転職で空白期間ができると健康保険料が割高になる!? 仕組みと軽減方法を解説

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日本人は、生涯にかかる医療費の約8割を高齢者になってから使うそうです。ですから、30代までは、お給料から天引きされる健康保険料は「一方的に損をしている」と感じている人も多いでしょう。

そして、その感覚はサラリーマンを辞めて国民健康保険に加入すると更に強くなるはずです。

しかしながら、日本ではサラリーマンを辞めたら、たとえ求職活動中でも国民健康保険に加入する必要があります。では、保険料が高いからと言って加入しないとどのようなことになるのでしょうか?

今回は、このように何かと不満が多い国民健康保険について、仕組みと意外と知られていないメリットなども含めて、分かり易く解説したいと思います。

1.転職活動中・無職期間も健康保険料を払わなくてはいけない?

1-1.日本の「国民皆保険制度」について

日本は、世界的にも珍しい国民皆保険制度(その国に居住する人はすべて健康保険に加入することが出来ること)が確立している国です。

ですから、私達は、親に扶養されている子供の頃は親が加入している健康保険に加入していて、働くようになると自分で会社などの健康保険に加入します。そして会社を辞めると、市区町村が運営する国民健康保険に加入しなければならないのです。これは、加入するしないを選択出来るものではなく、加入が義務付けられています。

ですから、日本ではどの市区町村のホームページを見ても、このように説明されています。

『国民健康保険は、いつ起きるか分からない病気やけがに備え、他の公的医療保険制度に加入していない方が必ず加入しなければならない地域医療保険です。加入者が収入に応じて納める保険料や国・都・区からの支出金を元にして、そこから加入者の医療費などを支出しようという助け合いの制度で、都・区が保険者となり運営しています。』

※千代田区役所ホームページを参考にしました

1-2.会社を辞めたら14日以内に国民健康保険に加入しなければならない

前回2回に渡って、サラリーマンを辞めてフリーランスになった時の社会保険と税金に関する全般的な注意点を解説しました。そちらでも説明をしましたが、改めて、簡単に国民健康保険の加入手続きについて説明します。

会社を退職すると、通常は企業から「健康保険資格喪失証明書」という書類を発行して貰えます(自分で健康保険組合などから入手することも可能です)。その書類と本人確認が出来るもの(一般的には免許証など)を持って、退職の日から14日以内に、住民票がある市区町村の窓口で、国民健康保険加入手続きをしなければなりません

14日以上経ってから手続きをしても、大きな問題になることはありませんが、手続きをいつ行っても、国民健康保険料は退職をした翌日を起算日として支払うことになります。

つまり、病院に通っていないからとか経済的に余裕がないからと言って、遅れて手続きをしても国民健康保険料は安くなることはありません。これが、国民皆保険制度を取っている日本での基本的なルールとなっています。

1-3.転職活動中に健康保険料を払わずに済ますには?

なお、退職をした後、数週間程度で次の就職先が決まっている場合には、その間国民健康保険に加入しなくても、あとから保険料が日割りで請求が来ることはありません。

ですから、どうしても国民健康保険に加入したくなければ、転職時は、空白期間を置かないことです。(特に次の就職先が決まっている場合)

2.国民健康保険料が高すぎる! 何故?

手続きをどんなに遅らせても遡って支払必要があるのが国民健康保険料です(ただし健康保険料は2年経過すると、それ以前の分は時効で支払い義務はなくなります)。

けれども、会社を辞めた年は特に、その負担が重く感じられるでしょう。

2-1.フリーランスになると社会保険料の負担が重くなる

実際に、同じ収入であれば、会社で加入する健康保険とフリーランスで加入する国民健康保険を比較すれば分かりますが、確かに相対的に高いのです。具体的に見てみます。

健康保険(会社員)が払う保険料

年収500万円の40歳未満のサラリーマンについて見てみます。

  • 厚生年金保険料は収入に対して9.15%
  • 健康保険料は収入に対して4.92%(40歳以上の場合は介護保険料込みで5.82%)
  • 雇用保険料は収入に対して0.3%

こちらをベースに簡易的に計算すると、社会保険料の負担額合計は718,500円であり、そのうち健康保険料は246,000円となります。

国民健康保険(フリーランスなど)が払う保険料

それに対して、年収500万円で国民健康保険に加入する平均的な国民健康保険料(介護保険はなし)は次の通りになります。

39歳以下または65歳~74歳の単身世帯について見てみます。

医療分支援金分
④所得割225,047円74,494円
⑤均等割24,150円8,373円
⑥平等割20,739円6,162円
⑦限度額630,000円190,000円
合  計269,936円89,029円
年間保険料358,965円

国民健康保険の情報サイトを参考にさせて頂きました

2-2.国民健康保険の負担が重いのはなぜ?

