所得税の予定納税額の減額方法と注意点

税金

 前年度の申告納税が一定額以上であると「予定納税」というものをしなければいけません。納税は年に一度、というイメージがある人にとっては、かなり違和感があるものだと思います。今回は「予定納税」制度について詳しく解説していきます。

1.予定納税とは?

1-1.予定納税の内容

予定納税とは、その年の所得税・復興特別所得税の金額が大きくなりそうな人(主として、前年に確定申告をしている人)に対して、あらかじめ所得税等の一部を前払いで徴収する制度です。

厳密には、その年の5月15日時点で分かっている、前年度の所得金額や税額などを基準に計算した金額が15万円以上である場合に、その年の所得税等の一部を前払いします。
前年度の所得金額や税額などを基準としますが、前年度に災害減免法の規定の適用を受けていない場合や、譲渡所得や雑所得などのない一般的な個人事業主の場合は、前年度の申告納税額が15万円以上かどうかが予定納税の有無の基準となります。

予定納税は、2回に分けて支払います。それぞれ前年度の申告納税額の3分の1の金額を、第1期分は7月1日から7月31日までに、第2期分は11月1日から11月30日までに納めます。
そして、確定申告では、実際に計算した1年間の所得税等の金額から予定納税で先に納めた金額を差し引いた金額を納めます。

例)前年度の申告納税額が21万円、本年度の所得税等の金額が20万円の場合

①第1期分 7月1日から7月31日
前年度の申告納税額21万円の3分の1の金額である7万円を納付します。

②第2期分 11月1日から11月30日
第1期分と同様7万円を納付します。

③確定申告 3月15日期日
本年度の所得税等の金額20万円から、第1期分・第2期分の予定納税合計14万円を差し引いた6万円を納付します。

予定納税は、納税者にとっては税金を分割して無理なく納められ、国にとっては税金の徴収漏れを防ぐという効果があります。

1-2.予定納税の申告方法

予定納税は、前年度の申告納税額が15万円以上である場合に行う必要があります。では、予定申告の申告や納税はどのようにすればよいのでしょうか。予定納税をする必要がある人には、所轄の税務署長からその年の6月15日までに、書面で通知されます。

納付方法は、原則、納付書を金融機関に持参し、現金で支払いです。あらかじめ振替納税を選択している場合は、それぞれの納付期限日に、指定している銀行口座から自動引き落としされます。また、ダイレクト納付やインターネットバンキング等を使った電子納税も可能です(事前に届け出が必要)。

2.予定納税の減額

2-1.予定税額の減額

予定納税は、今年の実績を加味せず、あくまで前年度の状況をみて、本年度も多くの税金を支払うであろう人に納付義務を課しているものです。
そのため、前年よりも今年の売り上げが落ちるなどの理由で、予定納税の金額を支払うことが苦しい場合にも予定納税の通知が来ます。その場合は、所轄の税務署に「予定納税額の減額申請書」を提出することで、予定税額の減額をすることが可能です。

予定税額の減額ができるのは次のような理由があり、6月30日または10月31日の現況で、去年よりも今年の所得税等の金額が少なくなることが予想できる場合です。

  1. 廃業や休業、失業をした場合
  2. 本年分の所得が前年分の所得よりも明らかに少なくなると見込まれる場合
  3. 災害や盗難、横領などがあった場合
  4. 去年より所得控除や税額控除の金額が明らかに増える場合

その他の理由でも、個別に特殊な事情が生じたことにより、予定税額の減額を受けることができる場合があります。

2-2.減額方法

では、予定税額の減額までのプロセスを見ていきましょう。

①「予定納税額の減額申請書」の入手

まずは、「予定納税額の減額申請書」を入手します。「予定納税額の減額申請書」は、税務署の窓口もしくは、国税庁のホームページから入手できます。

②6月30日または10月31日の現況により所得税等の金額を見積もる

予定税額の減額ができるのは、6月30日または10月31日の現況で、去年よりも今年の所得税等の金額が少なくなることが予想できる場合です。

6月30日の現況で去年より所得税の金額が少なることが予想される場合は、第1期分・第2期分の、10月31日の現況で去年より所得税の金額が少なることが予想される場合は第2期分の予定税額が減額されます。

