平成と共に歩んだ消費税の歴史、そして令和へ
消費税が導入されて30年。もう国民にとって当たり前の税金になっています。
ところで、消費税が開始されたのは平成元年であったことは、皆様ご存知でしょうか?
つまり、消費税は平成と共に始まったのです。
そして、新元号が「令和」になり、消費税率10%への増税と軽減税率導入が行われ、消費税も新たな転機を迎えました。
そこで、平成時代に消費税制度がどのように移り変わってきたのか、変遷の状況を振り返ってみます。
目次
1.消費税の変遷
まずは、消費税がこれまで歩んできた歴史を振り返ってみましょう。
消費税法の施行は平成元年ですが、実は消費税導入の議論は、その10年前から行われていました。今から考えると、約40年前から消費税の話は出ていたのです。
和暦 | 西暦 | 首相 | 出来事 | 詳細 |
---|---|---|---|---|
昭和54年 | 1979年 | 大平正芳 | 一般消費税導入が打ち出される | 閣議決定までされたが、その年10月の選挙で自民党が大敗する。 |
昭和62年 | 1987年 | 中曽根康弘 | 売上税法案が国会提出される | 小売業界からの反発が大きく、更に直後の選挙で自民党が敗れたことで廃案となる。 |
昭和63年 | 1988年 | 竹下 登 | 消費税法成立 | 日本初の付加価値税である消費税が、とうとう導入される。 |
平成元年 | 1989年 | 消費税法施行 | 4月1日より税率3%の消費税がスタートする。 | |
平成6年 | 1994年 | 細川護煕 | 国民福祉税の導入を構想 | 消費税廃止と国民福祉税(税率7%)の導入を記者会見で発表したが、即日白紙撤回される。 |
村山富市 | 消費税増税の法案が成立 | 1997年に消費税を5%に増税することが決定する。 | ||
平成9年 | 1997年 | 橋本龍太郎 | 消費税率5%へ増税 | 4月1日より税率5%の消費税がスタートする。 |
平成16年 | 2004年 | 小泉純一郎 | 税込での価格表示を義務付け | 消費税が含まれた価格表示となり、消費者は金額の計算がしやすくなった。 |
平成21年 | 2009年 | 鳩山由紀夫 | 政権交代 | 自民党から民主党へ政権が交代する。 |
平成23年 | 2011年 | 野田佳彦 | 消費税増税案の提出 | 消費税率を2014年に8%、2015年に10%とする案が税制調査会に提出される。 |
平成24年 | 2012年 | 上記案が可決 | 参院本会議で可決成立し、軽減税率導入も民自公で合意される。 | |
平成26年 | 2014年 | 安倍晋三 | 消費税率8%へ増税 | 4月1日より税率8%の消費税がスタートする。 |
税別価格での表示がOK | 税込価格では記載金額が大きくなってしまうなどを理由に、期間限定で税別価格での表示が認められる。 | |||
10%への増税を延期 | 2015年10月の増税が、2017年4月に延期される。 | |||
平成28年 | 2016年 | 10%への増税を再延期 | 2017年4月を2019年10月に更に延期される。軽減税率の導入は予定通りとされる。 | |
平成30年 | 2018年 | 増税と軽減税率の導入表明 | 2019年10月に消費税率を10%に増税すること、軽減税率を導入することが表明される。 |
2.【平成元年】消費税導入とその理由
消費税導入が決定されたのは、1988年12月、竹下政権のときです。そして、わずか4ヵ月後の1989年4月に実施されました。
導入までの議論の長さを考えると、異例の速さともいえる展開です。
消費税の導入は国民の猛反発を招き、翌年の参院選で自民党は大敗しました。
では、そもそもなぜ、消費税という税金を作ったのでしょうか。
2-1.消費税とは
消費税とはその名称通り、消費をしたことに対してかかる税金で、物やサービスを消費した時に発生します。
この消費というのは、スーパーで食品を購入した時やタクシーに乗った場合など、生活していくうえでのありとあらゆる場面が該当します。
そして、その購入金額に対して現行では8%の消費税が上乗せされ、消費者は購入金額と消費税を合わせて事業者に支払います。
よって消費税を負担するのは消費者ですが、実際に国に消費税を納税するのは事業者です。
このような担税者(税を負担する人)と納税者(税を納める人)が異なる税金のことを間接税といいます。 間接税は消費税以外にも、酒税、たばこ税、印紙税、ガソリン税などがありますが、消費税はその中でも圧倒的な税収があります。
2-2.導入理由
消費税が導入された理由は主に次の3点です。
高齢化社会への財源確保
今の日本が抱えている大きな問題の1つに少子高齢化があります。
少子化により現役世代が減少し、税金や社会保険料などの国の収入が減ります。他方、高齢化により医療費などの社会保障費は増大します。
増え続ける社会保障費をまかなうためには、国の収入を増やすしかありません。しかし、法人税と所得税に頼っているままでは、現役世代ばかりに負担をかけることになります。
消費税を導入することで税収を増やすことができ、更にその負担者を国民全体とすることで、現役世代だけに負担を集中させなくて済みます。
【出典】税収に関する資料 : 財務省
所得税と消費税でバランスをとる
所得税は累進課税です。たくさん稼ぐ人ほど高い所得税を支払い、低所得の人ほど所得税は低くなります。逆に消費税は貧富の差関係なく、すべての人が負担します。
