新型コロナ【個人向け支援一覧】生活が苦しい時の対策まとめ
このページでは、コロナで生活が苦しい時に「利用できる支援」「取るべき対策」をまとめてご紹介していきます。個人で利用で…[続きを読む]
「生活保護制度」と聞くと、どのようなイメージを持たれるでしょうか。
リーマンショック以降、生活保護制度への申請者が増加したことに伴い、メディアから否定的な報道が行われていました。
また、人気タレントの親族が生活保護の不正受給を行っていたことが明るみになり、生活保護制度自体について、あまり良いイメージを持たれていない方が多いのではないでしょうか。
しかし、生活保護制度は国民の生存権の保障(憲法25条)に基づく制度です。
この制度は、国民の最低限の生活を保障する制度で、収入が少なくて生活に困っている方や、家賃が払えなくて家を追い出されてしまいそうな方などを救う国の大事な制度です。
これから、新型コロナウイルス感染症の影響により生活保護制度への申請者も増加するとみられています。
ここでは、生活保護制度とは何なのか、生活保護制度に関する誤解をご紹介します。
目次
生活保護は、誰でも支給を受けられるものではありません。生活に困窮しており、最低限度の生活ができていない場合に、申請し受給決定が行われることで生活保護を受給することができます。
ただし、生活保護を受けるためには次の要件に該当しなければなりません。
預貯金がある場合や、生活に必要ない不動産がある場合は、生活保護を受けることができません。
生活保護を受給する前に生活に必要ない不動産を売却し、生活費に充当する必要があります。
労働が可能な方で、最低生活費以上の収入がある方は生活保護を受給することはできません。
年金や手当など、他の制度で給付金を得ることができる場合は、生活保護より先にこれらの給付を受ける必要があります。
親族などから援助を受けられる場合は、生活保護を受給することはできません。
以上の要件を満たし、収入が厚生労働省で定められている最低生活費に満たない場合に生活保護が適用されます。
生活保護は、生活に必要不可欠な費用に応じて支給されます。その種類は次の8つに分類されています。
扶助の種類 | 支給内容 |
---|---|
生活扶助 | 日常生活に必要になる食費、水道光熱費、衣服費など (定められた基準額を支給) |
住宅扶助 | アパートの家賃など (定められた範囲で実費を支給) |
教育扶助 | 義務教育を受けるために必要な費用 (定められた基準額を支給) |
医療扶助 | 医療費 (福祉事務所が直接医療機関に医療費を支払うため、本人の負担はない) |
介護扶助 | 介護にかかる費用 (福祉事務所が直接医療機関に医療費を支払うため、本人の負担はない) |
出産扶助 | 出産費用 (定められた範囲で実費を支給) |
生業扶助 | 就労に必要な技術の習得にかかる費用 (定められた範囲で実費を支給) |
葬祭扶助 | 葬祭費用 (定められた範囲で実費を支給) |
ここまで生活保護制度の概要をご紹介しましたが、「生活保護を受給するのは難しいのではないか?」と感じた方も少なくないのではないでしょうか。
しかし、生活保護はとてもシンプルな制度です。
厚生労働省で定められている「最低生活費」より世帯収入が少なければ、最低生活費と収入の差額を生活保護で受給することができます。
生活保護を受給するうえで大事なことは、ご自身の世帯の「最低生活費」がいくらになるかを確認することです。
「最低生活費」とは、「地域・年齢・世帯構成・個別の事情」をもとに算出されます。
「生活は苦しいけど、働いているから生活保護が受けられない…」という意見をよく耳にしますが、それは誤解です。
働いている方でも生活保護を受けられる可能性があります。生活保護は特別な制度ではなく、もっと身近な制度です。
ここでは、よく生活保護が受けられないと誤解されているケースをご紹介します。
生活保護は無職の人だけが受給できる制度ではありません。働いていても給料が最低生活費以下であれば、その差額分の生活保護として受給することができます。
生活保護の申請に行くと「働いている人は生活保護が受けられません」と言われることがありますが、働いている人でも生活保護を受けることが可能です。
生活保護に年齢は関係ありません。生活保護法第2条では、全ての国民が生活保護を受ける権利がある「無差別平等の原理」が定められています。
若くても仕事がなく、生活が苦しい場合は生活保護を受給することができます。申請時に「若い人は申請できません」と言われることがありますが、年齢は関係ありません。
