コンビニでは少額特例でインボイス不要?登録番号はどの番号?

コンビニ

課税事業者の方は、消費税の仕入税額控除を受けるにはインボイスが必要になります。

コンビニエンスストアなどで会議用の飲料などをよく購入する人は、コンビニでインボイスを発行してもらえるのかどうか不安かもしれません。

実のところ、一部ではインボイスを発行してもらえない店も出てきそうです。一方で、コンビニで購入する場合、インボイスがなくても仕入税額控除できる可能性が高いです。

コンビニを利用した時の、インボイスと仕入税額控除を受ける方法について解説します。

1.コンビニのインボイス登録番号

(1)コンビニで交付されるのは簡易インボイス

消費税の仕入税額控除を受けるには、原則、インボイス(適格請求書)が必要です。

インボイスの記載事項は次のとおりです。

  • ①発行者の氏名または名称
  • ②取引年月日
  • ③取引内容
  • ④受領者の氏名または名称
  • ⑤軽減税率の対象品である旨
  • ⑥税率ごとに合計した、税抜または税込価格および適用税率
  • ⑦税率ごとの消費税額
  • ⑧適格請求書発行事業者の登録番号

このうち、「④受領者の氏名または名称」を省略したのが、簡易インボイスです。いわゆる「レシート」です。
(正確には、簡易インボイスでは、税率ごとの消費税額と、適用税率のどちらか片方だけでOKです。)

コンビニでは、レシートにインボイス登録番号が記載されており、これがインボイスとなります。

コンビニ レシート

(2)フランチャイズ店はオーナーの登録番号

日本の主要なコンビニエンスストアチェーンはいずれも大手企業ですので、コンビニは当然のようにインボイス対応していると思うかもしれませんが、必ずしもそうでない可能性があります。

コンビニには、直営店とフランチャイズ店の2種類が存在します。

直営店は当然、インボイス発行事業者として登録しています。
レシートに記載されたインボイス登録番号(適格請求書発行事業者の登録番号)が、次の番号であれば、直営店です。

企業名 インボイス登録番号 所在地
株式会社セブン-イレブン・ジャパン T1010001088181 東京都千代田区二番町8番地8
株式会社ファミリーマート T2013301010706 東京都港区芝浦3丁目1番21号
株式会社ローソン T2010701019195 東京都品川区大崎1丁目11番2号
ミニストップ株式会社 T4010001030181 千葉県千葉市美浜区中瀬1丁目5番地1
山崎製パン株式会社
(デイリーヤマザキ)
T4010001008806 東京都千代田区岩本町3丁目10番1号
株式会社セコマ
(セイコーマート)
T7430001008637 北海道札幌市中央区南九条西5丁目421番地
株式会社JR東日本クロスステーション
(NewDays)
T3011101042662 東京都渋谷区千駄ヶ谷5丁目33番8号

レシートに記載された番号が上記の番号でない場合は、直営店ではなくフランチャイズ店です。

コンビニのオーナー(中小企業または個人事業主)がインボイス発行事業者(適格請求書発行事業者)として登録しており、そのオーナーのインボイス登録番号(適格請求書発行事業者の登録番号)がレシートに記載されています

もし、レシートに登録番号が記載されていなければ、インボイス発行事業者として登録していないことになります。

具体例

たとえば、こちらのレシートを見てみましょう。

コンビニ レシート

国税庁の「適格請求書発行事業者公表サイト」で登録番号を検索してみると、山形県の建設会社の名称が表示されます。

東京都品川区にあるコンビニですが、事業者はあくまでも、山形県の会社ということになります。

2.インボイス登録していないコンビニもあるかも

フランチャイズ店で小規模の場合、オーナーがインボイス発行事業者として登録しておらず、インボイスを発行できない可能性もあります。

登録しない理由として、2つ考えられます。

顧客のほとんどが消費者

コンビニの顧客のほとんどは消費者であり、インボイスを必要としません。中には、会議用の飲料や弁当を購入する課税事業者もいるでしょうが、顧客のうちのごく少数の割合です。

そうなると、インボイス登録をするメリットがほとんどなく、レジ対応などデメリットのほうが大きいため、登録していないコンビニオーナーもいると考えられます。

個人事業主は本名を明かしたくない

店舗によって異なりますが、コンビニの1日の売上は平均的に50万~60万円くらいあり、年間にすると約2億円程度の売上となります。

課税売上が1,000万円を超えていますので、免税事業者ではなく、課税事業者でしょう。

だとすれば、インボイス登録するのが当たり前に思われますが、個人事業主の場合、登録すると、本名を明かすことになります。
レシートには「〇〇店」と屋号で記載されていたとしても、国税庁の「適格請求書発行事業者公表サイト」で調べれば、屋号と一緒に本名が表示されますので、本名がバレてしまいます。

いろいろな理由から本名を明かしたくない個人事業主にとっては、インボイス登録をしないケースもあるでしょう。

3.コンビニで1万円未満は少額特例でインボイス不要

コンビニオーナーがインボイス登録しておらず、インボイスを発行してもらえない場合(レシートに登録番号が記載されていない場合)、仕入税額控除を受けることができないのでしょうか?

