確定申告書のAとB、どちらを利用するべき?その疑問を徹底解説!

確定申告AとB どっち

0.確定申告書のAは廃止になった

2022年までの確定申告では、「確定申告書A」「確定申告書B」という2種類の申告書がありましたが、2023年の確定申告から様式が一本化されました。

2023年以降の確定申告で用いられる「確定申告書」は、以前の確定申告書Bがベースになっているので、実質的には確定申告書Aが廃止になった形です。

以降は2022年以前の確定申告書についての解説になります。当時の情報となりますのでご留意ください。

1.確定申告が必要な人とは

確定申告が必要な人とは、一言でいうと、1年間の所得を計算し所得税が発生するが、いまだ申告・納税をしていない人です。

主に、個人事業主や自営業、フリーランスの方がその代表といえるでしょう。

確定申告をする必要はないけれど、確定申告をすることで税金の還付が受けられるお得な人もいます。

主に、年末調整では対応できない控除を受けたい会社員などです。

医療費控除やふるさと納税による寄付金控除などが、この控除にあたります。また、マイホームを購入した場合は、確定申告をすることで、住宅ローン控除を受けることができます。

確定申告が必要ないのは、主に、年末調整を受けている会社員などです。しかし、会社員であっても、副業で収入を得ていたり2ヶ所から給与をもらっていたりすると、確定申告が必要となる場合もあるので注意しましょう。

確定申告の対象者はケース・バイ・ケースなので、次の記事できちんと確認することが大切です。

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2.確定申告書Aとは

確定申告書Aの特徴は、次のとおりです。

  • 主に会社員やアルバイト、パートなど給与所得者向け
  • 確定申告書Bより比較的容易に作成可能
  • 予定納税は不可
  • 損失の繰越は不可

2-1.確定申告書Aが対応している所得の種類

確定申告書Aが対応している所得の種類は、次のとおりです。

  • 給与所得
  • 公的年金
  • 雑所得
  • 配当所得
  • 一時所得

2-2.確定申告書Aの対象者

確定申告書Aの対象者は、大きく分けて次の5つです。自分が該当するかどうかを、チェックしてみてください。

給与所得だけの人

次に該当する場合は、確定申告書Aの対象となります。

確定申告が必要な人と、確定申告をすることでお得になる人と2パターンありますが、いずれにしても確定申告をする場合は、確定申告書Aを利用します。

  • 給与収入が2,000万円を超えている
  • 2ヶ所以上から給与所得を得ている
  • 住宅を購入又はリフォームし、住宅ローン控除を受けたい(2年目以降は年末調整で対応可能)
  • 医療費控除や寄付金控除など年末調整では対応できない控除を受けたい
  • 年度途中で退職し、年末調整を行っていない

給与所得+雑所得の人

給与所得と雑所得を得ている人は、確定申告書Aの対象者です。

雑所得とは、著述家や作家以外の人がもらう原稿料や印税、講師をしていない人がもらう講演料や放送謝金などがあげられます。

例えば、会社員が副業のWebライティングで得た所得は雑所得となるでしょう。
また、FXや仮想通貨、先物取引などで得た利益も雑所得にあたります。

給与所得+配当所得の人

給与所得と配当所得を得ている人は、確定申告書Aの対象者です。

配当所得とは、株式の配当金や投資信託の収益分配で得られる所得のことです。ただし、株式を売却した際に得られる利益は譲渡所得となり、確定申告書Bに該当するので注意しましょう。

公的年金を受け取っている人

原則、公的年金を受け取っている人は確定申告をする必要はありませんが、次に該当する場合は、確定申告書Aを利用して手続きをしなければなりません。

  • 公的年金などの収入額が400万円を超えている
  • 公的年金以外の所得(給与所得や不動産収入など)が年間20万円を超えている

一時所得を得ている人

次のような一時所得を得ている人も、確定申告書Aの対象者です。

  • 競馬や懸賞などで50万円以上の賞金が当たっている
  • ふるさと納税の返礼品の年間総額が50万円を超えている
  • 生命保険や損害保険の満期金を受け取っている

雑所得と混同しやすいですが、課税の仕方が違い税額が異なってくるため注意が必要です。ただし、一時所得と雑所得のいずれも確定申告書Aの対象なので、同じ用紙を使っての手続きとなります。

3.確定申告書Bとは

次に、確定申告書Bの特徴を説明します。確定申告書Aより煩雑ですが、きちんと作成することでより多くの控除を受けることができます。

確定申告書Aに該当する人でも、予定納税や損失の繰越がある場合は、確定申告書Bを利用して申告します。
基本的に、確定申告書Bはすべての所得をカバーするため、AかBか迷ったときは確定申告書Bを選択すれば間違いがないでしょう。

  • 主に、個人事業主や自営業、フリーランス向け
  • 確定申告書Aより複雑
  • 予定納税は可能
  • 損失の繰越は可能

3-1.確定申告書Bが対応している所得の種類

上述したように、確定申告書Bは全ての所得に対応しています。特に、事業所得や不動産所得、譲渡所得などは確定申告書Bでなければ申告できません。

3-2.確定申告書Bの対象者とは

ここでは、確定申告書Bの対象者について詳しく説明していきます。

事業所得を得ている人

事業所得は、「営業等所得」と「農業所得」の2つに分類されます。いずれの所得も、確定申告書Bの対象です。

それぞれの内訳は次のとおりなので、該当するかどうかを確認してみてください。

①営業等所得

  • 卸売業、小売業、飲食店業、製造業、建設業、金融業、運輸業、修理業、サービス業などのいわゆる営業
  • 医師、弁護士、作家、俳優、職業野球選手、外交員、大工などの自由職業
  • 漁業などの事業

