マイナス金利とは?住宅ローンなどに及ぼす影響

住宅ローン

2016年1月下旬の日銀政策決定会合で、日本初となる「マイナス金利」の導入が決定されました。

金利がマイナスというのは今までなかったこと、いったいどういうこと、銀行にお金を預けたら逆に利息をとられるの?と不安に思う人もいるかもしれません。

実際的には、個人口座については利息をとられる事態にはならないと思われますが、マイナス金利になると、タンス預金をする人が増えたり、住宅ローンを組んで家を買いやすくなったりと、いろいろな影響を及ぼしそうです。

1.マイナス金利とは

銀行にお金を預けると普通は利息がつきます。1万円を銀行に1年間預けたら100円の利息がつくとします。この利息100円を預けた金額1万円で割ると、100÷10,000=0.01=1%となりますが、これを金利といいます。つまり、預けた金額(元本)に対してどのくらいの割合の利息がつくかを示しています。

通常、金利はプラスの値ですが、マイナスになると逆に、お金を借りているのと同じような状態になり、預けた分だけ利息をとられることになります。自分の大切なお金を預けて逆に利息をとられたらたまったものではないですね。

ただ、今回の「マイナス金利」とは、銀行と日本銀行の間での話であって、私たちが銀行に預けているお金に対して、すぐに利息をとられるようになるわけではありませんので、ご安心ください。

銀行をはじめとする各金融機関は日本銀行に口座を持っていてお金を預けています。今まで日本銀行に預けている分については今までどおりの金利がつきますが、これから新たに預ける分についてはマイナス金利(現状-0.1%)となります。

2.マイナス金利の目的

マイナス金利になると、銀行などの金融機関は日本銀行にお金を預けると利息をとられて損をしてしまうため、日本銀行からお金を引き出して、企業にお金を貸したり、投資商品を買って利益を出そうとします。つまり、世の中にお金が多く出回るようになります。
そうすることで、企業は積極的にお金を使って設備投資をしたり社員の給料をあげるようになり、経済を活発化させようとするのが、マイナス金利にした目的です。

日本銀行は2008年のリーマンショック以来、ゼロ金利政策を導入してきており、金利はこれ以上下げられないギリギリのところまで下げていました。それに代わる対策として、量的緩和質的緩和を行ってきました。

量的緩和とは、簡単にいうと、銀行などの金融機関から国債を買って世の中にお金を多く出回るようにすることです。
また、質的緩和とは、日本銀行が金融機関から買い入れる範囲を広げ、長期国債や上場投資信託(ETF)などの金融資産も買い入れようとすることです。

量的緩和と質的緩和のどちらも、世の中で出回るお金の量を増やすことが目的であり、2%の物価上昇率(インフレ)を目標としてきました。

しかし、どちらの対策もなかなかうまくいっていないため、今回マイナス金利を導入しました。金利がマイナスというのは通常ではないことであり、やらないと思われていましたが、今回思い切ってマイナス金利を導入したことで、やればできるじゃんという感じで政策の枠が広がりました。量的緩和、質的緩和と併せて、格好良く「三次元金融緩和」と呼ばれています。

3.マイナス金利が国民に与える影響

やはり一番心配なのが、マイナス金利になって銀行にお金を預けておくだけで利息をとられるのでは、ということですが、その心配はあまりないと考えられます。それは、次の2つの理由からです。

(1)金融の安定化のため

1つ目は、金融の安定化のためです。もし、私たちの預金がマイナス金利になったら、銀行からお金を引き出す人が多くなります。紙幣・硬貨として実際に世の中で流通しているお金の量は、銀行の預金額よりも少ないので(※)、みんなが一斉にお金を引き出したらお金が足りなくなります。

日本銀行はどんどん新たに紙幣を増刷し世の中のお金の量が一気に増えますので、超インフレが起こり、結果的に金融の混乱をもたらします。もともと国がやりたいことは、安定したインフレ環境を作り経済を持続的に成長させることですので、超インフレが起こって経済が混乱してしまっては意味がありません。
※2016年1月時点において、円の流通高は約99兆円、全銀行の預金残高は約650兆円です。

【参考外部サイト】日本銀行:時系列統計データ検索サイト

(2)預金契約上の制限

2つ目は、契約上の制限です。私たちと銀行の間では預金契約がありますが、その契約では、顧客の口座から利息を差し引くことは契約の解釈上できないという考え方を、日本銀行が事務局を務める金融法委員会が発表しています。もともと、口座から利息を差し引かれることなど全く想定しないで預金契約をしたのですから、突然、利息を引くことはできないということです。

もちろん、預金のマイナス金利が今後ないとは言い切れませんが、仮にマイナス金利になったとしても、マイナス5%とかマイナス10%などの大幅なマイナス金利にはならないと予想されます。

とはいえ、三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行の大手三行が普通預金金利を0.001%に下げていますので、不安を感じて、タンス預金をしようとする人も増えています。