このように、国民健康保険の方が相対的に負担が重たいのは、保険料の算定根拠が所得だけではなく、均等割(世帯に含まれる人数に基づいて算定)や平等割(1世帯当たり平等に課せられる)という算定基準があるからです。

また、すべての市区町村が採用しているものではありませんが、資産割といって自宅を所有していたり、土地を持っていたりする場合に掛かる負担額もあります。

なお、国民健康保険は、世帯単位で加入するものであり、個人で加入するものではありません。従って、そこには扶養家族という概念はありません。具体的には、子供が生まれると、国民健康保険では、均等割に基づく保険料が上がることになります。

つまり、収入(所得)に比例して保険料が定められる企業の健康保険とは違い、市区町村民としての公平性を追求しているものと言えます。

また、国民健康保険と国民年金の組合せで社会保険に入っている場合、国民年金保険料は定額ですが、国民健康保険料が収入等に比例して上がっていくので、それだけ負担額を実感するとも言えます。

しかしながら、一つだけ失念してはいけないのは、企業に勤めている時の健康保険料は、半額を企業に負担してもらっていることです。この企業負担額を考慮すれば、国民健康保険料が不当に高いものということではありません。

注意すべきは、国民健康保険料は、市区町村の財政状態によって保険料に差があるということです。高齢者が多い地方ほど一般的に保険料が高くなっていることにも注意が必要です。

2-3.サラリーマンを辞めた年は一般的に保険料が高い

別の観点から、サラリーマンを辞めた年の国民健康保険料は特に割高に感じます。

これは、国民健康保険料の算定基準の中の所得割は前年の所得が基準になっているからです。一般的に、サラリーマンを辞めるタイミングでは、一定期間無収入になるか収入が下がるのが普通です。その状態で、きちんと企業勤めをしていた時の所得を基準にされるので、高い保険料だと感じてしまうわけです。

この負担を解消する方法としては、勤めていた時の給料が高い人は、勤めていた時に加入していた健康保険の任意継続を選ぶという方法があります。

健康保険の任意継続制度とは、一定の条件を満たした場合に、勤めていた時に加入していた健康保険に最長2年間まで企業負担分も自分で支払うという条件で継続して加入することです。ただし、任意継続制度を利用する場合には、その企業を退職して20日以内に手続きと最初の月の保険料の支払いを完了する必要があります。

任意継続をしたい場合の手続きは、勤めていた企業は一切対応してくれませんので、国民健康保険と比較して相対的に得になる場合には、退職をする前からその手続きを調べておくことをお勧めします。

3.国民健康保険料が払えない時はどうすればいい? 減免される条件は?

転職活動をしている時や、フリーランスになって間もなく収入が思うように増えない場合などには、やはり、健康保険料は重たい負担になることが多いのです。

このような場合を想定して、市区町村では、様々な条件を想定して国民健康保険料の軽減策を用意しています。保険料が支払えない! と言って、そのままにしておくのではなく、市区町村の窓口に行って、早めに相談をすることをお勧めします。

以下、その軽減条件を簡単に説明します。

  • ①リストラされた人、会社が倒産した人
  • ②収入が低い世帯
  • ③個別相談による分割払い
  • ④コロナ禍による負担軽減について

①リストラされた人、会社が倒産した人

リストラや倒産などで退職を余儀なくされた場合には、前年の給与所得を100分の30とみなして国民健康保険料の算定をします。ただし、給与所得以外の所得は適用されませんので、株式などの配当金や利息収入は適用されないことに留意が必要です。

この場合の軽減期間は、離職日の翌日から翌年度末(3月)までの期間です。雇用保険の失業等給付を受ける期間とは異なりますので注意してください。

②収入が低い世帯

そもそも、収入が低い世帯は保険料が軽減されるようになっています。
2021年度の国民健康保険の軽減計算は次の通りです。

軽減割合2020年度の世帯の所得の合計額
(退職所得金額は除きます)
7割軽減43万円 +10万円×(給与所得者等の数ー1)以下
5割軽減43万円 +(28.5万円 × 被保険者数)+10万円×(給与所得者等の数ー1)以下
2割軽減43万円 +(52万円 × 被保険者数)+10万円し×(給与所得者等の数ー1)以下

③個別相談による分割払い

将来収入が上がった時に追納が出来る国民年金保険料と違い、国民健康保険料は後から支払うということは出来ません。しかしながら、色々な事情でどうしても支払いが難しい時は、市区町村の窓口で個別に相談をすることをお勧めします。状況に応じて、また市区町村の対応はそれぞれ異なりますが、多くの場合、保険料の分割払いを認めてくれます。

④コロナ禍による負担軽減について

コロナ禍により収入が減少した世帯に関しては、別途負担軽減策が定められています。詳細については、住民票がある市区町村のサイトを参考にしてください。

4.国民健康保険を支払わないとどうなる?

