年末調整で間違えたらどうなる? 還付金への影響は?

確定申告 訂正

この記事では、年末調整で間違えてしまったら、そしてその間違いを放置してしまったらどのような影響があるのか解説します。

年末調整で間違えたら還付金が減る?

「年末調整」とは、毎月の給料や賞与から天引き(源泉徴収)された所得税の額の合計額と、実際の所得税の額との差額を会社側が調整する手続きのことです。

会社は、各従業員について、源泉徴収した金額が実際の所得税の額よりも多ければ12月分の給料で差額を従業員へ還付し、実際の所得税の額より少なければ12月分の給料で差額を従業員から徴収します。

たとえば、毎月の給与から3万円ずつ源泉徴収している従業員(つまり源泉徴収された所得税の額は36万円)の実際の所得税の額が30万円である場合、会社は12月分の給料でこの従業員に対して6万円を還付します。

年末調整における「実際の所得税の額」は、給与及び賞与の額と、従業員からの申告による各種控除額に基づいて計算します。年末調整で従業員が提出する申告書と各種控除額の対応関係は表のとおりです。

申告書 各種控除額
扶養控除等申告書 扶養控除、障害者控除、寡婦控除、ひとり親控除、勤労学生控除
基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書
(兼 定額減税申告書(2024年のみ))
基礎控除、配偶者控除、配偶者特別控除、所得金額調整控除、
定額減税(2024年のみ)
保険料控除申告書 生命保険料控除、地震保険料控除、小規模企業共済等掛金控除、社会保険料控除(小規模企業共済等掛金控除及び社会保険料控除については、毎月の給与から差し引かれていない保険料等に限ります)
(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書 住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除のことです)

いずれの申告書も従業員からの申告に基づいて会社側が提出するため、たとえば、従業員がその年に新しく加入した生命保険の保険料を年末調整の際に会社側へ申告しなければ、会社側は生命保険料控除額を年末調整の計算に算入できません。その結果、年末調整における「実際の所得税の額」が本来よりも増えてしまい、年末調整で従業員が還付を受ける金額が減ったり、12月分の給料から源泉徴収される金額が増えたりすることになります。

このことは、従業員からは申告されていたものの会社側のミスで保険料控除申告書に含めることができなかったケースでも同じです。

生命保険の保険料を年末調整の計算に含めることができなかった場合の具体的な影響額は、支払った保険料の金額や従業員の所得金額によって異なります。たとえば、年収が700万円の会社員が4万円の生命保険料控除を入れ忘れていたとすると、「実際の所得税の額」はおおむね8,000円増える計算になります。冒頭の例だと、本来は6万円の還付を受けられるはずが、生命保険料控除を入れ忘れていたことで5万2,000円の還付しか受けられなくなってしまいます。

なお、このような場合であっても、従業員が確定申告で生命保険料控除を含めて申告すれば8,000万円の還付を受けることができますが、確定申告をするとふるさと納税のワンストップ特例申請が無効になるといった影響もありますので、年末調整ですべてを完結させることをおすすめします。

2024年(令和6年)は定額減税のチェック欄に要注意!

2024年(令和6年)は、1人当たり所得税3万円、住民税1万円、合計4万円の定額減税が行われます。

6月からの給料やボーナスで税金が安くなっているはずですが、実はこれで終わりではなく、年末調整の書類でも記入する必要があります

記入箇所は、「基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」という非常に長い名前の申告書の、「本人定額減税対象」「配偶者定額減税対象」の2つの欄です(下図参照)。

本人と配偶者の定額減税については、減税された状態にするには、上記のチェック欄にチェックする必要があります。そうしないと、6月からの給料や賞与でせっかく税金が安くなったのに、年末調整で追徴課税されてしまうことになります。

もちろん、チェックを忘れても、会社側で気づいて調整してくれる可能性が高いですが、記入の責任は社員側にありますので、漏れがないように注意しましょう。

詳細は、「【令和6年分】基礎控除・配偶者控除・定額減税・所得金額調整控除申告書の書き方」をご覧ください。

年末調整で間違えたら脱税になる?

年末調整で計算した「実際の所得税の額」が本来よりも過少だった場合、会社側が追徴課税を受けることになります。このケースの代表例は配偶者控除及び配偶者特別控除(以下、「配偶者控除等」といいます)の申告ミスです。

配偶者控除等の適用を受けるためには、配偶者の年間の合計所得金額(会社員の場合、給与所得から所得控除を引いたあとの金額)が一定の金額以下であることという要件があります。そのため、年末調整の申告書の一つである「基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」では、配偶者の給与所得やその他の所得金額を記載する必要があります。

従業員が配偶者の給与所得額を偽って記載して、本来受けられないはずの配偶者控除等を年末調整で受けた場合、年末調整における「実際の所得税の額」が本来よりも減ってしまい、年末調整で従業員が還付を受ける金額が増えたり、12月の給料から源泉徴収される金額が減ったりすることになります。

このことは、従業員からは正しい金額が申告されていたものの会社側のミスで誤った金額を申告書に記載してしまったケースでも同じです。

なお、本来受けられないはずの配偶者控除等を年末調整で受けた従業員がいる場合、追って税務署から会社に年末調整のやり直しを求める書類が届きます。この書類が届いたら、不足している税額を会社から税務署へ納付する必要があります(場合によっては、不納付加算税と延滞税という罰金も支払うことになります)。会社側が納付した税額は、年末調整で配偶者の給与所得額を偽って申告した従業員に求償する、あるいは給与から天引きするのが一般的な流れです。

年末調整で間違えても特に問題がないケース

年末調整の申告書は正しく作成するのが一番ですが、次のようなケースは間違いがあっても特に問題はありません。

  • 配偶者の所得の見積額を30万円と記載したが、実際は40万円であった場合 → どちらも配偶者控除の対象で影響なし
  • 生命保険料控除の申告を忘れていたが、生命保険料控除を加味しない状態ですでに所得税の額が0円となる場合
  • 地震保険料の支払額につき、本来10万円であるところ誤って7万円と記載したが、いずれにしても地震保険料控除の限度額(5万円)を超えている場合
服部
監修
服部 貞昭(はっとり さだあき)
東京大学大学院電子工学専攻(修士課程)修了。
CFP(日本FP協会認定)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。
ベンチャーIT企業のCTOおよび会計・経理を担当。
税金やお金に関することが大好きで、それらの記事を2000本以上、執筆・監修。
「マネー現代」にも寄稿している。
エンジニアでもあり、賞与計算ツールなど各種ツールも開発。
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