消費税の税込み/税抜き表示、正しいのはどちら?

結論からいいますと、「抹茶ラテ 440円(税込)」という税込み表示が正しいです。

「抹茶ラテ 400円(税抜)」という税抜き表示が認められていた期間もありましたが、2021年4月1日以降は、認められていません。

税込み表示/税抜き表示に関する法制度について解説します。
消費者も、小売店の経営者も、正しい知識を身につけてトラブルを防ぎましょう。

1.税込み表示(総額表示)が義務

税込みで「432円(税込)」と表示する方法を「総額表示」といいますが、現在は、税込み表示が義務です。
消費者にとっては、いくら支払えば良いかわかりやすいです。

国税庁のサイトには次のいずれかのパターン(A~F)で表示するよう記載されています。

パターンAは「税込」「税抜」のどちらも書かれていませんが、これもOKです。税込み価格での表示(総額表示)が義務付けられていることから、消費税について何も書かれていない場合、それは税込価格を意味します

パターンB~Fは「税込」と明確に書かれていますので、正しい表記だとすぐにわかります。

【参考】内税/外税って何?
税の表示で、たまに「内税」や「外税」という言葉もみかけます。
内税とは、税込価格のうちの消費税分のことです。
外税とは、税抜価格の消費税分のことです。
【参照】国税庁:タックスアンサーNo.6902 「総額表示」の義務付け

2.なぜ税抜き表示があるの?

消費者にとっては、税込み表示のほうがわかりやすいですが、なぜ税抜き表示があるのでしょうか?

それは、お店や事業者の利便性を考慮して、2013年(平成25年)10月1日から2021年(令和3年)3月31日までは、特例として、税抜き表示も認められていたからです。

たとえば、こんな感じです。

  • 10,000円(税抜)
  • 10,000円+税

2014年4月1日に消費税が8%に増税され、さらに2019年10月1日に消費税が10%に増税されましたが、消費税の税率が変わると、税込み表示の場合、価格表示を変更しなければならず負担が大きくなります。そこで、期間を定めて、税抜き表示も認められました。
これを「総額表示義務の特例」といいます。詳しくは、後述します。

また、お店にとっては、税抜き表示のほうが価格を安く見せられるというメリットもあります。

ここからは、総額表示方式(税込み表示)と、総額表示義務の特例(税抜き表示)について、詳しく解説していきます。

3.総額表示方式とは?

総額表示方式とは、税込み表示のことです。

総額表示は、2004年4月に義務化されました。具体的には「消費者に示す値札や広告に価格を表示するときは消費税相当額を含んだ支払総額の表示を義務づける」というものです。

義務化の理由

総額表示が義務化された理由は簡単です。消費者が「この商品・サービスにいくら払えば良いのか」明確にするためです。

値段の表示の際、商品やサービスを販売する側は、「安くみせたい」という気持ちがあります。そのほうが消費者に手に取ってもらえるからです。販売側は「できれば消費税を含まない金額(=税抜き表示)を表示したい」と考えます。

他方、消費者からすると、総額(支払う金額)が分からないと不安です。手持ちが乏しい場合などは「足りなかったらどうしよう」と、心配にもなります。

そこで国は、消費者が値札や広告を見てすぐに「いくら払えばいいのか」がわかるように、総額表示というルールをつくりました。

つまり、総額表示は消費者の利益を考慮したルールなのです。

対象

総額表示の義務対象となるのは、正確には「消費者に対して商品やサービスを販売する課税事業者が行う価格表示」です。
ザックリと「(ほぼ)すべての価格表示」が総額表示の義務対象、と考えてよいでしょう。

財務省は総額表示の義務対象として、次のものを例示しています。

  • 値札、商品陳列棚、店内表示、商品カタログなどへの価格表示
  • 商品のパッケージなどに印字/貼付した価格表示
  • 新聞折込広告、ダイレクトメールなどにより配布するチラシ
  • 新聞、雑誌、テレビ、インターネットホームページ、電子メールなどの媒体を利用した広告
  • ポスターなど

逆に、含まれないもの例としては、見積書、契約書、請求書などがあります。これらは「事業者間」でやり取りするものなので、消費者保護を考える必要がなく、総額表示も不要ということです。

あくまで消費者保護が軸なので、たとえ見積書であっても、広告やホームページに掲載して一般消費者に見てもらうものは、総額表示が必要になります。

4.総額表示義務の特例(税抜き表示を許可する特例)

総額表示義務の特例の期間は終了し、現在は、総額表示が義務です。
過去の特例がどのようなものであったかを知りたい場合に、ご参考としてお読みください。

消費者の利益を考慮して導入された総額表示(税込み表示)の原則義務化ですが、これが小売店などの負担を増やします。

特に消費税率が変わると、総額表示をしている小売店などはすべての価格表示を変更しなければなりません。店頭の値札だけでなく、サイトや広告での価格も変更する必要があります。

そこで政府は「消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法」(消費税転嫁対策特別措置法)を制定し、2013年10月1日から2021年3月31日(※)までの間は特例として、税別価格(本体価格)を表示してもよいことにしました。