所得税等の金額を見積もるためには、実際に帳簿付けを行い、所得や所得税等の計算をする必要があります。

③予定納税額の減額申請書の作成

6月30日または10月31日の現況により所得税等の金額を見積もれば、その金額をもとに、「予定納税額の減額申請書」の作成を行います。「予定納税額の減額申請書」には、通知された予定納税の金額や見積もった所得や所得税等の金額を記載します。

④「予定納税額の減額申請書」の提出

作成した「予定納税額の減額申請書」は、それぞれの提出期限までに所轄の税務署に提出します。第1期分および第2期分の減額申請については、その年の7月1日から7月15日までに、第2期分のみの減額申請については、その年の11月1日から11月15日までに提出します。

「予定納税額の減額申請書」には、損益計算書などの申告納税見積額の計算の基礎となる事実を記載した書類を添付する必要があります。申請書が承認されたかどうかは、後日に所轄の税務署から届く通知により確認します。

3.予定納税の注意点

3-1.予定納税のペナルティ

ここからは、予定納税の注意点を確認します。もし、予定納税の通知を無視して税金を納めなかったらどうなるのでしょうか。「今年の税金の前払いだから、確定申告の時期にまとめて払えばいいじゃないか」というと、実はそうではありません。

予定納税といっても、確定申告の納税と同じように、必ず納めなければいけない税金となります。そのため、予定申告の納付期限から遅れて税金を納めた場合は、延滞税のペナルティがあります。

延滞税は法定納期限の翌日から納付する日までの日数に応じて計算されます。どれぐらいの延滞税がかかるかというと、財務大臣が告示する特例基準割合等を考慮し、毎年、延滞税の割合を計算します。

ちなみに、平成30年1月1日から平成30年12月31日までの期間では、以下のようになっています。

  • 納期限の翌日から2ヶ月を経過する日:年2.6%
  • 納期限の翌日から2ヶ月を経過した日以後:年8.9%

延滞税を払うことは、とてももったいないことです。予定申告の納付期限までに納税するようにしましょう。

3-2.予定納税のよくあるミス

予定申告でよくあるミスには次のようなものがあります。

①予定納税の基準となる前年度の申告納税額は、確定申告時に支払った金額ではない

前年度の申告納税額が15万円以上の場合は、予定納税の対象となります。ここで注意したいのが、前年度の申告納税額とは必ずしも確定申告時に支払った所得税等の金額と同じでないということです。

例えば、前年も予定納税していた場合は、予定納税を差し引いた金額を、確定申告時に支払います。

例)前々年度の申告納税額が21万円、前年度の所得税等の金額が20万円の場合

前年度の確定申告では、前年度の所得税等の金額20万円から、第1期分・第2期分の予定納税合計14万円を差し引いた6万円を納付しています。
この場合、確定申告時の納付額が15万円を超えるかどうかで考えるのではなく、前年度の所得税等の金額が15万円を超えるかどうかで考えます。
確定申告時の納付額は6万円なので15万円以下であるから、予定納税がないと考えていると、予定税額を納めることを忘れたり、思わぬ支出となったりすることがあるので、注意が必要です。

②振替納税の場合は、銀行口座の残高に注意

予定納税では、所轄の税務署長から通知が6月15日までに行われますが、実際に指定銀行口座から引き落としされるのは、第1期分が7月31日、第2期分11月30日となっていて、通知から引き落としまで時間があります。
通知時点で残高があるので安心していても、他の支払いなどで、引き落とし日に残高がない場合もあります。この場合は引き落としがされず、延滞税などが課される場合もあるので、残高には常に注意しておきましょう。

まとめ

今回は「予定納税」について解説しました。この制度をしっかりと理解し、いざ申告するというときに、思いがけない損をしないようにしましょう。

監修
ZEIMO編集部(ぜいも へんしゅうぶ)
税金・ライフマネーの総合記事サイト・ZEIMOの編集部。起業経験のあるFP(ファイナンシャル・プランナー)を中心メンバーとして、税金とライフマネーに関する記事を今までに1300以上作成(2024年時点)。
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