確定拠出年金の概要とメリット&デメリット、「iDeCo」スタート
2016年5月24日の改正確定拠出年金法成立以降、確定拠出年金に注目が集まっています。2017年1月から…[続きを読む]
2017年1月から、iDeCo(イデコ=個人型確定拠出年金)の加入範囲が拡大され、公務員や専業主婦、企業年金に加入している会社員なども加入できるようになりました。
「イデコを始めてみようかな?」と思っている人も多いかもしれません。でも、運営管理機関をどこにするかは結構迷うのではないでしょうか。
損をしないイデコの運営管理機関の適切な選び方について解説します。
目次
2017年1月からの加入対象者の拡大を受け、イデコの加入者は順調に増加しています。
厚生労働省によれば、2017年7月31日現在の加入者数は、584,414人(うち、当月の新規加入者数の合計は36,066人)です。内訳は、以下のようになっています。
制度改正前の2016年12月31日現在では、合計の加入者数は約30万人でしたが、制度改定後の約7ヵ月で加入者数が2倍近くまで増えたことになります。新聞やテレビ、マネー誌など、メディアでイデコが取り上げられることも多くなってきました。
なお、第1号被保険者とは、日本国内に居住している20歳以上60歳未満の自営業者、フリーランス、学生などのことです。
第2号被保険者とは、60歳未満の厚生年金の被保険者(サラリーマン、公務員)のことです。
第3号被保険者とは、20歳以上60歳未満の厚生年金に加入している方の被扶養配偶者のことです。
運営管理機関選びの前に、運営管理機関の役割に触れておきます。
運営管理機関とは、確定拠出年金制度の運営・管理を行う金融機関のことで、加入者にとっては窓口の役割を果たします。
運営管理機関は正確には「運用関連運営管理機関」と「記録関連運営管理機関」の2つがありますが、加入者がやりとりすることになるのは前者の運用関連運営管理機関です。運用関連運営管理機関は、加入申し込みの受け付けや運用商品の選定・提示、情報提供など各種のサービスの提供を行います。
国民年金基金連合会の「iDeCo公式サイト」には、運営管理機関の一覧が掲示されています。
業態別にみると、都市銀行、地方銀行、信託銀行、信用金庫、労働金庫、証券会社、生命保険会社、損害保険会社、投信会社、専業会社等が運営管理機関になっています。
例えば、三井住友銀行や楽天証券、さわかみ投信、損保ジャパン日本興亜アセットマネジメントは、今回の制度改正を機に、2016年9月から12月にかけてそれぞれ運営管理業務に新たに参入しました。今や、ほとんどの金融機関が運営管理業務を手掛けているといっても過言ではないでしょう。
では、運営管理機関を選ぶには、どのようなことに注意すればよいのでしょうか。主なポイントは4つあります。順に見てみましょう。
運営管理機関選びの最も重要なポイントは、コストです。イデコを始めると、口座管理手数料(口座管理費用などとよばれることもあります)が毎月発生します。この口座管理手数料は、運営管理機関によって額が異なるのです。
イデコは通常、長期間に渡って加入することになるので、口座管理手数料が数十円違うだけでも、積み重なれば大きな額になり、その分運用収益を押し下げることになります。
まず、このコストを比較するようにしましょう。
運営管理機関が徴収する口座管理手数料以外にも、国民年金基金連合会が徴収する手数料(毎月103円)、資産管理機関(主に信託銀行など)が徴収する手数料(毎月64円)もかかりますが、これら2つはどこの運営管理機関でも金額は同じですので、あまり気にする必要はありません。
新聞やマネー誌のイデコの手数料比較で「コスト最安は年間2,004円」という表現がよく見られますが、これは、「口座管理手数料が無料、その他の手数料が(103円+64円)×12ヵ月=2,004円」の場合のことを指しています。
次に、運営管理機関が用意している運用商品の品揃えもポイントです。自分に合った商品が用意されている運営管理機関を選ぶ必要があります。
ただし、「商品が多ければ多いほどよい」というわけでは必ずしもありません。選ぶ方は迷ってしまうからです。
例えば、SBI証券は運用商品を60本以上揃え、ラインナップの豊富さを売りにしています。岡三証券も40本、りそな銀行、スルガ銀行も33本の運用商品を揃えています。
一方、みずほ銀行や三菱東京UFJ銀行のように、新しいプランを導入して商品数をパッシブのインデックス型投信中心に商品数を10本前後に絞り込んだところもあります。野村證券も商品数を19本まで減らしました。
また、今回新しく運営管理機関業務に参入したさわかみ投信は3本のみ、MYDCは4本のみとさらに絞り込み、わかりやすさを訴求しています。
投資信託は昨今インデックス型全盛ではありますが、損保ジャパン日本興亜アセットマネジメントのように、逆にアクティブ投信ばかりを揃えて商品のパフォーマンスを訴求しているところもあります。
ゆうちょ銀行は預金商品の種類が多いのが特徴ですし、大和証券は新興国株式の品揃えが充実しているのが目を引きます。この商品の品揃えは、運営管理機関の戦略の違いが最も顕著になる部分です。
運用商品については、品揃え以外にも信託報酬率にも留意する必要があります。
一般の投資信託では近年、インデックス型を中心に信託報酬率の引き下げ競争が激しくなっています。
イデコ用の投資信託はもともと一般の投資信託より信託報酬率が低いものが多いですが、それでも昨今、さらに信託報酬率が低い商品が続々投入されています。
