ローソンが食品ロス削減のため開始したポイント還元とは

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日本だけではなく、世界的な問題として取り上げられている「食品ロス」。

世界各国では、それぞれ食品ロス削減に向けた積極的な取り組みがみられます。日本ではなかなか普及していく流れが生まれにくかった食品ロス対策ですが、2019年6月コンビニ大手が廃棄弁当に対するポイント還元を開始、食品ロス削減に向けて大きな第一歩を踏み出しました。

今回はローソンが開始した食品ロス削減に向けた施策や他のコンビニの動向を解説していきます。

1.日本の食品ロスの現状

まずは、日本の「食品ロス」の現状について解説していきます。

世界各国で取り組みが進む食品ロス問題ですが、日本ではどれほどの食品ロスが生まれているのでしょうか。

(1)食品ロスとは

食品ロス」というのは、「まだ食べられるのに廃棄される食品」です。

例えば、スーパーやコンビニなどで、賞味期限/消費期限が切れて廃棄される食品、飲食店などで廃棄される食べ残し、食品製造の段階や家庭など、あらゆるところで食品ロスが生まれています。

(2)日本の食品ロスの現状

日本の食品廃棄物等の量は年間「2759万トン」と言われています。そのうち食品ロスは「643万トン」、全体の1/4が食品ロスによって廃棄されています。この数字を1人あたりで換算すると、毎日お茶碗1杯分のごはんが捨てられていることになります。

【外部参照】消費者庁:食品ロスについて知る・学ぶ

非常に大量な食品が無駄になっていることいは一目瞭然ですが、食品ロスが深刻になることによって生じるさまざまな問題があります。

日本の食品ロスの量は、世界の食糧援助量(平成29年:年間380万トン)の1.7倍に相当します。食品ロスを削減し、援助に結びつけることができれば、相当な効果があるのは明白です。

また、食品廃棄に関する環境負荷への配慮や資源の有効活用などの観点から食品ロスの削減が世界的に求められています。

(3)食品ロス削減推進法が成立

日本では、このような現状に際して、国内初となる食品ロスに関する法律が成立しました。

2019年5月24日「食品ロス削減推進法」が成立、食品ロスに対する本格的な取り組みが開始する契機となりました。もちろん法律ができただけでは、状況が改善することはないため、今後より具体的な取り組みが求められ、国民の意識向上も含めた施策が必要となっています。

(4)コンビニやスーパーの食品ロス

食品ロス問題に関して、注目されているのがコンビニやスーパーです。これらのお店では、国内の食品ロス全体のおよそ10%が占められています。

最近でも、恵方巻きやクリスマスケーキなどの季節商品が大量に廃棄されていたことが問題視されていました。

食品ロスが多いということも挙げられますが、それと同時に廃棄された食品損失の大半が加盟店が負担しているという現状もあります。

長時間労働や人手不足などで、コンビニ加盟店の労働問題に関心が集まる中で、食品ロスに対する問題意識が高まっています。

2.食品ロス削減に向けたポイント還元とは?

食品ロス問題が深刻になる中で、コンビニ大手の「ローソン」が対策に向けた施策を開始しました。ここからは、食品ロス削減に向けてローソンが開始したポイント還元制度を解説します。

(1)ローソンが食品ロス削減のための施策「Another Choice」を開始

ローソンでは、年間約4.4万トンの食品ロスが発生しています。これに対して、2019年6月11日から、廃棄前の弁当やおにぎりなどに対するポイント還元制度がスタートしました。

【外部参照】「Another Choice」を開始|ローソン公式サイト

これは、16:00〜翌1:00(愛媛県)、16:00〜23:00(沖縄県)の間に「Another Choice」マークがついた商品を購入すると、通常100円当たり1ポイントの還元が、100円当たり5ポイントになります。ポイント還元による実質的な値引きによって、食品ロスを削減しようとする取り組みです。

また、消費者に対するポイント還元に加えて、追加で5%分を「子育て応援ファンド(仮称)」へ寄付します。食品ロス削減と子どもの貧困改善の両立を狙った取り組みでもあり、2030年まで18年度比で食品ロスの半減を目指しています。

(2)実施状況は?

2019年6月11日からスタートしたローソンの廃棄前商品に対するポイント還元。

現在は愛媛県内にある218店舗、沖縄県にある231店舗で8月末までの実施を予定しており、状況に応じて2019年後半にエリア拡大を予定しています。

(3)本部・加盟店・消費者のメリットは?