※ 当初、2017年3月31日で終了する予定でしたが、増税が延期されたことに合わせて、こちらの期間も延期されました。

誤認されないための措置

ただ、特例通りに税抜き表示が残ると、今度は「価格の表示は総額表示(税込み表示)」と考えている消費者が混乱します。

そこで「誤認防止措置(※)」というものが発表されました。簡単に言うと、総額表示をしない小売業者などに対し「消費者が価格表示を誤認しないように注意しなさい」「誤認防止措置を講じなさい」と呼び掛けたものです。

誤認防止措置の一例として、財務省は次のような表示が望ましいとしています。

つまり、税抜の金額を表示するにしても「この金額以外に消費税がかかる」ことを強調しなさい、ということです。個々の商品の値札に「10,000円」と書きつつ、店内に「当店の価格はすべて税抜表示です」と掲示する場合も許されます。これで誤認防止措置を講じたことになります。

※【参照】 総額表示義務に関する特例の適用を受けるために必要となる誤認防止措置に関する考え方|財務省

税抜き表示のOK例とNG例

分かりやすく表示するのが正解ではありますが、世の中には「この書き方で大丈夫なの?」と疑問に思うような表示もあります。

そんなグレーな表示方法を、OK例とNG例に分けてみました

OK例

  • 目立つ掲示物(ポップ等)で「表示価格は税抜です」と強調しつつ、税込み11,000円の商品を「10,000円」と表示する
  • 店内に「1万円均一セール」のポスターを掲示し、商品に「10,000円(税抜)」と表示する
  • 店名を「100円ショップ」とし、商品に「110円(税込)」と表示する

これらは「税抜き価格」「本体価格」を強調した表示と読み取れるので、OKな例です。

NG例

  • 税込み価格の文字が小さ過ぎて読めない
  • メニュー上では「390円」と表示し、レジの横に掲示した価格表などで「390円(税抜)」と表示する
  • 目立つ場所(ポップ)に「鶏肉100グラム当たり86円(税込)」と表示し、商品ラベルには「300グラム240円」と印字する

3番目の表示ですが、たとえば消費者がポップを見ながらパックの「300グラム240円」の表示を見れば、「300グラム240円は税別価格だから、支払い総額は259円(=240円×108%)になるな」とわかります。

しかし、消費者がポップを見落としたり、ポップから離れたりしたら、「300グラム240円」が税込価格に見えます。これは誤認を招く表示といえるでしょう。

罰則

総額表示をしなくても、罰則はありません。また、「総額表示でなくてもよい特例」を使って税抜価格を表示しつつ、誤認防止措置を講じなくても罰則はありません。

ただ、そもそも消費者が誤認するような表示をすると、「不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)」という法律に違反する恐れがあります。この法律に違反すると、消費者庁から措置命令を出されます。

税込み/税抜き表示について、よくある質問

メニューの下の方に「すべて税抜き価格」と記載されている場合は?

Q.

ある飲食店のメニューで、個々の商品には「500円」とだけ価格が記載されていて、税込み表示だと思いましたが、実際は、下の方に「すべて税抜き価格です」と記載されていたらしく、550円を請求されました。どうすれば良いでしょうか?

A.

消費税は、税込み価格の表示(総額表示)が義務化されていますので、本来、税込み550円のものを「500円」と税抜き価格だけ表示することは、法律違反となります。

あなたが「税込み500円」と認識して注文したのであれば、別途請求された50円を支払う必要はありませんので、その旨を伝えれば良いでしょう。

お店からどうしても支払うように言われた場合は、消費生活センターにお問い合わせください。

税抜き価格しか表示がないメニューは、違反じゃないの?

Q.

飲食店で、いまだに税抜き価格しか表示されてメニューが置かれていますが、違反ではないのでしょうか?

A.

税込み価格の表示(総額表示)が義務ですので、税抜き価格の表示しかないメニューは違反となります。

しかし、メニューの改定には費用がかかることから、税込み価格に変更していない店舗もあるようです。

消費者としては、疑問を感じたら、注文する前に、税込み/税抜きのどちらかを尋ねることをオススメします。

悪質な場合には、消費生活センターにお問い合わせください。

税抜き価格だと知っていながら、消費税分を払わないことはできる?

Q.

ある店の価格表示は昔から税抜き価格であり、そのことを知っていて買い物をしていますが、総額表示の義務がありますので、「消費税分は書いてないから払わない」と主張することはできますか?

A.

たとえば、ある商品を購入するにあたって、「500円」という表示が税抜き価格であり、税込み価格が「550円」であることを、あなたが知っていた場合には、550円を支払う義務があります。

これは、「総額表示の義務」とは別に、あなたとお店の契約に関する話です。あなたもお店も、税込み価格「550円」を暗黙の了解としていたのであれば、550円を支払う必要があります。

一方で、このお店は総額表示の義務に違反していますので、そのことを指摘し改善するように依頼することはできるでしょう。

監修
ZEIMO編集部(ぜいも へんしゅうぶ)
税金・ライフマネーの総合記事サイト・ZEIMOの編集部。起業経験のあるFP(ファイナンシャル・プランナー)を中心メンバーとして、税金とライフマネーに関する記事を今までに1300以上作成(2024年時点)。
プロフィール この監修者の記事一覧
\この記事が役に立った方は是非シェアをお願いします/
  • Pocket