例えば国内債券型のインデックス投信では、信託報酬率が税込で0.1%台のものも見られます。国内株式型のインデックス投信でも税込で0.2%台が普通になってきました。
イデコの制度改正に伴い、運営管理機関各社ともサービスの充実を図っています。例えば、主要運営管理機関では、次のようなサービスが見られます。
こういったサービスについても、運営管理機関選びのポイントになるといえるでしょう。
コールセンターも運営管理機関選びのポイントのひとつになります。なぜなら、コールセンターの営業日、営業時間は各社かなり異なるからです。
コールセンターは通常、祝日・振替休日・GWは休みの所が多いですが、それに加えて「土日営業なし(=平日営業のみ)」のところも意外と多いのです。会社員であれば、これでは昼休みくらいしか問い合わせることができず、困るかもしれません。
また、17時まで営業のところもあれば、20時まで営業しているところもあります。気になる運営管理機関があれば、事前に営業日や営業時間を確認しておいたほうがよいでしょう。
ここからは、今回のイデコ制度改正に伴う運営管理機関各社の動き(主に口座管理手数料をめぐる動きについて)を紹介します。
運営管理機関のなかには、イデコの加入者獲得を狙い口座管理手数料の無料キャンペーンを実施中のところがあります。また、手数料無料を恒久化したところもあります。各社の動きを具体的に見てみましょう。
2017年5月1日より口座管理手数料の改定を実施。次の2種類の条件のいずれかを満たす場合は、口座管理手数料が無料になる。(条件A)iDeCo残高または掛金累計額が50万円以上、(条件B)次の3点をすべて満たすこと(①月額掛金1万円以上、②iDeCo専用WEBサイトにてメールアドレス登録、③運用サポートツール「SMART FOLIO<DC>」にて目標金額を設定)。また、上記条件対象外の場合も、口座管理手数料は加入者・指図者とも月額255円(従来は月額293円)に引き下げられた。
2017年1月より「運営管理機関手数料2年間ゼロ」キャンペーン実施中。キャンペーン終了後も、所定の条件を満たせば口座管理手数料が月額54円割引になり、月額262円になる。
2017年1月から2018年3月の間に新プラン加入を申し込んだ加入者・指図者は、同期間中、口座管理手数料が無料に。キャンペーン終了後の口座管理手数料は、加入者・指図者とも資産残高100万円未満は月額283円(従来は月額342円)、資産残高100万円以上200万円未満は月額248円(同)、資産残高200万円以上は月額203円(同)。
2017年5月19日より、年金資産残高に関わらず、すべての加入者・指図者の口座管理手数料をゼロとする完全無料化を実施。同時に、加入時手数料および移換時手数料(いずれも変更前は1,080円)も無料となった。還付事務手数料、運管変更時手数料は別途徴収する。
2017年5月18日より、年金資産残高および掛金拠出額累計に関わらず、すべての加入者・指図者の口座管理手数料をゼロとする完全無料化を実施。運管変更時手数料は別途徴収する。
2017年1月から2017年12月の間に新たに加入者・指図者になった場合は、資産残高にかかわらず口座管理手数料が無料になる期間限定の特別キャンペーンを実施中。キャンペーン終了後の口座管理手数料は、加入者・指図者とも資産残高150万円未満は月額315円(従来は月額355円)、資産残高150万円以上はゼロ(従来は月額355円)。
2017年5月から、同年5月1日時点のAコース加入者(指図者は除く)および同年5月1日から2018年4月27日の間にAコースに加入した人(指図者は除く)を対象に、最大1年間口座管理手数料をゼロとする期間限定のキャンペーンを実施。キャンペーン終了後の口座管理手数料は加入者・指図者とも月額313円。
2017年4月3日よりSBIベネフィット・システムズを記録関連運営管理機関とする新プランの取扱いを開始。資産残高50万円以上は口座管理手数料が無料となる。資産残高50万円未満の口座管理手数料はこれまでと同じ月額324円。
また、2017年4月以降、2018年3月末までに新プランへの加入等の受付を完了した場合は、加入時・移換時の初期手数料(通常時:税込1,080円)が無料となる新規加入キャンペーンを実施中。同キャンペーンの対象者は、年金資産残高に関わらず毎月の口座管理手数料が1年分無料となる。
2017年4月3日から2018年4月15日の間に新たに加入者・指図者になった場合は、資産残高にかかわらず口座管理手数料をゼロとする期間限定の手数料無料キャンペーンを実施中。初回掛金引き落としの翌月か、(資産移換がある場合)移換完了月のいずれか早い方から2018年6月までの間、手数料が無料になる。
見てきたように、イデコに対する運営管理機関各社の取り組みは各社かなり異なります。
コスト(手数料等)、運用商品の品揃え(信託報酬率含む)、サービス、コールセンターの4つの項目についてよく確認し、自分に合った運営管理機関を選ぶようにしましょう。
制度改正後8ヵ月が経過しましたが、各社の動きは未だ活発ですので、ホームページで最新の動きを確認しておくことも必要です。
運営管理機関は途中で変更するとさまざまな不都合(資産を一旦全て現金化しなければならない、運用に空白期間が生じる、運営管理機関変更時手数料が徴収される場合がある等)が生じます。
そのため、一度選定したら加入中はなるべく変えない方がよいでしょう。
運営管理機関とは長い付き合いになりますので、選ぶときに迷う場合は、FP(ファイナンシャル・プランナー)・税理士など専門家に相談するのもよいかもしれません。