5%ポイント還元と5%値引き(即時還元)どちらがお得?
QRコード払いや、電子マネーなど、キャッシュレスが普及して、ポイント還元が一般的になりました。
このポイント還元には、厳密にいうと
- 通常のポイント還元(以下、ポイント還元)
- 値引き(即時還元)(以下、値引き)
の2種類があります。
ポイント還元は、ポイントを貯めておき、使いたいときにポイントを使う方法です。
値引きは、買い物をしたその場で、すぐにポイント還元分の値引きを受けられる方法です。値引きは「即時にポイントを還元している」と言い換えることができるので、即時還元と呼ばれることもあります。
5%のポイント還元と5%の値引きなら、消費者のメリットは同じように思えるかもしれませんが、実際は値引きのほうが「お得」です。
そのカラクリを、簡単な計算式を使って解説します。
目次
1.ポイント還元と値引きの違い
ポイント還元の要点は2つあります。
1つは、今回の買い物で受け取ったポイントは、次回以降の買い物でしか使えない点です。
2つ目は、ポイントで買い物をしたときは、ポイントがつかない点です(一部例外あり)。
つまりポイント還元は、今回の買い物で発生したメリットを、次回の買い物で受けることになります。
一方の値引きは、今回の買い物ですぐにメリットが得られます。
次の章で、具体的な買い物を想定して計算してみます。値引きのほうがよりお得であることが数字でわかります。
2.実質的な還元率の違い
税抜価格1,000円のファイルを購入するケースで、ポイント還元のお得と値引きの実質的な還元率を比較してみます。
「本来の還元率」は、ポイント還元率も値引き率も5%とします。
「実質的な還元率」とは、消費者が実際に得る「実質的なお得」の率のことです。
消費税率は10%とします。
(1)ポイント還元の場合
まず、ポイント還元のお得度を計算していきます。
- 消費税=1,000円×10%=100円
- 税込価格=1,000円+100円=1,100円
消費税が10%なので、客が店に支払う総額は1,100円になります。
- ポイント還元額=1,100円×5%=55円
このとき、ポイントは55円分がつきます。
このままではポイントが貯まっているだけなので、この客は「お得」を得ることができません。
そこで次の買い物で税抜50円(税込55円)のボールペンを買い、55円分のポイントを使ったとします。ポイントでまかなえるので、現金の追加はありません。
- 税込価格=50円+5円=ポイント55円分
ポイントを使ったので55円分の「お得」を得ることができました。
以上の買い物をまとめると、還元率(お得率)は4.76%になることがわかります。
計算式は以下のとおりです。
- 購入した商品の額:1,155円(=1,100円+55円)
- お得(獲得ポイント):55円分
- お得率(還元率):4.76%(=(55円÷1,155円)×100))
(2)値引きの場合
同じ条件で、値引きのときのお得を計算してみます。
- 消費税=1,000円×10%=100円
- 税込価格=1,000円+100円=1,100円
ここまでは、先ほどと同じです。
ここから5%の値引きが発生します。
- 値引き額:55円(=1,100円×5%)
- 支払総額:税込1,045円(=1,100円-55円)
この客はすでに「お得」を得ているので、次回の買い物をする必要がありません。
以上の買い物をまとめると、値引き率(お得率)が5%になることがわかります。
計算式は以下のとおりです。
- 購入した商品の額:1,100円(=1,100円+55円)
- お得(値引額):55円分
- お得率(値引率):5%(=(55円÷1,100円)×100)
つまり、実際に、5%のお得が発生しています。
ポイント還元のお得率は4.76%でしたので、値引きのほうが0.24%お得です。
3.消費者は値引きよりもポイント還元のほうが好き?
