健康保険証が使えなくなる!マイナンバーカード(マイナ保険証)に統一

健康保険証
【最新情報】
・2023年4月から、従来の保険証だとマイナ保険証よりも、初診料が12円も高くなります。(2022/12/22)
・将来的にネット診療でもマイナ保険証が利用可能になる予定です。(2022/11/6)

病院にかかるときに持っていく「健康保険証」
実は、その健康保険証が、2024年秋から使えなくなります。そのかわり、マイナンバーカードを健康保険証(マイナ保険証)として利用することになります。

ただ、マイナンバーカードはまだ普及しておらず、個人情報漏洩に関する心配もあり、国民や医療機関から反対の声があがっています

はたしてどうなっていくのか、予測も交えて、わかりやすく解説します。

1.今の健康保険証が使えなくなる?

2022年10月13日、政府は、現在の健康保険証を廃止して、マイナンバーカードに一本化する方向で検討していると正式に発表しました。

今は、病院に行くときに、こういう健康保険証を持っていって、受付で提示します。

健康保険証

健康保険証には、氏名や、被保険者の番号、加入している保険組合などの情報が記載されています。病院側は、これを確認することで、その患者さんが保険に加入していることや、何割負担であるかがわかります。

ところが、この健康保険証を廃止して、マイナンバーカードを健康保険証として利用しようとしているのです。

2.マイナンバーカードを健康保険証(マイナ保険証)として利用

マイナンバーカードは、こんな感じのカードです。表面(図の上側)に氏名・住所・性別・生年月日・本人の顔写真などが記載されており、裏面(図の下側)には、マイナンバー(個人番号)が記載されています。

「あれ、健康保険証の情報はどこに記載されるの?」と疑問に思うかもしれませんが、文字としては印字されません。

裏面の左側のほうに、黄土色っぽくなっている箇所がICチップですが、そこにデジタル情報として埋め込まれます。そして、病院で、専用の機械を利用して読み取ります

現在の健康保険証と区別するために、「マイナ保険証」と呼ばれたりしています。

マイナ保険証の利用はすでに始まっている

マイナ保険証(マイナンバーカードを健康保険証として利用)は、2021年10月からすでに本格的に始まっています。ただ、医療機関(病院・薬局等)が対応していないと使えません。対応している医療機関は、2022年10月時点でまだ31%と少ないです。

ネット診療も将来対応予定

現在、ネット診療(オンライン診療)ではマイナ保険証を利用できず、健康保険証を画面越しに見せるか、事前に保険証の画像を医師に送付する必要がありましたが、将来、ネット診療でもマイナ保険証を利用できるようになる予定です。

マイナ保険証のカードリーダーを用意すれば、自宅でもマイナ保険証でネット診療を受けられます。

3.健康保険証廃止までのスケジュール

健康保険証が廃止されるまでの、現在予定されているスケジュールです。

  • 2023年4月 医療機関にマイナンバーカード保険証のシステム対応義務化
  • 2023年5月 Androidのスマートフォンに搭載、iPhoneは未定
  • 2024年秋 現在の健康保険証を廃止し、マイナ保険証に一本化

2022年10月、診療報酬の改定で、マイナ保険証のほうが有利に

2022年4月の時点では、次のように、マイナ保険証を利用すると、従来の保険証を利用するよりも、費用が高くなっていました。

窓口負担3割の場合の診療報酬の加算額
 マイナ保険証従来の保険証
初診時21円9円
再診時12円(なし)
調剤薬局での利用1ヶ月毎に9円3ヶ月毎に3円

これでは、マイナ保険証を利用したい人がいないという批判が相次ぎ、2022年10月に診療報酬が改定され、マイナ保険証を利用したほうが、費用が安くなりました

窓口負担3割の場合の診療報酬の加算額
 マイナ保険証従来の保険証
初診時6円12円
再診時(なし)(なし)
調剤薬局での利用6ヶ月毎に3円6ヶ月毎に9円

ただ、マイナ保険証のシステム導入費用の一部を国民が負担しますので、どちらにしても、以前より診療報酬が高くなっています

2023年4月から、従来の健康保険証がマイナ保険証よりも12円も高く!

