高齢者のキャッシュレス|オススメはnanaco・WAON・Suica

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高齢者のキャッシュレス

私事ですが、筆者の義母(85歳)が「nanaco」を使い始めました。足腰が弱くなり、近所のセブンイレブンでの買い物が増えていたところ、nanacoを薦められたようです。nanacoで支払い、残金がなくなったら店舗でチャージする、という使い方です。『お財布の延長のような感じ』と言っています。

昨今のキャッシュレスブームの中で、「高齢者がキャッシュレスに対応できるだろうか?」と疑念を抱く方も多いと思います。しかし、高齢者に優しいキャッシュレス決済もありますし、高齢者向けのフォローアップやサポート体制も構築されつつあります。

そこで、今回は高齢者のキャッシュレス決済について考えてみたいと思います

1.高齢者キャッシュレス決済の現状

2018年4月の経済産業省のレポートによれば、キャッシュレス決済比率は、韓国約90%、中国約60%であるのに対して、日本でのキャッシュレス決済割合は20%以下です。

この数値について、筆者は「高齢者が現金主義で足を引っ張っているのではないか」「現役世代含めた若い世代がキャッシュレスの中心なのではないか」と考えていました。

皆さんはどうでしょうか?

しかし、高齢者のキャッシュレス決済を見てみると、70歳代以上の電子マネーの平均利用額は直近5年間で87%増加しており、伸び率は全世代の平均(58%)を上回っています(※)。確かに、最近、スーパーで電子マネーを使う高齢者を多く見かけるようになりました。

必ずしも「高齢者は現金へのこだわりが強い」わけではありません。使いやすくてメリットがあれば、高齢者もキャッシュレス決済を利用するきっかけになる、という事でしょうか。

※ 【参考元】日本経済新聞(2019/01/29)

2.高齢者がキャッシュレスを始める理由

では、高齢者がキャッシュレス決済を始めるきっかけは何でしょうか。大きく5つあると思います。

(1)便利でスムーズな支払い

高齢者になると手先を自由に動かしづらくなり、お金を数えて支払ったり、おつりを財布にしまったりといったことが億劫になりがちです。

その点、電子マネーならカード一枚で簡単に支払いができるため、高齢者に優しい支払い方法です。

(2)スリやひったくりのリスク軽減

高齢者を狙った「スリ」や「ひったくり」が、近年、後を絶ちません。財布に入れた現金やクレジットカードを全て盗まれると、被害が拡大するリスクがあります。

お財布に電子マネーと多少の現金だけ入れるようにすれば、被害額も少なくて済みます。また、紛失時の利用停止機能が付いた電子マネーであれば、より安心できます。

(3)高齢者を優遇したサービス

イトーヨーカ堂は、60歳以上限定の「シニアnanacoカード」で、通常のnanacoにはない割引などの特典を提供しています。

イオンでも65歳以上限定の電⼦マネー「ゆうゆうワオン」や、55歳以上限定の「G・G WAON」を発⾏しており、こちらも高齢者特権があります。

実際イオンでは、年齢が上がると来店頻度も⾼く、G・G WAONの稼働率は通常のWAONの約4倍に達すると言われています。

(4)時代に取り残されたくない

会社を定年退職して悠々自適の生活を送っている高齢者でも、「時代の流れに乗っていきたい」「社会とつながっていたい」と考えるものです。

2019年10月の消費税増税時には、キャッシュレス決済を対象としてポイント還元が実施されました。ニュースなどで見聞きする中で「キャッシュレス」に興味関心は抱きつつも、一人でやる自信はなく、「子供や孫に教えて貰えると嬉しい」と思っている高齢者もいらっしゃるかもしれません

こういう高齢者は、きっかけがあれば、キャッシュレス決済デビューしやすいと思います。

副次的な効果として、キャッシュレスを媒介として、子供や孫、あるいは周りの方やお店の店員さんとの会話も増えるかもしれません。

(5)高齢者の「見守り」に使える

キャッシュレスの使用履歴を定期的に確認することにより、高齢者の両親や祖父母の動向がある程度把握できます。

特に一人暮らしの高齢者の「見守り」のツールとして、活用できそうです。

筆者は、口座や電子マネー利用履歴等を自動で管理できる無料の財務管理アプリを使い、自分のお金の管理を行っていますが、このアプリを使えば、お金の入金出金の観点から高齢者の見守りが可能だと感じます。

記録を残しやすい電子サービスならではの利点です。

3.高齢者キャッシュレスの始め方

高齢者が「自ら」キャッシュレスを始めるのは、多少敷居が高いことかもしれません。

そのため、子供や孫、周りの方、お店の店員さんが薦めるのが、キャッシュレスを開始する第一歩としては良いのではないでしょうか。

(1)普段のスーパーやコンビニから

まずは、普段使っているスーパーやコンビニで使えるキャッシュレスから始めるのが良いと思います。イトーヨーカドーやセブンイレブンが近くにあればnanaco、イオンがあればWAON、電車やバスをよく使う方はSuicaなど交通系電子マネーでも良いでしょう。

