マイナンバーで会社に副業がバレるのか?

ばれる

 マイナンバーが2016年1月より導入されました。マイナンバーは税金や年金、社会保険等の行政手続きを効率化するために導入された制度です。

ところが、その内容を詳しく知らず、「マイナンバーのせいで会社に副業がバレる」と心配している方も見られます。
実は、副業がバレるというのは、マイナンバー導入以前からある話であり、マイナンバー自体がバレる原因となるわけではありません

ここでは、どういうときに副業がバレるのか、バレないためにはどうすれば良いのかを解説します。

1.マイナンバーだけで副業はバレない

結論から申しますと、マイナンバーだけで副業が会社にバレることはありません。

その理由を簡単に説明します。

(1)会社は「副業を知ることができない」

会社にとって、マイナンバー制度は負担でしかありません。なぜなら、マイナンバーの取扱いは厳重に行わなければならず、利用目的以外に使うことができないからです。

その利用目的は現在、社会保障と税金のみしか認められていません。つまり、会社は、従業員が「副業をしていること」を知るためには利用できません

会社が役所や税務署に、「従業員のマイナンバーを教えるので副業をしているか確認してほしい」と依頼することはできないのです。

(2)役所は「副業を通知することができない」

マイナンバー制度の目的は行政手続きの効率化です。

税金や社会保険を扱う公的機関では、マイナンバーに行政手続きを簡素化して、市民の利便性を高められます。また、税務署では、マイナンバーにより名寄せをしやすくなり、個人の所得を確実に把握するために役立ちます。

ただし、役所も本来の利用目的以外にはマイナンバーを使うことはできません。つまり、役所が企業に対して従業員が副業をしているかどうかを通知することはできないのです。

また、国税庁では以前から、「KSK(国税総合管理システム)」というシステムで納税者の情報を管理しており、名寄せを行っていました。マイナンバー導入により個人の所得を把握しやすくなるというだけで、しっかり監視されているということ自体には変わりありません。

したがって、マイナンバー制度が導入されたからといって、副業がバレると言う訳ではないのです。

国や税務署には副業がバレるかも

ただし、今まで副業による収入を確定申告せずに隠していた場合には、マイナンバーによって、税務署が副業の収入を把握しやすくなる可能性があることにはご注意ください。

2.なぜ副業がバレてしまうのか?

マイナンバー制度の導入とは関係なく、以前から、会社に副業がバレてしまうことがありました。よくある理由を挙げておきます。

(1)確定申告忘れ・無申告によるもの

副業がバレる理由の1つ目に「申告忘れ・無申告」が挙げられます。

20万円以上の副収入がある場合、確定申告をしなければなりません
(正確には、源泉徴収を受けている給与所得・退職所得以外の所得が20万円を超える場合)。

しかしながら、申告忘れや無申告が目立ちます。株式や外貨などの投資であれば、利益が発生した時点で証券会社で源泉徴収したり、しっかり報告書が作成されますので、申告忘れになることはほとんどありませんが、副業収入や家賃収入を現金でもらっている場合には、忘れてしまうことや、ひどいと故意に申告しないこともあります。

申告すべき人が確定申告をしないでいると、脱税行為に当たりますので、場合によっては税務署より税務調査を行われ、給料の差押えが発生する可能性もあります。
勤めている会社での給与が差押えられることになれば、当然、副業がバレますし、脱税という反社会的な行為によって社内で厳罰を受けることも考えられます。

なお、正しく確定申告をしていれば高確率でバレなくなります。したがって、20万円超の副収入がある人は確定申告を必ずするようにしてください。

(2)住民税の徴収額によるもの

副業がバレる理由の2つ目が「住民税の徴収額」です。住民税の納税金額は、本業・副業をすべて含めた前年の所得に対して決まります。

そして、通常、住民税は勤め先で徴収して各自治体に収めます(特別徴収)ので、本業の会社には、その従業員の住民税額が通知されます。本業の会社で支払った給与に相当する住民税より多い金額が記載されていれば、自ずと副業に気づくことになります。

住民税特別徴収

確定申告で「住民税を自分で納付」にすればOK

ただし、確定申告を正しく行っていれば、給与所得以外の住民税を「普通徴収」にすることができます。これは自分で住民税を納める方法です。確定申告の際に、住民税を「自分で納付」という欄に丸をつければ良いです。

確定申告書B 住民税

そうすれば、副業の収入による住民税を、本業の給与による住民税とは分けて納税することができますので、勤め先にバレる心配が少なくなります。

社員・パート・アルバイトは難しい

なお、以上の内容は、個人事業主として活動されている方が、事業所得あるいは雑所得に相当する住民税を普通徴収にすることができるという話です。

パート・アルバイトなど従業員として雇用されていて給与として支給されるものは特別徴収されるのが原則です。

今までは、給与として支払っていても特別徴収をしない会社も多く存在しましたが、最近は全国的に特別徴収を徹底する動きになっており、今後は副業の給与収入が本業の会社にバレる可能性が高くなるので注意が必要です。

(3)口を滑らすことによるもの

副業がバレる理由の3つ目が「口を滑らせる」ことです。

基本的には勤め先は副業を知る方法がありません。また、役所も副業を通知することはありません。けれども、自分が口を滑らせて副業している旨を他の従業員に話してしまい、それを会社に通知されて、副業がバレることがあります。

真面目に働いている社員にとって、副業で稼いでいるという話は、あまり感じのよいものではありません。会社内や関係者がいるところでは副業の話題に触れないようにしましょう。

3.副業がバレるとどうなるのか?