さまざまな事情から住民票を移せない方もいらっしゃいます。生活保護は、住民票がある地方自治体から受給されるのではなく、居住地の地方自治体から受給を受けることができます。(現在地主義)
仮に、ネットカフェや路上などで寝泊まりしている場合でも、近くの地方自治体で生活保護を申請することができます。
申請時に「住民票がある自治体で申請してください」と言われることがありますが、それは誤りです。住居がない場合は、生活保護を受けることにより、新しい住居の敷金や家財道具の購入費用などが支給される可能性があります。
持ち家は、生活に必要な資産です。持ち家があっても生活保護を受給することが可能です。(住宅扶助の受給は不可)
ただし、持ち家の価値が高額の場合は、売却して生活資金に充てるように指導される場合があります。
年金や失業手当の受給があっても、その手当の受給額が最低生活費を下回っていれば、その差額を生活保護として受け取ることができます。
車は生活に必要な資産とみなされませんが、車の価値が低く、半年以内に生活保護から脱却する見込みがあるなど、特定の要件に該当する場合は車を持っていても生活保護の受給が可能です。
生活保護の申請を行うと、地方自治体から生活保護の申請者の家族へ「生活にかかる費用を援助できませんか?」と問い合わせがある場合があります。
しかし、親族からの援助は強制されるものではありません。親族に金銭的な余裕があっても、生活保護の申請者への援助を断ることができます。援助が断られた申請者は、生活保護を利用することができます。
世帯収入が最低生活費を下回っている場合に、その差額を生活保護として受給することができます。
生活保護がいくら受給できるか計算するには、ご自身の世帯の最低生活費を計算する必要があります。最低生活費の具体的な例を見てみましょう
Aさん世帯の場合 (東京都23区で一人暮らし、45歳)
最低生活費は13万5,140円(11~3月は3,080円加算)
Bさん世帯の場合 (大阪市在住、3人家族(母子家庭)、母33歳・子14歳・子8歳)
最低生活費は26万6,090円(11~3月は4,570円加算)
Cさん世帯の場合 (宮崎市在住、2人家族、夫73歳・妻68歳)
最低生活費は14万3,070円(11~3月は3,630円加算)
生活保護の金額は地域や、世帯構成、年齢によって大きく異なります。
ご自分の世帯の最低生活費がいくらになるか確認を行いたい場合は、厚生労働省が定めている最低生活費の基準額をご覧ください。
まず、お住いの地域の等級を確認
次に、生活扶助基準額についてを参照
生活保護は所得税・住民税が非課税になっており、国民健康保険にも加入する必要がないため、実際に同じ金額の収入がある世帯よりも日々の生活に使用できる金銭は多くなります。
生活保護を受ける最大のメリットは「最低限の生活が保障されること」です。健康上の問題で働けず、収入が安定しない場合でも最低生活費は保障されます。その他に、生活保護の受給期間中は支払が免除になる費用が多くあります。
生活保護はメリットばかりではありません。生活保護を受給すると次の制限がつくことになります。代表的なものを見ていきましょう。
ケースワーカーが自宅に訪れ、生活保護の使い方や求職状況、収入があったかなどの報告を行います。
不動産や車、ブランド品などの購入が制限される場合があります。ただし、何が贅沢品にあたるかは福祉事務所の判断によります。
生活保護受給中はクレジットカードを新規発行することは困難です。
なぜなら、生活保護は安定した収入とはみなされないため、クレジットカード発行会社の支払能力審査を通過することが難しいためです。
また、生活保護申請前から持っているクレジットカードの使用に関しても制限される場合が多いため、事前に福祉事務所に確認が必要です。
生活保護を申請すると三親等以内の親族に「扶養義務照会書」が送付されます。つまり、両親と兄弟には生活保護を申請していることがばれてしまいます。
生活保護の申請は、お住いの地域の福祉事務所で行います。もし住民票の住所と異なる場合であっても居住地の福祉事務所になります。
申請の前に、まずは事前相談を行い、生活保護制度についての説明を受けた方がいいでしょう。
まれに、説明の段階で「生活保護を受けることはできません」と窓口で説明される場合もありますが、調査が行われる前に福祉事務所で生活保護の受給可否について決定を下すことはできません。
「生活保護が受けられない」と窓口で言われても「それでも申請します」と明確に伝えた方がいいでしょう。