(2)電子マネーから

高齢者はスマホではなく、まだガラケーを使っている方も多くいると思います。筆者の義母もガラケーです。ガラケーの高齢者にとって、いきなりQRコード決済はハードルが高いです。

まずはnanaco、WAONやSuicaなどの電子マネーが良いと考えます。

(3)電子マネーと意識しない

電子マネーとの意識はせずに、あくまでお財布の延長と考えて使うのが良いと思います。
お財布の中に現金を持つ代わりに電子マネーを持つ、電子マネーの残金がすくなったら、お店のレジでチャージする、というような使い方がシンプルで、高齢者にとって分かりやすいと思います。

(4)ポイントよりも使い勝手

高齢者にとって、ポイント付与率はあまり重要ではなく、むしろ高齢者にとって使い勝手の良い電子マネーを選ぶのが良いと思います。

もちろん、nanacoやWAONなどの高齢者特権があるにこしたことはありませんので、同じような使い勝手であれば、特権が付いていて有利な方を選びましょう。

(5)例:nanacoの始め方

例として、利用シーンの広いnanacoの始め方を紹介します。nanacoは以下の3ステップで始められます。

① nanacoを用意する
② nanacoにお金をチャージする
③ セブン-イレブンやイトーヨーカドーで買い物に利用する

① nanacoを用意する

nanacoカードはセブン-イレブンやイトーヨーカドーの店頭で発行できます(発行手数料税込み300円税込で年会費無料)。nanacoの機能を搭載したクレジットカードであるセブンカード・プラス(nanaco一体型)や、スマホをお持ちの方であれば「おサイフケータイ」のnanacoモバイルを利用することも可能です。

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② nanacoにお金をチャージする

現金からチャージしたい場合はセブン-イレブンやイトーヨーカドーのレジやnanacoチャージ機で、クレジットカードからチャージする場合はパソコンやスマホの画面を操作してチャージします。

③ セブン-イレブンやイトーヨーカドーで買い物に利用する

nanaco加盟店(セブン-イレブンなど)でお買い物をして、お会計時にレジで「nanacoで支払います」と店員さんに伝え、レジにおいてある端末にnanacoカードをタッチ(nanacoモバイルの場合はスマホをタッチ)すれば支払いが完了します。

4.高齢者キャッシュレスの注意事項

ここでは、高齢者キャッシュレスを薦める上で注意点について説明します。

(1)高齢者をフォロー

自発的にキャッシュレスを使い始める高齢者は少数派です。そのため、周りの人が紹介して、まず使ってもらうこと事が大事です。
また、単に薦めるだけでなくて、利用方法などを丁寧に説明してあげることも必要です。

フォローのポイントは下記の通りです。

①電子マネーカードを準備する
②お店での使用方法を説明する
③お金のチャージの仕方を説明する
④紛失・盗難時の対応なども、あらかじめ確認・伝達しておく
⑤「オレオレ詐欺」のたぐいのリスクについて説明する

(2)「オレオレ詐欺」のリスク

nanaco、WAONやSuicaはチャージ限度額が設定されていますので、高額の詐欺は起こりにくいと思いますが、スマホを使ったQRコード決済や銀行系ペイではお友達への送金や高額の取引も可能ですので、注意が必要です。
オレオレ詐欺のリスクを回避するためにも、nanaco、WAONやSuicaなどのチャージ型の電子マネーから始めるのが良いのではないでしょうか。

(3)利用履歴を定期チェック

高齢者に限らず、使用履歴などを定期的にチェックして、正しく使っているか、使いすぎていないか、不正使用などはないかを定期的にチェックすることが必要です。
高齢者本人がチェックできないようであれば、家族の人が見てあげることも考えた方が良いと思います。

5.最後に

お店の店員などに勧められ、実際に電子マネーを使ってみて、初めてその便利さや簡単さに気づく方もいます。

しかし、高齢者自らから自発的にキャッシュレス決済を始めるのはなかなか難しいことです。家族など周囲がフォローして、高齢者がキャッシュレス社会に取り残されないように配慮することの必要なのではないでしょうか?

そうすることにより、結果的には、高齢者にとっても、より便利で安全な、生活しやすい社会になるのではないかと思います。

服部
監修
服部 貞昭(はっとり さだあき)
東京大学大学院電子工学専攻(修士課程)修了。
CFP(日本FP協会認定)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。
ベンチャーIT企業のCTOおよび会計・経理を担当。
税金やお金に関することが大好きで、それらの記事を2000本以上、執筆・監修。
「マネー現代」にも寄稿している。
エンジニアでもあり、賞与計算ツールなど各種ツールも開発。
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