4.タンス預金をするならトラブル対策も意識して

銀行に預金するメリットがないなら、相続対策として自宅でタンス預金をしようと思う人もいるようです。

しかし、タンス預金にはデメリットも多くありますので、それらを紹介していきます。

(1)数十兆円のタンス預金

相続と「タンス預金」はなぜか切っても切れない関係なのでしょうか。相続の話をすると、仏壇からお金が出てきたとか、布団の中に隠してあったとか何かと話題になります。

実際、日本で流通している約99兆円の現金のうち、数十兆円はタンス預金といわれています。通貨流通量を日本の人口で割ると、一人当たり約78万円持っている計算になります。アメリカでの通貨流通量は一人当たり約2,000ドル、今の為替レート(1ドル120円)で日本円に直しても、約24万円ですので、日本での通貨流通量が非常に多いことがわかります。そのうち、相当な金額がタンス預金であろうと考えられています。

(2)セキュリティ対策やトラブル防止も考えて

マイナス金利が発表されて以来、ホームセンターで金庫が売れているようです。タンス預金をしようとする人が増えているのでしょうか。

ただ、タンス預金は盗難の危険があることに要注意です。盗難を防ぐためにセキュリティを強化したり、あと、それなりの金庫も用意しなければいけません。

タンス預金の金額にもよりますが、仮に100万円のお金のために、5万円の金庫を買ったとしたら5%の利息を払ったようなものです。また、ホームセキュリティ契約をすれば、毎月数千円の費用がかかります。盗難に入られてしまったら、たとえ犯人が捕まっても現金が戻ってこない可能性もあります。

課題もある、タンス預金ですが、それでもする人が増えているようですので、どうせやるなら将来の相続トラブルにならないようにしたいものです。

あちこちにバラバラに現金が置いてあると、相続が発生して一番困るのは、残された相続人です。タンス預金も立派な相続財産であり遺産分割の対象になりますが、現金額が確定しないと遺産分割もできませんし、あちこち探す手間だけで大変です。

相続人のことを考えると、ある程度まとめておくと良いでしょう。家族仲が良ければ、どこにいくら置いてあると家族に伝えておけば良いのですが、家族を信頼できないのなら、弁護士や税理士など第三者である専門家を遺言執行者に指定して、隠し場所を伝えておくこともできます。

また、タンス預金だからといって、本当にタンスにお金を入れて置いたのは一昔前の話、現在では、銀行の貸金庫を利用する方法もあります。金庫の大きさにもよりますが、小さい金庫なら年間1万円くらいで利用できますので、自宅に金庫を置いてホームセキュリティサービスに加入するよりは安全・安価といえます。

相続税が発生する場合は、当然ながらタンス預金も相続税の計算になります。バレないから大丈夫といって隠すことのないようにしてください。故意に隠ぺいする行為は脱税であり、重加算税が課されることにもなりかねません。

5.住宅ローンは組みやすい

(1)住宅ローンの金利の仕組み

マイナス金利が及ぼす影響として大きなものが住宅ローンであり、相続対策にも関係してきます。住宅ローンには固定金利変動金利があります。

変動金利は短期プライムレートというレートが基準になっていて、毎年4月1日と10月1日の年2回見直しが行われます。短期プライムレートは日銀の政策金利の影響を受けています。今回は日銀の政策金利が下げられたわけではないので、短期プライムレートに直接影響はないのですが、一部の銀行では変動金利が下がっています。

また、固定金利は長期金利が関連しており、一般的に「10年物国債利回り」が指標となっています。マイナス金利の導入により、10年物国債利回りが一時、歴史上初のマイナス0.01%まで低下しました。それらに応じて、一部の銀行で固定金利も下がり始めています。

日銀の政策金利がマイナスになった今、住宅ローンの金利は変動金利も固定金利でも史上最低になる可能性が高く、住宅ローンを組む予定の人にとってはまさに絶好のチャンスとなっています。ソニー銀行、りそな銀行、住信SBIネット銀行など、変動金利では年0.5%代まで下がっています。

(2)住宅ローンの借りどき

住宅ローンも空前の低金利であるため、住宅ローンの借り時といえるでしょう。

住宅ローンを組む際には、借りる金額を全額ローンにするよりも、10%程度、自己資金があったほうが金利が優遇されることが多いです。いわゆる頭金のような要素になりますが、それだけでも負担してあげるだけで子供にとっては住宅ローンの負担が軽減します。

ただし、マイナス金利がいつまで続くかはわかりませんので、将来、金利があがる可能性も考えて住宅ローンを組むことが重要です。変動金利は確かに安いですが、将来、上昇する可能性もありますので、35年間固定の固定金利にする、あるいは、変動金利と固定金利を組み合わせるなど、いろいろな方法があります。各銀行、各商品毎に様々なタイプがありますので、よく検討されることをお勧めします。

監修
ZEIMO編集部(ぜいも へんしゅうぶ)
税金・ライフマネーの総合記事サイト・ZEIMOの編集部。起業経験のあるFP(ファイナンシャル・プランナー)を中心メンバーとして、税金とライフマネーに関する記事を今までに1300以上作成(2024年時点)。
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