ひとり親控除と寡婦控除の違いを中心にして、それぞれの内容と控除額について解説します。また、最新の年末調整の書類や確定…[続きを読む]
扶養控除等申告書の「異動月日及び事由」の書き方(記入例つき)
入社時や年末調整で記入する「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」には、「異動月日及び事由」という欄があります。
意味がよくわからない欄ですが、結婚・出生などで、扶養家族に変更があったときに記入する欄です。いくつかの記入例をあげて、書き方を紹介します。
目次
1.異動とは変更があること
「異動」という言葉は、「人事異動」でよく使われますね。
「異動」の意味をオンライン辞書で調べてみると、次のように書いてあります。
- 職場での地位、勤務などが変わること。また、転・退任などの人事の動き。
- 物事に、前の状態と違った動きが起こること。
- 保険契約で、保険期間の中途で契約内容について変更が生じたとき、保険会社に通知して契約条件を変更すること。また、現行のものと違う内容の保険契約に移ること。
何か変化や変更があったとき「異動」といいます。
また、事由とは、
直接、理由または原因となっている事実
のことです。要するに、扶養家族が変更になったら、その理由となる事実を記入すればいいのです。
2.扶養控除等申告書の「異動月日及び事由」欄
扶養控除申告書の正式名称は「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」といい、カッコ書きで「異動」という言葉も含まれていますが、その年に、扶養家族に変更があったときにも記入します。
こんなふうに、書類の右側のほうに、「異動月日及び事由」という欄があります。
たとえば、今が令和6年だとすれば、令和6年分の扶養控除等申告書を提出する次のタイミングで「異動事由」に記入します。
- 令和6年の途中で変更があって再提出するとき
- 令和6年の年末調整で提出するとき
なお、入社したときなど、令和6年分を初めて提出するときは、「異動事由」の記入は不要です。
また、令和6年の年末調整では、令和6年分とあわせて、令和7年分の扶養控除等申告書を一緒に提出することが多いですが、令和7年分は初めて提出しますので、「異動事由」の記入は不要です。
会社に理由を知られなくないが、書かないといけないの?
離婚して配偶者控除がなくなるときなど、会社に理由を知られなくないこともあるかもしれません。
毎月の源泉徴収や年末調整の控除に関係するのは、扶養控除欄の左側の氏名・住所・生年月日・所得の見積額などのほうです。
「異動月日及び事由」という欄に記載する内容が、控除に影響することはありません。
ただ、記入して、いつ扶養家族に変更があったかを会社にちゃんと伝えるほうが、会社も変更があったことを認識できますので、控除ミスや控除漏れがなくなりやすくなります。
会社によって記入を任意にしているところ、または必須にしているところがありますので、実際には会社の指示に従うのが良いでしょう。
月日が明確でないときは?
扶養に入れたり外れたりする家族が自営業の場合は、いつからというのが明確でないことが多いです。その場合は、月日を含めて理由を記入しなくても良いでしょう。もし会社から質問されたら、正直に「いつからかは不明です」と答えれば良いのではと思います。
3.パターン別、異動月日及び事由の書き方
ここからは、以下のパターンの、「異動月日及び事由」の書き方を紹介します。
- 結婚:配偶者を扶養に入れるとき
- 離婚:配偶者を扶養から外すとき
- 出生:子供が生まれて、扶養に入れるとき
- 死亡:子供や配偶者・親などが亡くなって、扶養から外れるとき
- 就職:子供や配偶者・親などが就職して、扶養から外れるとき
- 退職:子供や配偶者・親などが退職して、扶養に入れるとき
- 収入減少:子供や配偶者・親などが収入(所得)が減って、扶養に入れるとき
- 産休・育休:配偶者が休暇をとって、扶養に入れるとき
- 引っ越し:住所が変わったとき
結婚:配偶者を扶養に入れるとき
- 1月15日婚姻のため
- 1月15日結婚のため
日付は、婚姻届の提出日です。婚姻届を役所に届け出た日が、婚姻した日になります。
所得税・住民税の配偶者控除では、民法上、婚姻している状態が必要です。一緒に住み始めたとか、事実婚では、適用できません。
離婚:配偶者を扶養から外すとき
- 2月15日離婚のため
日付は、離婚届の提出日です。離婚届を役所に届け出た日が、離婚した日になります。
既存の用紙を修正する場合は、「源泉控除対象配偶者」の欄に書いた内容を二重線で消して訂正します。(訂正方法は勤務先に問い合わせください。)
離婚後、条件を満たせば、「ひとり親控除」または「寡婦控除」を受けられます。
出生:子供が生まれて、扶養に入れるとき
- 3月15日出生のため
日付は、出生届の「生まれたとき」欄に記載した日付です。通常、出生証明書に記載されているものです。
死亡:子供や配偶者・親などが亡くなって、扶養から外れるとき
- 4月15日死亡のため
日付は、死亡届の「死亡したとき」欄に記載した日付です。通常、死亡診断書に記載されているものです。
既存の用紙を修正する場合は、「控除対象扶養親族」の欄に書いた該当者の内容を二重線で消して訂正します。
就職:子供や配偶者・親などが就職して、扶養から外れるとき
- 5月15日就職のため
日付は、通常、入社した日を記入します。
既存の用紙を修正する場合は、「源泉控除対象配偶者」または「控除対象扶養親族」の欄に書いた内容を二重線で消して訂正します。
なお、子供が就職した後に、その子のために払った医療費や国民健康保険料は控除の対象になりませんので、ご注意ください。
ところで、就職したが、パート・アルバイトで給与が少ないとか、11月・12月の就職で、その年の年収が103万円以下になる見込みであれば、今回は、この記入はしなくても良いでしょう。
退職:子供や配偶者・親などが退職して、扶養に入れるとき
- 6月16日退職のため
日付は、通常、退職した日の翌日を記入します。6月15日に退職したのであれば、6月16日から会社に在籍しないことになり、その日から扶養に入ります。
収入減収:子供や配偶者・親などが収入が減って、扶養に入れるとき
- 7月15日勤務形態変更のため
今まで正社員やフルタイムワークだったが、アルバイト・パートになったとか、勤務日数・勤務時間が減ったとかで、その年の年収が103万円以下になることが明らかなときは、扶養に入れます。
日付は、新たな勤務形態になった日を記入します。
産休・育休:配偶者が休職して、扶養に入れるとき
- 8月15日産休のため
産休・育休などの休職で、その年の年収が103万円以下になることが明らかなときは、扶養に入れます。
日付は、産休を開始した日を記入します。
引っ越して、住所が変わるとき
- 9月15日引っ越しのため
日付は、転入届の「異動日」に記入した日です。通常、引っ越した日です。
既存の用紙を修正する場合は、本人と、扶養家族の住所を二重線で消して、近くに新しい住所を記入します。
4.訂正の方法
異動があったとき
- 新たに最新の内容を記入して提出する
- 既存の用紙を訂正して提出する
のどちらかのパターンがあります。どちらにするかは、会社が指示するはずです。
ここで、既存の用紙を訂正するときは、通常
- 訂正箇所に二重線をする
- 二重線の近くに正しい内容を記入する
という方法で訂正します。会社から指示があれば、その方法に従ってください。
以前は訂正箇所に押印をしていましたが、現在は基本的には必要ありません。2022年(令和4年分)から、申告書の押印欄がなくなりました。
ただし、会社によっては、押印を指示するケースもありますので、その場合は、会社の指示に従ってください。