法律により発行する債権
  • 公募公社債
  • 外国公社債で一定のもの
    など

(4)申告不要

上記の申告分離課税が可能な利子等については、確定申告しないことができます(申告不要)。この場合には、源泉徴収税額だけで課税関係が完結します。

5.一般的には確定申告することができない

利子所得は、申告分離課税が可能な一部の利子を除けば、そのほとんどは、源泉分離課税で課税関係が完結します。

つまり、確定申告をする必要はありませんが、逆に、確定申告をすることができないともいえます。源泉分離課税された、預貯金などの利子は、確定申告書の「利子所得」欄に記入することはできません。

(1)海外の金融機関からの利子は確定申告が必要

ただし、海外の金融機関に預金がある方は注意が必要です。国内の金融機関からは源泉分離課税制度により利子は源泉徴収されていますが、海外の金融機関からは利子は源泉徴収されていません。そのため、利子所得(申告分離課税)として確定申告する必要があります

【参考】金融類似商品の収益に対する源泉分離課税

金融類似商品の収益については、一律20.315%(所得税15.315%、地方税5%)の税率による源泉分離課税が適用され、源泉徴収だけで課税関係が終了します。

金融類似商品とは、金融商品の利子課税に関して使われる言葉であり、利息相当分が利子所得以外の所得に分類される商品のことをいいます。 税法上はその期間収益などが利子所得以外に分類されていますが、実質的には利子とみなすことのできる商品です。

源泉分離課税の対象となる金融類似商品の収益などは、次の6つです。

  1. 定期積金の給付補てん金
  2. 銀行法第2条第4項の契約に基づく給付補てん金
  3. 一定の契約により支払われる抵当証券の利息
  4. 貴金属などの売戻し条件付売買の利益
  5. 外貨建預貯金・外貨投資口座の換算差益(為替予約した場合)
  6. 一時払養老保険や一時払損害保険などで一定の要件を満たすものの差益(保険期間等が5年以下のもの、または保険期間等が5年を超えるもので保険期間等の初日から5年以内に解約されたもの)

まとめ

金融機関からの利子などの利子所得は源泉分離課税制度により、受取時にすでに源泉徴収され、納税まで完結しているため、確定申告することができません。

ただし、海外の金融機関からの利子がある場合は、確定申告が必要になるため注意しましょう。

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監修
ZEIMO編集部(ぜいも へんしゅうぶ)
税金・ライフマネーの総合記事サイト・ZEIMOの編集部。起業経験のあるFP(ファイナンシャル・プランナー)を中心メンバーとして、税金とライフマネーに関する記事を今までに1300以上作成(2024年時点)。
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