福祉事務所は、生活保護の申請を行われると調査義務が生じますので、なるべく申請をさせないようにさせる傾向があります。
生活保護は以下の申請手順で行われます。
お住いの福祉事務所に生活保護についての相談を行います。事前に電話で連絡した方がスムーズです。
生活保護の申請を行います。申請には次の書類が必要ですので忘れずに持参しましょう。
【必ず必要な書類】
【状況により必要になる書類】
申請時に必要な資料は、個別の事情によって様々です。福祉事務所に相談を行う際に申請に必要な資料を前もって尋ねておくといいでしょう。
生活保護の申請を行うと、福祉事務所から生活保護の受給資格があるかどうかの調査が行われます。この調査では以下の事項が調べられます。
担当のケースワーカーが申請者にヒアリングを行い、必要に応じて金融機関や保険会社などに照会を行うこともあります。
調査により生活保護の支給に問題がない場合は、福祉事務所より受給の決定が行われます。
調査結果をもとに生活保護の受給が必要かどうか、福祉事務所長が決定を行います。原則的には、申請から14日以内(遅くても30日以内)に決定することになっています。
生活保護が受けられる場合は「保護開始決定通知書」、受けられない場合は「保護申請却下通知書」が公布されます。
生活保護が受けられず、決定の内容に不服がある場合は、請求した自治体の県知事に対して審査請求を行うことができます。
生活保護制度は、偏った報道やネガティブなイメージにより誤解されることが多い制度です。
「生活保護を受給している人は悪い」というイメージにより、生活が苦しくても生活保護の申請を躊躇している方も多くいます。
しかし、生活保護制度は日本国憲法で規定されている「生存権(憲法25条)」を保障する制度です。
生活保護を受給することは全く悪いことではありません。ここでは、誤解されやすい生活保護制度についてご紹介します。
福祉事務所で申請者を追い返す行為は違法行為です。
生活保護制度は生存権を保障する制度です。そのため、誰にでも生活保護を申請する権利は認められています。福祉事務所がこれを拒むことはできません。
しかし、残念ながら、いくつかの自治体の福祉事務所では「水際作戦」と言われる「生活保護の申請をさせない行為」が行われています。
この「水際作戦」は違法行為です。生活保護を申請することは私たち国民の権利です。もし、生活保護の申請をさせてもらえない場合は、法テラスなどの弁護士に相談することをおすすめします。
メディアの偏った報道により「生活保護=不正受給」という方程式を思い浮かべる方も少なくありません。
しかし、生活保護の不正受給の実態は総受給額のわずか1%未満です。
その1%未満の不正受給においても、ケースワーカーの説明不足により「収入を報告しなければならないことを知らなかった」ケースも多くあり、悪意のある不正受給はほんの一握りです。
生活保護を受けている人が不正受給を働いているというイメージは誤解です。
毎年のように「生活保護の受給世帯が過去最多」と耳にするため、「生活保護が国家財政を圧迫しているのでは?」と考える人も少なくないでしょう。
しかし、この考え方は誤解です。日本では受給資格のある世帯(最低生活費以下の収入の世帯)のうち、約80%は生活保護の受給を受けていません。
つまり、受給資格のある世帯のたった20%しか生活保護の受給を受けていないのです。
ヨーロッパでは受給資格のある世帯の60~90%が生活保護を受給しているのに対し、日本はとても少ない割合の世帯しか制度を利用していません。これは、先進国の中でも極めて少ない割合です。
生活保護を受給していても「生活の自由」や「基本的な人権」は守られています。
生活保護のデメリットでご紹介した贅沢品の購入などに制限やクレジットカードが作れないなどの制限がありますが、それ以外で自由を奪われることはありません。
生活保護を受給しているからといって仕事や学業で不当な扱いを受けることもありません。
「生活保護制度」は国民のセーフティネットです。
事故や病気、失業などで生活が苦しく最低限の生活ができない場合は生活保護を利用して安定した生活の立て直しをはかりましょう。
生活保護制度は日本国憲法で定められた「生存権(憲法25条)」を保障する制度です。
生活が困窮している人は誰でも申請し、受給することができます。
ただし、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて経済的に苦しい方には、他にも様々な制度がありますので、もしまだの場合には、こちらも検討されてみてください。