口座維持手数料/口座管理手数料とは?導入はいつから?詳細を解説
日本では銀行の口座開設や維持は基本的に無料です。
しかし報道にもあるとおり、メガバンクの一角である三菱UFJ銀行が来年から口座維持手数料の導入を検討するなど、にわかに導入に向けた機運が高まっています。
口座維持手数料が導入される背景や主要各行の動きなどについて解説していきます。
目次
1.口座維持手数料/口座管理手数料とは
口座維持手数料とは金融機関に口座を持っているだけでかかる手数料です。
米国など海外では口座を持っているだけで手数料を課して金融機関も一般的となっています。
ですが、これまで日本の金融機関ではほとんど実施されることはありませんでした。
なお、長期間稼働していない口座に対する手数料を口座管理手数料と言います。
(1)なぜ導入が検討されているのか?
口座維持手数料の導入が検討されている理由のひとつに、長引く低金利による金融機関の収益悪化があります。
銀行は、顧客の預金を元手に別の顧客へ融資を行い、その金利の差で収益を得ています。
簡単に単純計算すれば、預金金利として0.1%を顧客に渡したとしても、融資の金利として0.5%を貰っていれば、差の0.4%分は銀行の収益になるということです。
しかし、2013年に導入された日銀の異次元緩和政策、2016年に導入されたマイナス金利政策によって、国債の金利や金融機関の貸し出し金利が低下したため、金融機関の利鞘も低下し収益力の低下が続いています。
また、フィンテックや他業種からの参入による競争激化も一因と考えられています。
店舗運営コストや人件費のかからないネット銀行が安い手数料を武器にシェアを拡大していることもあり、金融機関の競争環境は激化の一途を辿っています。
たとえ1円の口座残高であっても口座管理コストはかかります。口座情報の維持管理コストやATMの利用、セキュリティシステム、紙通帳の発行管理コストが負担になっています。
このように、従来の構造では収益を得られなくなりつつあり、各行は収益の確保とサービス維持のため、近年口座維持手数料の導入を検討し続けてきました。
(2)欧米では既に導入されている
海外では口座維持手数料はすでに導入されている一般的なもので、利用者にもサービスは有料という意識が浸透しています。
ただ、一定の口座残高や投資信託、住宅ローンなどサービスを利用している預金者は口座維持手数料を無料としているケースが多くあります。
日本ではサービスは無料という考え方が根強いため、手数料の導入は、いかに預金者に周知し理解を得るかが課題となっています。
2.各銀行の導入に向けた動き
次に国内の各銀行の口座維持手数料導入に向けた動きはどうなっているのでしょうか。
メガバンク三行の導入に向けた動きを見てみます。
(1)三菱UFJ銀行
三菱UFJ銀行では、新規口座開設分のみを対象として2020年10月からの導入を検討しています(2020年9月までに開設した口座は対象外の予定)。
2年間取引がない不稼働口座が対象で、年間1200円の口座管理手数料を導入予定です。
2020年7月から事前に顧客に周知します。
また、紙の通帳の有料化も検討しており、口座維持コストの削減に前向きです。
(2)三井住友銀行
三井住友銀行は、今年9月に頭取が全銀協会長としての会見で「導入の是非も含め、何ら方針を決めているということはない」とコメントしています。
しかし、三井住友銀行では2019年1月から、5年以内に取引のない残高千円未満の口座に対しては取引を停止するとり扱いを開始しています。
こうした不稼働口座が銀行の負担になっていることを示しており、口座維持手数料の導入の検討も継続しているものと思われます。
【参考】三井住友銀行「長期間入出金のない預金のお取扱について」
(3)みずほ銀行
みずほ銀行は収益力の低下を受けて、サービス全般の手数料などの見直しを含め導入を検討すると頭取がコメントしています。
実際にみずほ銀行では窓口やATMでの手数料の引き上げに動いています。2019年8月には窓口の両替と振込手数料、10月にはATMの振込手数料を引き上げを発表しています。
このような動きに続いて、口座維持手数料を導入する可能性も十分にあるといえるでしょう。
3.口座維持手数料が導入されるとどうなる?
(1)どんな人が対象?
口座維持手数料は基本的にすべての預金者が、口座管理手数料は一定の不稼働口座の利用者が対象となります。
しかし、未稼働口座の活性化の意味合いもあることから、一律に徴収するのではなく、投資信託や住宅ローン、一定の残高保有者からは手数料を徴収しない可能性も十分に考えられます。
(2)口座維持手数料はいくらかかる?
口座維持手数料はおよそいくらぐらいの設定になるのでしょうか。
りそな銀行と埼玉りそな銀行は年間1200円、三菱UFJ銀行の検討も年間1200円となっています。海外では5ドル〜15ドル/月と比較的高額です。
利用者の反応などを考えると、現実的には日本では年間1000円前後で導入開始し、各金融機関同士横並びの設定で落ち着くと考えられます。
(3)今後予想される動き
これまでなかった口座維持・管理手数料を既存の顧客から徴収すると、顧客にとっては不利益変更となるため、預金者の同意が必要になります。また、顧客流出の懸念もあるため、近年議論がありつつも実際の導入は進んでいませんでした。
しかしメガバンクの一つである三菱UFJ銀行の導入をきっかけに一斉に同様の動きが広まる可能性は高いでしょう。
時期的には、三菱UFJ銀行が導入を検討している来年秋に向けた動きが注目されます。当初は新規口座開設のみを対象としていますが、いずれは既存の口座保有者に広がる可能性もあります。
まとめ
口座維持手数料の導入について背景と各行の動き、今後の予想についてご案内しました。
口座維持手数料・管理手数料は各金融機関が検討をすすめています。
今回の三菱UFJ銀行の動きは、これをきっかけに各金融機関で横並び的に導入が始まる可能性が高い重要なものです。
特に預金残高上位のゆうちょ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行にもこの動きが波及するようだと、金融業界で口座維持手数料導入の動きが加速するでしょう。
来年秋に向けた各行の動きに注目です。