2023年4月以降、従来の健康保険証がマイナ保険証よりも、初診時で12円、再診時で6円高くなります。

窓口負担3割の場合の診療報酬の加算額
(2023年4月以降)
 マイナ保険証従来の保険証
初診時6円12円⇒18円
再診時(なし)(なし)⇒6円

「マイナ保険証を使え!」という政府の強烈なメッセージと捉えて良いでしょう。

2024年秋、健康保険証の新規発行を停止か?

2024年秋に健康保険証を廃止するとのことですが、おそらく、健康保険証の新規発行を停止するだけではと考えられます。

今の健康保険証は見せるだけで良く、利便性ではマイナ保険証より優れているのですから、あえて使えなくするメリットはまったくありません。ある日から、突然、今の健康保険証を使えなくしたら、医療機関で大混乱することが目にみえています。

それ以降に、就職・退職・転居などで保険証が切り替わった人は、新たな保険証は発行されないことになりそうです。

4.なぜ、健康保険証を廃止するの?

今の健康保険証で特に何も不便を感じていないのに、「なぜ、健康保険証を廃止するの?」と疑問に思うかもしれません。

いちおう、政府は以下のような理由を掲げています。

  • マイナンバーカードと健康保険証の2枚持たなくて良いので楽になる
  • 医療機関同士で患者の情報を共有できるので、適切な診療をできる
  • 自分の医療情報を閲覧できる
  • 確定申告での医療費控除の記入が楽になる

どれも、もっともらしい理由ではあるのですが、そもそも、マイナンバーカードを日常的に持ち歩いている人は少ないでしょうし、自分の医療情報を閲覧したい人も少数ではないでしょうか。

上記のメリットを得たい人だけが、マイナ保険証を持てば良いだけな気がします。

なのに、なぜ、政府は、健康保険証を廃止して、マイナンバーカードに統一しようとしているのかというと、マイナンバーカードを普及させたいからです。

日本は、「国民皆保険制度」といって、全員が何らかの健康保険に加入しており、みんなが健康保険証を持っています。もし、健康保険証を廃止してマイナンバーカードに統一すれば、全員がマイナンバーカードを持つことになります。これが、真の目的です。

5.政府は、マイナンバーカードをなんとしてでも普及させたい

マイナンバーカードは、その名のとおり、「マイナンバー」が記載されたカードです。

マイナンバーは別名「個人番号」とも呼ばれていて、2015年(平成27年)10月に導入されました。マイナンバー導入の目的は、国民全員にそれぞれ番号を付与することで、税金や社会保障の手続きや、市区町村などでの行政の手続きを楽にするためです。

今までは、国民の情報は、税務署や社会保険事務所、各市町村などで管理されており、一元化されていませんでした。また、フォーマットも異なっていました。そのため、役所の間で情報連携するのが大変であり、また、国民側も、いろいろな手続きをする際に、それぞれの専用の書式で申請をしなければなりませんでした。

そこで、マイナンバーを導入して、国民全員の情報を一元管理しようとしています。

そして、マイナンバーカードも一緒に導入されました。マイナンバーカードには、ICチップに電子証明書が格納されていますので、窓口に行かなくても、インターネット上で、税金や社会保険などの、いろいろな手続きが可能になります。身分証明書としての役割もありますが、それ以上に、ICチップに格納された情報の役割が大きいです。

マイナンバーカードがなかなか普及しない

ところが、マイナンバーカードは意外にや普及しませんでした。

そこで、政府は、マイナンバーカードを作成して、特定の行為をすると、マイナポイントという最大2万円分のポイント還元が受けられる制度を2回にわたって実施しました。詳細は次の内容です。

  • ① キャッシュレス決済で25%ポイント還元(最大5000ポイント)
  • ② マイナンバーカードを健康保険証として利用する登録をした人に7500ポイントプレゼント
  • ③ 公金受取口座を登録した人に7500ポイントプレゼント
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それでも、2022年10月11日時点で、マイナンバーカードの普及率は49.6%です。まだ半分の人はマイナンバーカードを持っていないのです。

