パナマ文書とタックスヘイブン、問題点があっても存続する理由
2016年5月、租税回避行為に関する「パナマ文書」が公開され大変大きな話題になっています。世界各国の政治…[続きを読む]
皆さんは、多くの著書やニュースなどで話題となりつつある「パーマネントトラベラー」をご存知でしょうか。一部の富裕層のライフスタイルとして注目を集めています。しかも、このパーマネントトラベラーは、税金とも大きく関係するライフスタイルです。
ここでは、パーマネントトラベラーとは何か、また、その税金の仕組みはどうなっているのかを徹底解説します。
目次
パーマネントトラベラーは、別名をパーペチュアル・トラベラーといいいます。トラベラーという名前のとおり、世界を旅するライフスタイルです。パーマネントトラベラーとは、簡単にいうと、ある国に行き、税金がかからない非居住者でいられる間だけ滞在し、居住者になる前に他の国に移動して生活している人々のことです。短期間だけ滞在することで、支払う税金を最小限にします。
パーマネントトラベラーには、その国に短期間しか滞在しない人と、税率が安かったり、優遇措置があるタックスヘイブンにある程度長く居住する人の2つのパターンがあります。
世界の国にはさまざまな税金の仕組みや制度がありますが、大きく属地主義の国と属人主義の国の2つに分けられます。
税金における属地主義とは、国籍に関係なくその国に住んでいる人、すなわち居住者に対して税金を課すという考え方です。日本も属地主義をとっていて、世界的に見ても属地主義の国の方が多いです。
一方、税金における属人主義とは、どこに住んでいるかには関係なく、その国の国籍を持っていれば税金を課すという考え方です。アメリカなどが属人主義をとっていますが、世界的に見れば少ないです。
では、もしも2つの国で居住者としてみなされたら、どちらの国にも税金を納めなければならないのでしょうか。実は、そんなことはありません。2つの国での二重課税を防止するため、2国間では租税条約が締結されています。その租税条約でどちらの国で課税されるか決められているため、それに従って税金を納めることになります。
我が国の所得税法では、居住者と非居住者の定義をしています。それによると居住者は、つぎのいずれかに当てはまる個人です。
住所は個人の生活の本拠とされ、生活の中心となる場所のことです。居所はその人が実際に居住している場所のことです。つまり、生活の中心となる場所や実際に居住している場所が日本国内である場合に、居住者となります。
例えば、普段は日本で生活しているが、短期間の仕事や留学のため今は海外に住んでいる場合や、海外で生活しているが、仕事等の都合で1年以上、日本に居住している場合などです。
一方、居住者以外の個人を「非居住者」といいます。
たとえ住民票を日本においていなくても、実質的な生活の本拠が日本国内にあると判定されると、居住者に該当し通常の納税義務が発生しますのでご注意ください。
パーマネントトラベラーの中には、税率が安かったり、優遇措置があるタックスヘイブンにある程度長く居住する人もいます。では、税金の安い国はどこなのでしょうか。
タックスヘイブンは、中部アメリカやヨーロッパを中心に、全世界に約50の国や地域があるといわれています。
中部アメリカでは、タックスヘイブンで世界第1位の英領ヴァージン諸島や、パナマ文書で一躍有名となったパナマやバハマなどがあります。
ヨーロッパでは、アイルランドやスイスの税率が低いです。また、イギリスやオランダもタックスヘイブンに該当します。
アジアでは香港やシンガポールが有名です。どちらも法人税率が安いだけでなく、相続税が非課税です。
またアメリカのネヴァダ州では、州所得税が非課税です。
パーマネントトラベラーとは、非居住者でいられる間だけ滞在し、居住者になる前に他の国に移動して生活している人々のことでした。しかし、我が国では、外国をずっと旅していても、生活の本拠が日本にあれば日本の居住者とみなされます。これでは、パーマネントトラベラーになれません。実は、パーマネントトラベラーになるために、しなければいけないことがいくつかあります。
「住民票を抜く」とは、市区町村役場等に「海外転出届」を提出することをいいます。これにより、日本国内に実際に住む場所がない状態になります。国籍等が日本からなくなるわけではありません。
日本の税法では、居住者に対して国内外の財産・所得に課税されるのはもちろんのこと、非居住者であっても国内の財産や所得に課税されます。そのため、パーマネントトラベラーであっても、国内に資産があったり、国内で生計をたてていれば税金がかかります。そこで、国内の資産は海外に移し、国内で生計をたてている場合は海外で生計をたてるようにします。
パーマネントトラベラーは、非居住者でいられる間だけ滞在し、居住者になる前に他の国に移動します。この居住者になる・ならないの基準が180日です。通常183日ルールといい、その国の滞在日数が183日を超えると居住者になる場合が多いです。しかし、国により180日だったり182日だったりもするため、できるだけ180日以内に他の国へ移ることが良いでしょう。
ここからは、パーマネントトラベラーになることの注意点を見ていきましょう。
パーマネントトラベラーは、定住することができません。何か困ったことがあったときに親類などが近くにいないということも起こるでしょう。また、日本の住民票を抜くということは、日本の公的年金も受け取ることができません。いざ病気になったときの保険料が高くなるなど、デメリットもあるので、かなりの覚悟が必要です。
パーマネントトラベラーだからといって、完全に無税になるわけではありません。海外の資産があれば、そこには資産がある国の固定資産税がかかります。また、物を消費したり、ホテルで宿泊したりすれば、消費税やホテル税なども課されることがあるので、注意が必要です。