傷病手当金は年末調整が必要?

病気やケガをして会社を長期間休んだときにもらえる「傷病手当金」ですが、傷病手当金は非課税ですので、年末調整は不要です

傷病手当金は税金の計算では収入に含めませんが、社会保険の扶養を判定するうえでは収入に含めます

また、確定申告をすると医療費控除を受けられる可能性があります。

1.傷病手当金は年末調整が必要ない

傷病手当金は、病気やケガで働けなくなって給与が支払われくなった人に対して、生活を保障するための制度です。そのため、その金額にかかわらず、傷病手当金の収入は非課税です。

非課税ということは、年末調整で傷病手当金の収入を申告する必要もありません

(1)健康保険(会社員)の傷病手当金

「傷病手当金」は、会社員・公務員などが加入する健康保険の制度です。

支給条件

次の条件を満たす場合に、支給されます。

  1. 仕事以外の理由による病気やケガであること
  2. 働けなくなったこと
  3. 連続して4日間以上休んでいること
  4. 給与が支払われないこと

支給金額

支給金額は、「支給日より前の1年間の標準報酬月額の平均÷30日×2/3」です。加入期間が1年未満のときは、直近の標準報酬月額の平均か、標準報酬月額の平均値(30万円)のどちらか低い金額になります。

傷病手当金は税金は非課税ですので、手取りは、通常時の8割程度になります。

支給期間

2022年1月1日より、通算して1年6ヶ月に変更されました。つまり、途中、仕事に復帰してもらえなかった期間があった場合、その期間は含めずに、1年6ヶ月もらえます。

変更前は、最長1年6ヶ月でしたので、途中、もらえなかった期間があっても、その期間も含めて1年6ヶ月でした。

(2)国民健康保険(パート・アルバイト等)の傷病手当金

会社に勤めていても、パート・アルバイト等で、社会保険に加入する基準に満たない人は、国民健康保険に加入しています。

国民健康保険には、傷病手当金の制度はありませんでしたが、特例として、新型コロナウイルス感染症に感染した人には、傷病手当金が支給されます。

なお、給与をもらっている人のための制度ですので、個人事業主・フリーランスには傷病手当金は支給されません

支給条件

  1. 新型コロナウイルス感染症に感染した人、または、発熱等の症状があり感染が疑われる人
  2. 働けなくなったこと
  3. 連続して4日間以上休んでいること
  4. 給与が支払われないこと

支給金額

支給金額は、「直近の3ヶ月間の給与収入÷就労日数×2/3×支給対象日数」です。

支給期間

2020年1月1日から2023年5月7日までの間で仕事ができなかった期間(最長2年間)

※期間が何度か延長されました。

2.傷病手当金と収入・扶養の関係

(1)所得税・住民税では収入に含まれない

傷病手当金は非課税ですので、所得税・住民税の計算をするうえでの、収入(個人事業主は所得)には含まれません

また、扶養になるかどうか判定するための年収の条件にも含まれません

たとえば、扶養控除の条件は、年収103万円以下(所得48万円以下)ですが、傷病手当金をいくらもらったとしても、収入(所得)に含めずに計算します。

(2)社会保険の扶養判定の収入には含める

社会保険では、家族の年収が130万円未満(60歳以上か障害者は180万円未満)であれば、家族を扶養に入れることができます。
(正確には、130万円を12で割った月収換算の金額が108,333円未満であること)

その年収には、傷病手当金を含めて計算します。家族が病気やケガで休職しているが、傷病手当金だけで、毎月108,333円を超えている場合は、その家族を社会保険の扶養に入れることができません。

休職して無収入になったら扶養に入れると思いがちですが、この点は注意が必要です。

3.傷病手当金は確定申告も必要ないが、医療費控除には注意

傷病手当金は非課税ですので、年末調整だけでなく確定申告も必要ありません。

確定申告をするとき、傷病手当金でいくらもらったとしても、収入(所得)に含める必要はありません。

ただし、確定申告をすると、病気やケガで支払った医療費を控除することができます

医療費控除の条件

所得金額によって異なり、次の金額を超えた場合は、医療費控除を受けられます。

  • 所得200万円以上の場合:10万円
  • 所得200万円未満の場合:総所得金額の5%

フルタイムワークで通常の収入がある人は、医療費が10万円を超えると、医療費控除を受けられると考えれば良いでしょう。

医療費控除を受けるには、自分で確定申告が必要ですので、忘れずに行いましょう。

服部
監修
服部 貞昭(はっとり さだあき)
東京大学大学院電子工学専攻(修士課程)修了。
CFP(日本FP協会認定)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。
ベンチャーIT企業のCTOおよび会計・経理を担当。
税金やお金に関することが大好きで、それらの記事を2000本以上、執筆・監修。
「マネー現代」にも寄稿している。
エンジニアでもあり、賞与計算ツールなど各種ツールも開発。
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