政府は、2023年3月までにマイナンバーカードをほぼ全国民に行き渡らせることを目標としていましたが、このままでは、いつまでたっても、目標を達成できそうにありません。

事実上のマイナンバーカード義務化に

業を煮やした政府は、ついに強引な手段に出ました。それが、健康保険証の廃止です。健康保険証は国民全員が持っていますので、マイナンバーカードに統一すれば、確実に持つことになるからです。

病院にかからないという人はほとんどいないですので、事実上のマイナンバーカード義務化といえます。

今回、マイナ保険証を進めているのは、デジタル庁の河野大臣ですが、河野大臣は、以前、ワクチン担当相の際に、マイナンバーカードを使ったワクチン接種証明書の発行がうまく進まなかった苦い経験があり、そのために、強引に推し進めようとしているという意見もあります。

6.政府の究極の目標

表向きはDX

なぜ、政府がそこまでしてマイナンバーカードを普及させたいのかというと、まず、表向きは「DX」です。

最近「DX(デジタルトランスフォーメション)」という言葉が流行していますが、ざっくりいうと、「IT技術を浸透させることで、人々の生活をより良いものに変革していく」ことです。

日本は、1990年のバブル以降、経済成長が止まっており、「失われた30年」などとよく言われています。その理由の一つが、「生産性の低さ」であり、他国と比較して、行政でのDXが進んでいないことが原因の一つとして挙げられています。そこで政府は、デジタル庁を創設して、行政手続きをシステム化し、もっと楽に手続きができるように進めています。

究極の目標は、国民の情報の一元管理

と、ここまでは、表向きのもっともらしい理由ですが、その裏にある究極の目標は「国民の情報を一元管理する」ことです。特に、預貯金・株式などの財産の情報を把握することで、税金を確実にとれるようになります。現在は、マイナンバーに預貯金口座の情報を紐づけるのは任意ですが、近いうちに強制になる可能性も高いです。

「政府に情報を管理される」というと、一般的には悪い印象かもしれません。政府の借金(国債)が膨らんでいるので、国民の財産を把握していれば、預金封鎖をして、国民から財産を巻き上げやすくなるなんていう話もあります。

しかし、国民にプラスの側面もあります。政府が、国民の財産や医療情報などを把握することで、経済・金融や医療・社会保障などの、より有効的な政策を立てやすくなります。

海外では、国民全員に番号が付与されていて、行政の手続きで番号を提示することは一般的ですので、日本も同じようになっていく可能性が高いでしょう。

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7.健康保険証が使えなくなることに反対の声が多数

健康保険証が使えなくなることに対して、反対の声が多数あがっています。

たとえば、2022年11月22日の京都新聞の報道によれば、京都の開業医の8割がマイナ保険証に反対しているとのことです。

個人情報漏洩、紛失時の再発行

国民からは、個人情報漏洩や、紛失時の心配をする声が高いです。

「マイナンバー」は個人情報なので、カードを盗み見られたりするのでは、という心配があります。実際のところ、マイナンバーを知ったところで、悪用はできないのですが、過去に政府の失態が多くあるため、国民から信頼されていないという面が大きいでしょう。

ただ、マイナンバーカードの情報は4桁のパスワードがあれば読み出せますが、そのパスワードを知られてしまうと、個人情報が漏洩するリスクはあります

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紛失・破損時は再発行が必要ですが、市区町村の窓口は混み合っており、申請から再発行まで1ヶ月~2ヶ月程度かかる可能性もあります。それまでの間、いったん全額負担、必要になるかもしれません。

これに対して、2022年10月26日、河野デジタル相は、再発行にかかる期間を1週間程度に短くする方針を示しました。ただ、現状、時間がかかっているのは、市区町村の窓口で本人確認をすることが負担になっているからであり、本人確認の手順を根本的に見直さない限り、短縮は難しいでしょう。

スタッフの手間が増える、機械の故障

また、医療機関側からは、手間が増えたり、機械の故障時に診療ができなく心配があります。マイナンバーカードの情報を読み出すには、4桁のパスワードを入力するか、顔で認証をするかのどちらかですが、患者さんが機械の操作に慣れていないと、手間取ってしまい、スタッフが対応する手間が増えそうです。

また、読み取りの機械が故障してしまうと、患者さんの保険情報がわからないため、いったん全額負担してもらうことになりますが、それで納得する人は少ないはずですので、事実上、診療ができなくなってしまいます。

どちらも、実際に健康保険証が廃止するまでに、政府は何らかの対処をすると思いますが、それでも、いろいろなトラブルは起きそうです。

8.マイナ保険証を持っていなくても保険診療を受けられる?