実は、期間限定ですが、「少額特例」で、1万円未満の買い物については、インボイスがなくても、帳簿の保存のみで、仕入税額控除を受けることができます

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(1)少額特例(1万円未満の課税仕入れ)の条件

コンビニでの買い物は、通常、1万円未満ですので、ほとんどのケースで少額特例を適用できます。

ただし、適用するためには、次の条件があります。

  • 2年前(法人は2期前)の課税売上高が1億円以下、または、前年の1月1日から6月30日(法人は前期の事業年度開始から6ヶ月間)の課税売上高が5,000万円以下
  • 支払対価の金額が税込みで1万円未満
  • 期間:2023年(令和5年)10月1日~2029年(令和11年)9月30日

6年間だけの期間限定ですが、2年前の課税売上1億円以下か、または、昨年の上半期の課税売上5,000万円以下の個人事業主・中小企業であれば、少額特例を適用できますので、コンビニでインボイスをもらえるかどうか気にする必要はありません。

1万円未満は1回の取引で判断

少額特例の基準「1万円未満」は1回の取引の金額で判断します。

つまり、合計で税込13,000円の商品を購入した場合、1回の会計であれば少額特例を適用できません。もし、2回に分けてレジで会計を行い、それぞれ、税込7,000円、税込6,000円であれば少額特例を利用できます。

(2)コンビニオーナーの情報を帳簿に記載

少額特例を適用する場合、インボイスは不要ですが、次の内容を帳簿に記載する必要があります。

  • 課税仕入の相手方の氏名または名称 → (例)〇〇建設株式会社
  • 課税仕入の相手方の住所または所在地 → (例)〇〇県〇〇市〇〇町〇〇
  • 取引年月日 → 〇〇年〇〇月〇〇日
  • 取引内容(軽減税率対象の場合はその旨を記載) → 飲料の購入(軽減税率対象)
  • 支払対価の額 → (例)500円

※他の特例と違って、少額特例の対象である旨の記載は必要ありません。

ここで、いくつか、注意点です。

氏名・名称は屋号でもOK

相手の氏名または名称について、原則は、オーナーの氏名または名称を記載します。

さきほどのレシートの例ですが、店名(屋号)は「西五反田6丁目店」ですが、オーナーの名称は「〇〇建設株式会社」ですので、原則的には、帳簿に「〇〇建設株式会社」と記載します。

ただし、相手を特定できるのであれば、「ファミリーマート品川区西五反田6丁目店」などと、屋号(店名)で記載しても構いません

住所・所在地はオーナーのもの

相手の住所・所在地は、コンビニの住所ではなく、オーナーの住所・所在地を記入します

店の住所は「東京都品川区西五反田6丁目24」ですが、オーナーの住所は「山形県〇〇市〇〇町〇〇」ですので、帳簿には「山形県〇〇市〇〇町〇〇」と記載します。

4.インボイスが必要なら、購入前に確認を

課税売上1億円以下の会社・個人事業主であれば、2029年9月30日までは、コンビニで1万円未満の買い物ならインボイスがなくても仕入税額控除を受けることができます。

ただし、帳簿にコンビニオーナーの名称・所在地を記入する必要があります。その記入の手間がかかって意外と面倒かもしれず、件数が多い場合、インボイスを発行してもらったほうが楽になる可能性もあります。

インボイスを発行して欲しいなら、コンビニで購入前に必ず確認をするのが良いでしょう。

購入してから、レシートに登録番号が記載されていないことに気づいて、やはり払い戻して欲しいと言っても難しい可能性があります。

全体的には、インボイス対応しているコンビニのほうが多いと思われますので、いくつかの店舗を探せば、対応している店が見つかるでしょう。

服部
監修
服部 貞昭(はっとり さだあき)
東京大学大学院電子工学専攻(修士課程)修了。
CFP(日本FP協会認定)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。
ベンチャーIT企業のCTOおよび会計・経理を担当。
税金やお金に関することが大好きで、それらの記事を2000本以上、執筆・監修。
「マネー現代」にも寄稿している。
エンジニアでもあり、賞与計算ツールなど各種ツールも開発。
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