ほとんどの個人事業主や自営業、フリーランスはこちらに該当するでしょう。また、会社員が副業で得た収入が事業所得にあたる場合も、この営業等所得になります。

②農業所得

  • 農産物の生産、果樹などの栽培
  • 養蚕、農家が経営する家畜・家きんの飼育
  • 酪農品の生産など

ちなみに、確定申告書Bの事業所得の記入欄は、「営業等」と「農業」に分かれているので、①に該当する場合は「営業等」の欄に、②に該当する場合は「農業」の欄にそれぞれ記入します。

不動産の賃貸収入がある人

不動産の賃貸収入がある人も、確定申告書Bの対象者です。

不動産所得は、不動産収入から必要経費を引いた金額ですが、この金額と事業所得や雑所得などの合計が20万円を超えれば、確定申告をしなければなりません。

不動産所得とは、家賃収入だけでなく、次の3つの所得を指します。

  • 土地や建物など、不動産の貸付けで得られる所得
  • 地上権など不動産にまつわる権利の設定や貸付けで得られる所得
  • 船舶や航空機の貸付けで得られる所得

利子所得に該当する所得がある人

利子所得とは、預貯金や公社債からの利息のことです。

一定の利息等を受け取ったときは、通常、源泉徴収されるので確定申告は必要ありません。

しかし、雑所得となる利息にあたる利息を受け取ったときは、確定申告書Bを利用して申告する必要があります。

  • 預貯金の利子
  • 公社債の利子
  • 合同運用信託の公益の分配金
  • 公社債投資信託の収益の分配金
  • 公募公社債等運用投資信託の収益の分配金

4.確定申告書のAとB、どちらを利用するべき?その4つの具体例

ここでは、確定申告書のAとBのどちらを利用するべきか、判断に迷いがちな例をいくつかあげて説明します。

4-1.会社員で給与所得以外にも収入がある場合

上述したように、給与所得を得ている会社員であっても、副業で20万円以上の所得があれば確定申告が必要です。

この場合、その所得が雑所得であれば確定申告書Aでの申告になりますが、事業所得にあたる場合は、確定申告書Bを使わなければなりません。

副業における所得が、事業所得か雑所得かの判断基準は曖昧ですが、趣味などの小遣い稼ぎ程度の収入の場合は、雑所得に該当するでしょう。

副業として人気の高いアフィリエイトやWebライターとしての収入、さらにオークションやフリーマーケットでの収入もほとんど雑所得にあたります。

また、FXなどで得た収入が相当高額であっても、雑所得として扱われることがほとんどでしょう。
雑所得か事業所得か迷った場合は、税務署に問い合わせることをおすすめします。

4-2.会社員で医療控除やふるさと納税などの控除を利用したい場合

原則、会社員は職場で年末調整が行われるので、確定申告は必要ありません。

しかし、医療費控除やふるさと納税などの寄付金控除など、年末調整では対応できない控除を受けたい場合は、確定申告することで税金の還付を受けられます。

この場合は、確定申告書Aを利用して申告します。
また、年末調整の後に家族が増えた場合や控除の申告漏れがあった場合も、確定申告書Aで申告することで適切に控除を受けられます。

4-3.個人事業主の場合

個人事業主の場合、白色申告、青色申告のいずれにしても、確定申告書Bに該当します。

所得金額が赤字の場合や、株や建物の譲渡所得などがある場合は、該当する書類を添付して手続きをしましょう。

4-4.大家さんなど家賃収入がある場合

不動産などの家賃収入がある場合は、確定申告書Bの対象となります。

ただし、家賃収入を得ている物件に対しては、住宅ローン控除を受けることができないので注意が必要です。

住宅ローン控除は、自身の居住用の住宅のみに適用されます。自宅と賃貸を併用した物件であれば、自宅として使用している部分の免責を按分し、その部分に関してのみ住宅ローン控除を受けることが可能です。

住宅ローン控除のみであれば確定申告書Aで申告できますが、家賃収入と住宅ローン控除のどちらも申告する場合は、確定申告書Bとなります。

4-5.株式を売却して利益が発生した場合

上記で説明したものの繰り返しとなりますが、株式を売却した際に得られる利益は譲渡所得となり、確定申告書Bに該当するので注意しましょう。

5.まとめ

確定申告書のAかBのどちらか迷うことが多いですが、大まかにいうと、給与所得がメインの会社員やアルバイトが、副業などで収入を得ている場合は、確定申告書Aに該当するでしょう。

ただし、会社員が副業で得た収入が事業所得にあたる場合は、確定申告書Bの対象となるので注意が必要です。

確定申告書Bは、主に、個人事業主やフリーランスが事業所得を申告する場合に利用します。確定申告書Bはすべての所得をカバーするので、もし迷った場合は、確定申告書Bを利用しましょう。

服部
監修
服部 貞昭(はっとり さだあき)
東京大学大学院電子工学専攻(修士課程)修了。
CFP(日本FP協会認定)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。
ベンチャーIT企業のCTOおよび会計・経理を担当。
税金やお金に関することが大好きで、それらの記事を2000本以上、執筆・監修。
「マネー現代」にも寄稿している。
エンジニアでもあり、賞与計算ツールなど各種ツールも開発。
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