近年、副業を許可する企業が増えてきましたが、それでもまだ多くの企業では就業規則により副業を禁止しています。

副業が禁止されている企業で副業がバレるとどうなるのでしょうか?

(1)副業禁止規則によって懲戒処分される

多くの場合は、副業がバレた時点で懲戒処分に処せられる可能性が高いです。懲戒処分とは戒告や減給、懲戒解雇などの処分のことです。

ただし、懲戒処分の内容は企業規模や副業内容等によっても異なります。場合によっては副業が妥当と判断されるケースもありますが、基本的には懲戒処分を受ける可能性が高いです。

(2)企業規模や副業内容による処分に違い

懲戒処分の内容は、大企業になるほど重くなる可能性が高いです。なぜなら、大企業は関連企業も多く、副業を原因としてスキャンダルに発展するケースもあるからです。

また、副業している会社が同業他社の場合は重い懲戒処分に処されます。そのほか、ネットワークビジネスやキャバクラといった仕事も公序良俗的に良くないものとして重い処分が言い渡されやすいです。

(3)あらかじめ会社に連絡すれば認められることも

雇用形態が大きく変化する昨今では副業が見直されてきており、就業規則で、「副業をする場合は会社にその旨を連絡すること。会社は、その内容や本業に影響がないかどうかを判断したうえで許可する。」なとと定めている企業もあります。

副業がバレるかどうか心配な方は、副業を始める前に、まず勤めている会社の就業規則をよく読んでみてください。もし、連絡すれば許可されることもあると記載されているのであれば、人事部に連絡してみましょう。そのうえで許可されるのであれば、堂々と副業を行うことができます。

ただ、最近、従業員の長時間労働が非常に問題視されており、会社には従業員の肉体・精神面の健康に配慮する義務がありますので、副業の内容によっては許可されない可能性もあります。
副業をするのであれば、本業には絶対に影響を与えず、自身の健康管理も行うことを、しっかりと会社側に伝える必要があるでしょう。

4.副業をバレにくくするためには?

どうしても副業を行う必要があり、会社にバレたくないという場合には、次のような対策があります。

(1)確定申告を必ず行う

これは副業がバレルかバレないかという話というよりも、法律で定められた義務です。
収入があるのに確定申告をしないと脱税行為となり、悪質であれば刑事罰の対象となりますので、給与以外の収入が20万円を超える場合には、必ず確定申告を行いましょう。

仮に給与として支給されていても、会社で所得税・住民税を源泉徴収されていなければ、自らきちんと申告したほうが良いでしょう。
(この場合、本来は、会社側が源泉徴収義務に違反していますが、それでも個人としては申告は行ったほうが良いです。)

(2)個人事業主として外注を受ける

社員・パート・アルバイトとして働くと給与という扱いになり、一定金額を超えた場合には、必ず会社側で源泉徴収をしなければなりません。
住民税についても、強制的に特別徴収となり、普通徴収を選べません。副業で得た給与分の住民税は、本業の会社での給与分の住民税に加算されて、本業の会社で徴収されるはずですので、副業がバレやすくなります。

そこで、個人事業主といて外注を受けるという形態であれば、給与所得ではなく、事業所得あるいは雑所得ですので、住民税は普通徴収で自ら払うことになり、副業がバレにくくなります

IT業界のプログラマー、デザイナーなどは個人事業主として活躍している人が多くいますし、ライターやジャーナリスト、マッサージ師・整体師、予備校講師・家庭教師、風俗業界のキャバクラ嬢など多種多様の業界で個人事業主が増えています。
最近は、建設や運送などの業界でも一人親方として、個人事業主形態で働くケースも増えています。

Amazon、Yahooオークション、自己サイトなどを利用したネットショップであれば最初から個人事業としての扱いです。不動産投資で家賃収入を得ている人も個人事業です。

ただし、個人事業主の場合は、仕事で必要なもの(パソコン、教材、自動車など)を自分で揃えたり、赤字にならないように収支を自分できちんと管理する必要がありますので、別の負担が生じることを念頭に入れてください。

まとめ

マイナンバー制度の導入によって会社に副業がバレるわけではありません。

副業がバレる理由はマイナンバー導入前と変わらないものばかりであり、その多くは、未申告あるいは住民税の通知によるものです。会社に副業がバレた場合には懲戒処分が下される可能性もあります。

副業がバレないようにするためには、確実に確定申告を行うこと、できれば個人事業主として働くことです。

ただし、絶対に副業がバレないという保証はありませんので、副業をするのであれば、ある程度の覚悟は必要でしょう。

服部
監修
服部 貞昭(はっとり さだあき)
東京大学大学院電子工学専攻(修士課程)修了。
CFP(日本FP協会認定)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。
ベンチャーIT企業のCTOおよび会計・経理を担当。
税金やお金に関することが大好きで、それらの記事を2000本以上、執筆・監修。
「マネー現代」にも寄稿している。
エンジニアでもあり、賞与計算ツールなど各種ツールも開発。
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