健康保険料を払っているのに、マイナンバーカードを持っていないだけで保険診療を受けられないのはおかしい、という声があがっていましたので、2022年10月24日、政府は、マイナ保険証を持っていなくても保険診療を受けられる新制度を用意すると表明しました。

現在でも、入社や退職などで、加入している保険が切り替わって、新しい保険証が手元に届くまでの間は、日本年金機構などから発行された資格証明書(健康保険被保険者資格証明書)を持っていけば、保険診療を受けられます。

健康保険被保険者資格証明書

ただ、これはあくまでも、保険証が届くまでの臨時のものですので、有効期限は20日間だけです。

政府は、この資格証明書とは別の新しい制度を作る予定のようです。

ほかに、マイナンバーカードを普及させるために、紙の健康保険証を有料で発行するという案もあるようです。

いずれにしても、新しい制度を作れば、またコストがかかるし、結局、マイナンバーカードへの乗り換えは進みませんので、やっていることが迷走している、との批判の声もあがっています。

9.運転免許証もマイナンバーカードに統一(マイナ免許証)

健康保険証だけでなく、運転免許証もマイナンバーカードに統一しようとしています(マイナ免許証)。ただし、運転免許証の廃止までは検討されていません。

健康保険証と同じタイミング、2024年秋か、または、もう少し前倒しされるかもしれません。運転免許証の情報もICチップ内にデジタルデータとして格納されます。

今の運転免許証は、カード表面に、免許の種類や番号が記載されていますが、マイナンバーカードでは、ICチップにデジタルデータとして保管されますので、情報を知るには、カードリーダーが必要になります。

路上パトロールの警察官は、これからは、専用機器を携帯することになるのでしょうか。

レンタカー会社では、借りる人の運転免許証の確認のために、カードリーダーを導入する必要があり、コスト負担が増えそうです。

まとめ

2024年秋に、今の健康保険証が廃止されます。マイナンバーカードを健康保険証(マイナ保険証)として利用するようになります。

ただ、国民からも医療機関からも反対の声が多数あがっており、実際にどうなるかは、まだわかりません。

健康保険証の廃止に関するFAQ

健康保険証はいつ使えなくなる?

2024年秋に、今の健康保険証は使えなくなり、マイナンバーカードに一本化される予定です。

ただ、あくまでも予定ですので、今までの政府のいろいろな政策の実施状況から判断すると、具体的な時期はずれる可能性が高いです。

マイナンバーカードは必須になるの?

健康保険証が廃止され、マイナンバーカードに統合されます。

健康保険証がないと、病院の窓口で保険が適用されず全額負担になってしまいますので、マイナンバーカードは必須になるでしょう。

健康保険証はまったく使えなくなるの?

政府は、2024年秋から、原則、健康保険証を廃止するとしています。

ただ、マイナンバーカードだけになると、破損したり、機械が壊れたりなどのトラブルがあったときに、保険を適用できなくなってしまいます。また、マイナンバーカードをどうしても作りたくない人や、作り方がわからない高齢者など、マイナンバーカードを持っていない人が一定数、生じると思われます。

その対応として、実際には、しばらくの間は、今の健康保険証も利用できるようにし、併用することになるのではないでしょうか。

そうすると、結局、健康保険証も同時に持ち歩くことになりそうです。

完全にマイナンバーカードに統一するのは、もう少し先になりそうな予感がします。

監修
ZEIMO編集部(ぜいも へんしゅうぶ)
税金・ライフマネーの総合記事サイト・ZEIMOの編集部。起業経験のあるFP(ファイナンシャル・プランナー)を中心メンバーとして、税金とライフマネーに関する記事を今までに1300以上作成(2023年時点)。
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