国民年金は支払わないと将来貰える年金が減少するという将来の不利益はありますが、健康保険の場合には、最悪の場合、病気やケガをした場合に自己負担額が100%となってしまったら、支払っていない保険料以上の負担が増えるリスクがあります。

国民健康保険料を滞納すると、すぐに支払いの催促が来ます。その催促を無視し続けると最終的にどうなるのかについても説明をしたいと思います。なお、国民健康保険に関しては、保険料を支払いたくないということで、加入手続きをしないという方もいますので、そちらの場合のペナルティも併せて説明します。

4-1.国民健康保険料を支払わない場合のペナルティ

国民健康保険の加入手続きをして、保険料の納付書が届いているにも関わらず滞納をしている場合は、段階を追って催促手続きが厳しくなります。

①催促状

納付書の支払い期限を過ぎて2週間くらいが経つと、催促状が届きます。この段階で支払いをすれば特に問題ありません。もし、恒常的に支払いが困難だと考えられる場合には、この段階で分割払いを相談することをお勧めします。

②催促の電話、訪問

催促状は概ね2回程度届きます。それでも滞納をしていると、市区町村の担当者から電話がかかってきたり、場合によっては担当者が自宅を訪問してくることもあります。特に市内に不動産を所有しているなど、明らかに悪意を持って滞納をしていると、訪問を受けることになるようです。この段階になると保険料だけではなく、延滞金が掛かる可能性があります。

③有効期間の短い「短期被保険者証」の交付

原則として1年以上滞納すると保険証が通常のものから、「短期被保険者証」というものに変わります。

④保険証が無効になり「被保険者資格証明書」を交付

それでも滞納を続けると、保険証ではなく全額自己負担となる「被保険者資格証明書」というものに代わります。財産がある場合には差押えをされる可能性がかなり高くなります。

⑤保険料滞納に伴う各種ペナルティ

保険料を滞納していると、それ以外にも保険給付(特別療養費、高額療養費、出産育児一時金、葬祭費など)の支給申請があった場合に、これらの全部または一部を差し止められます。

4-2.国民健康保険に加入しないケース

若い人に多いですが、病院に掛かるまで国民健康保険の加入手続きをしないという安易な選択をする人がいます。この場合には、先にも説明をしましたが、いずれにせよ最長2年前まで遡って健康保険料を支払うことになります。

なお、遡って支払っても、その期間に医療機関を受診したとしても、保険適用はされず全額自己負担となりますので、結果的にとても不利になります。

5.まとめ

5-1.どうして健康保険に入らないといけないのか

日本が国民皆保険制度である以上、保険料という名称になっていても、事実上は税金のようなものだと考えるべきです。日本に暮らしている以上、必ず何かの健康保険に加入する必要があります。

また、最近では、コロナ禍で救急患者を受け入れてくれる病院が少なくなっているのが現状です。個人的なことですが、筆者は、過労になると鼻血が出る体質で、これまでに数回救急車を呼んだ経験があります。その経験から言えるのですが、コロナ前と比較して今は救急車が到着しても、実際に病院に連れて行ってもらえるまでのプロセスがとても厳しくなりました。救急隊員の方が救急病院と交渉をしてくれるのですが、その段階で保険証を持っていますか? と聞かれて、保険証を確認されました。

今までにない経験だったので、とても驚きました。このように、きちんとした健康保険証を持っていることはとても大切なことなのです。

5-2.国民健康保険のメリットとは?

また、企業で加入する健康保険と比較するとやや見劣りはしますが、国民健康保険にも次のような付加的なメリットがあります。

  • 高額療養費の支給
  • 市区町村が実施する健康診断を極めて低額負担(500円程度)で受けられる
  • 出産育児一時金や葬祭費の支給

ただし、これらは該当する場合には、自分で判断をして自分で手続きをする必要があるところがサラリーマン時代と違いますので注意が必要です。

5-3.最後に

最後に、今はコロナで行けませんが、転職の間を利用して海外旅行に行こうと思っている人も多いと思います。その場合にも、国民健康保険に入らない人が多いですが、実は海外で支払った医療費は、一定のルールに基づき国民健康保険から一定割合が支払われます

「国民健康保険における海外療養費制度」という制度です。

このように日本の国民皆保険制度は実にありがたいものなのです。あくまでも保険であり、病気やケガにならないことが一番ではありますが、サラリーマンを辞めると体調管理はすべて自己責任になります。国民健康保険の加入は必ずして、いざという時の安心を確保して欲しいと思います。

執筆
荒井 薫(あらい かおる)
労働省→公認会計士→コンサルタント→事業会社CFO&国際ブランド付きプリペイドカード事業の立ち上げをやりました。子供の頃から物書きになりたかったため、書く感性を磨きながら、皆さんに様々な情報をお伝えしていければと思っています。
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