今回ローソンがスタートさせた食品ロス削減対策ですが、これはローソンを利用する消費者、加盟店、本部の3者にメリットがあります。

まず、消費者はまだ食べることができる食品を割引価格で購入でき、そういった選択をすることで食品ロス問題への取り組みを直接行えます。

次に、加盟店に関しては、これまで自身が損失を被っていた食品ロスを削減することで負担が軽減します。また、消費者に還元されるポイントは本部が負担するため、取り組みに対するコスト負担もありません。

本部に関しては、食品ロス削減という社会的な問題に取り組むことで企業イメージの向上が図れます。大幅な値引きをするわけではなく、食品ロスを削減できるので売上げの確保にもつながります。

このように今回のローソンが行なった食品ロス削減への取り組みは各方面にメリットがあります。

消費者 割引(ポイント還元)価格での商品購入
加盟店 食品ロス損失負担の軽減、還元ポイントも本部が負担
本部 社会問題への取り組み、企業イメージの向上、売上げの確保

(4)大規模な食品ロス対策として注目

現状、愛媛県内での実施となっている食品ロス対策ですが、このような大規模な施策はこれまで実施されませんでした。

これまでは、加盟店がそれぞれの判断によって賞味期限間近の商品を値引きするなどの対応を行なっており、散発的な対応となっていました。

このような本部が起点となる大規模な食品ロス対策が一般的になれば、問題改善に向けた大きな推進力になるでしょう。

ただ、この施策は販売されている商品に対するものであり、製造、仕入れなどを踏まえた総合的な対策も求められます。コンビニでは、売り切れることによる機会損失を食品ロスよりも優先してきた流れもあり、こういった部分からの抜本的な改善の必要性も指摘されています。

3.コンビニ大手各社の動向

ローソンが先手を切って開始した食品ロス対策ですが、他の大手コンビニでは、どのような取り組みを行うのでしょうか。ローソンだけではなく、食品ロスはコンビニ全体の問題でもあるので、セブン-イレブンやファミリーマートに対しても、同様の施策が要請されるでしょう。

(1)セブン-イレブン

セブン-イレブンでも、ローソンと同様に廃棄前の食品に対するポイント還元の導入を予定しています。

実施予定としては、今年秋を目処に全国の加盟店約2万点で実施する方向性で進められています。

内容としては、販売期限4〜5時間に迫ったおにぎりや麺類などを対象に5%分のnanacoポイントを還元します。

セブンイレブンも食品の廃棄に対しては、加盟店が損失の85%を負担していることもあり、これらの施策が効果的に作用することが期待されています。

(2)ファミリーマート

ファミリーマートではポイント還元による対策には消極的な姿勢を見せていますが、それでもクリスマスケーキなどの季節商品を完全予約制にすることで、食品ロスの効果的な削減を目指しています。

(3)3分の1ルールの見直しも

コンビニ各社でも食品ロスへの対策が取り組まれている中で、食品業界全体の改善にも発展することが期待されています。

現在の食品業界の慣習として「3分の1ルール」というものがあり。製造部〜賞味期限までの間で、最初の3分の1を「納品期限」、3分の2を「販売期限」に設定しているという現状があります。

販売期限が過ぎると、賞味期限が切れていないにも関わらず店頭から撤去されることになっており、食品ロスの増加に繋がっています。こういった食品業界全体の慣習から、問題解決に向けたアプローチに進展するかどうかに期待です。

まとめ

食品ロス削減に向けてローソンが開始したポイント還元制度について解説しました。

ポイント還元ではなく、現金値引の方が効果的なのではという指摘もありますが、コンビニが食品ロス問題に対して、大規模に取り組みをスタートさせた第一歩でもあります。

この先重要となるのが、ローソンの取り組みを契機に、さまざまな企業に波及し、食品業界全体、または消費者全体で問題解決に向けた取り組みを拡大させることが求められます。

服部
監修
服部 貞昭(はっとり さだあき)
東京大学大学院電子工学専攻(修士課程)修了。
CFP(日本FP協会認定)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。
ベンチャーIT企業のCTOおよび会計・経理を担当。
税金やお金に関することが大好きで、それらの記事を2000本以上、執筆・監修。
「マネー現代」にも寄稿している。
エンジニアでもあり、賞与計算ツールなど各種ツールも開発。
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