ポイント還元より値引きのほうがお得ですが、それでも多くの消費者はポイント還元を好みます。それは、ポイント還元には消費者心理をくすぐる、2つの戦略があるからです。
(1)保有効果
ひとつ目は「保有効果」戦略です。人は、保有できることに喜びを感じます。55円分のポイントは、カードのデータのなかにしっかり保存されているので、消費者は保有感を味わうことができます。
一方、55円の値引きは、その場でメリットを受けるため、後に具体的なものとして残りません。あたかも、お得が「消えたように」錯覚してしまいます。値引きは保有感が得られません。
(2)選好の逆転
ふたつ目は「選好の逆転」戦略です。選好とは、他の物より特定の物を好む、という意味です。買い物での当初の選好は、安く買えること、です。同じ商品を買うとき、高い店ではなく安い店を選ぶのは、安さが選好されているからです。
ところがポイント還元の仕組みを体験してしまうと、安さよりポイントのほうを好むようになります。ポイントを貯める楽しみのほうが、安さで得られる快感より強くなってしまうのです。ポイントの選好が、安さの選好を逆転したわけです。
消費行動は、金額の高い低いだけでなく、買い物の楽しみによって左右されることがあるのです。
4.ポイント還元と値引きの「実質的な」消費税率の差は?
ポイント還元と値引きは、実質的な消費税率にも影響します。
「実質的な消費税率」とは、本来の消費税率10%ではなく、消費者の実質的な消費税負担の割合のことをいいます。
例えば、小売店が「消費税分の値引きをします」と言った場合でも、本来の消費税率は10%ですが、実質的な消費税率は0%となります。
ポイント還元と値引きでは、実質的な消費税率が異なり、ここでも値引きのほうがお得になります。
先ほどと同じように、次の条件で計算してみます。
・消費税率は10%
・ポイント還元率も値引き率も5%
(1)ポイント還元の実質的な消費税率
まず、ポイント還元の実質的な消費税率を算出していきます。
1,000円のファイルを買います。
- 消費税=1,000円×10%=100円
- 税込価格=1,000円+100円=1,100円
- ポイント還元額=1,100円×5%=55円
次の買い物で、税抜50円(税込55円)のボールペンを買い、55円分のポイントを使ったとします。
- 税込価格55円:ポイントを使うので現金の支払いなし
以上の買い物の商品の税抜価格は、1,000円+50円=1,050円です。
以上の買い物で支払った金額は、1,100円です。
したがって実質的な消費税率は4.76%になります。計算式は以下のとおりです。
1.0476…-1≒0.0476=4.76%
(2)値引きの実質的な消費税率
値引きの実質的な消費税率を算出していきます。
1,000円のファイルを買います。
- 消費税=1,000円×10%=100円
- 税込価格=1,000円+100円=1,100円
- 値引き額:55円(=1,100円×5%)
- 支払総額:税込1,045円(=1,100円-55円)
以上の買い物の商品の税抜価格は、1,000円です。
以上の買い物で支払った金額は、1,045円です。
したがって実質的な消費税率は4.5%になります。計算式は以下のとおりです。
1.045-1=0.045=4.5%
ポイント還元の実質的な消費税率は4.76%でしたので、値引きのほうが「実質、安い消費税」で買い物をすることができます。
5.実質的な消費税率まとめ
消費税率には8%/10%の2パターンあります。仮にポイント還元率を2%/5%の2パターンが想定したときの、それぞれ、ポイント還元時と値引き時の実質的な消費税率を表でまとめます。
税率 | ポイント 還元率 |
実質税率 | |
---|---|---|---|
ポイント還元 | 値引き(即時還元) | ||
8% | 2% | 5.88% | 5.84% |
8% | 5% | 2.86% | 2.60% |
10% | 2% | 7.84% | 7.80% |
10% | 5% | 4.76% | 4.50% |
まとめ
ポイント還元よりも、その場で値引きをする即時還元のほうが、「お得」を多く得られますし、実質的な消費税の負担も減らすことができます。
通常のポイント還元か値引き(即時還元)かは店舗によって異なります。消費者が選択することはできませんが、値引き(即時還元)をしている店舗を積極的に利用することで、よりお得を得ることができるでしょう。
ただ、買い物の楽しみは出費の多い少ないだけではありません。「ポイントが貯まったらあれを買おう」というワクワク感を大切したい方は、ポイント還元のほうが楽しいかもしれませんね。