この2つの税金を調整することによって、他の税制や社会保障制度など全体から見たバランスをとることができます。
間接税の仕組みを変える
消費税が導入される前にも、間接税には物品税や石油税など様々な種類がありました。これらは所得税増税を回避するために導入され、既にかなり増税もされたので、所得税も間接税も増税できない状況になってしまっていました。
特に贅沢品にかかる物品税については、生活水準の上昇により贅沢品に手が届く消費者も増えてきたため、時代に合わなくなってきていました。
そこで消費という行動に対して課税する消費税を導入することで、今までの特定のものに限定して課税していた間接税の仕組みを、大きく変えようとしたのです。
3.段階的な増税
消費税は、今まで2回、増税されました。自動販売機の価格変更など、毎回ニュースになったのを思い出します。増税される度に、国民は慣れるまでに時間がかかったものです。
そして2019年10月、3回目の増税がいよいよ近づいてきました。
ここで、今までの増税と、次回増税について見ていきましょう。
3-1.【平成9年(1997年)】3%→5%
平成9年(1997年)4月1日、橋本内閣のもとで、消費税率は3%から5%に増税されました。
導入から8年経ち初めての増税です。
またこの増税では地方消費税が導入され、5%のうち1%は地方税となりました。
今まで100円で103円だった支払いが105円になり、『金額の計算はしやすくなったな』と思った覚えがあります。
ただ、この時期はバブル崩壊後の不良債権処理の最中だったため、増税後に金融機関が次々と倒れました。「消費税増税がバブル崩壊後の長引く不況の原因」とまで言われました。
3-2.【平成26年(2014年)】5%→8%
その後も増税の必要性は再々主張されましたが、5%の時代は結局17年も続きました。
2012年8月に「社会保障と税の一体改革」の名のもとに、消費税の税率引き上げ法案が民主党の野田政権で成立しました。この増税も反発が大きく、その後衆院選で民主党は大敗しました。
そして平成26年(2014年)4月1日、消費税は5%から8%に増税されました。この増税は皆さんの記憶にも新しいでしょう。
このときは増税による事業者側への影響を考慮して、平成16年に始まった税込価格での表示も、特例として税別価格での表示が認められるようになりました。
消費者側からすると、『せっかく分かりやすくなったのに、また元に戻ったな』と、正直面倒な特例でした。
3-3.【平成31年(2019年)】8%→10%
そしていよいよ平成31年(2019年)10月1日に、消費税率が10%になります。そのころには元号が変わるため、正確には、新元号の元年です。
本来は平成27年10月の予定だったので、4年も延期されてようやくの増税です。
ただイチ消費者としては、単純に、延期のたびに『ホッ』としました。
時期 | 税率 | 税率の内訳 | |
---|---|---|---|
消費税(国税) | 地方消費税 | ||
平成元年4月1日~ | 3% | 3% | - |
平成9年4月1日~ | 5% | 4% | 1% |
平成26年4月1日~ | 8% | 6.3% | 1.7% |
平成31年10月1日~ | 10% | 7.8% | 2.2% |
消費税が10%にもなると、低所得者の負担はかなり大きくなります。そのため今回は、今までの増税にない様々な対策が取られます。
4.【令和元年(2019年)】軽減税率の導入
令和元年(2019年)、30年におよぶ消費税の歴史の中で、初めて軽減税率制度が導入されました。
4-1.軽減税率とは
軽減税率とは、消費税を10%に増税する際に「外食と酒類を除く飲食料品」と「新聞」の消費税率を8%に据え置く制度です。特定のものを購入する場合に限って税率が軽くなるので、軽減税率といわれます。
4-2.多くの国で既に導入済
日本では初めての導入となりましたが、世界では既に多くの国で導入されていました。 消費税を1954年に世界で初めて導入したフランスでは、軽減税率の線引きが非常に細かく設定されています。
例えば、世界三大珍味であるキャビア、フォアグラ、トリュフについては、キャビアは標準税率でフォアグラとトリュフは軽減税率になるのです。
これは、キャビアは他の2つに比べて贅沢品だから!という理由ではなく、輸入品のキャビアと税率を線引きすることで、 国内産業であるフォアグラとトリュフを守っています。
日本で導入された軽減税率は、「外食と酒類を除く飲食料品」と「新聞」とざっくりとした線引きになっていますが、今後、軽減税率の経験値を上げていき、フランスのように細かい線引きがされるようになるかもしれません。
【出典】付加価値税率(標準税率及び食料品に対する適用税率)の国際比較 : 財務省
まとめ
消費税は平成と共に始まり、30年間の間に少しずつ段階的に増税されてきました。選挙のたびに、各政党が消費税増税について様々な主張をしていたのが思い出されます。
そして、令和元年となった2019年、消費税が10%に増税され、併せて、軽減税率制度も導入されました。
2020年に発生した新型コロナウイルス感染症の対策として政府は多額の財政出動を行っており、今後、財政難ということで、また消費税増税の議論が出てくる可能性があります。
消費税は大幅な税収アップが期待できますが、国民生活にも大きな影響を及ぼしますので、何が正しい道であるのか、国民ひとりひとりが考えていく必要があるでしょう。