マンション・不動産の購入・売却時にかかる税金の特例制度

不動産 お金

マンションなど不動産の購入・売却に際しては、各種の税金がかかりますが、中でも大きなものが譲渡所得に対する所得税・住民税です。
基本的には、購入したときの価格よりも売却したときの価格のほうが高ければ利益が発生していますので、その利益が譲渡所得となり所得税・住民税が発生します。

ただ、その税額が大きすぎると負担になり不動産の売買も低調になりますので、主に居住用の不動産に対しては各種の特例(優遇制度)があります。これらの特例は種類が多く要件も複雑ですので、わかりやすく解説します。

なお、マンションなどの不動産の購入・居住・売却にかかる税金一般については、こちらをご覧ください。

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1.マンション売却時の所得税・住民税の仕組み

マンションを売却した場合、譲渡所得に対して所得税・住民税がかかります。譲渡取得とは、収入金額から、取得費と譲渡費用を差し引いた金額です。

譲渡所得=収入金額-(取得費+譲渡費用)

取得費」とは、マンションを購入した際にかかった金額です。購入代金、不動産業者への仲介手数料、登録免許税、不動産取得税、リフォームの設備費や改良費などです。取得費が不明な場合は、収入金額の5%を取得費とすることができます。
譲渡費用は、売却時の不動産業者への仲介手数料、印紙税、取り壊し費用などです。

所得税・住民税の税率は、マンションの所有期間によって異なります。

所有期間 所得税・住民税の税率
所有期間が5年以下 所得税30%、住民税9%の合計39%
(別途、復興特別所得税0.63%)
所有期間が5年超10年以下 所得税15%、住民税5%の合計20%
(別途、復興特別所得税0.315%)
所有期間が10年超
6000万円以下の部分:所得税10%、住民税4%の合計14%
(別途、復興特別所得税0.21%)
6000万円を超える部分:所得税15%、住民税5%の合計20%
(別途、復興特別所得税0.315%)

※「居住用財産の軽減税率の特例」→後述

所有期間は売却した年の1月1日時点で計算します。たとえば、平成23年5月に購入、平成28年8月に売却した場合、実際に所有していた期間は5年以上ですが、平成28年1月1日時点では5年以下となります。

所有期間が5年以下なら短期譲渡所得、所有期間が5年超なら長期譲渡所得となるため、税率が異なります。所有期間が10年超の場合は、「居住用財産の軽減税率の特例」により、6,000万円以下の部分に対してさらに税率が低くなります(後述)。

2.居住用財産の譲渡の特例

居住用財産(住んでいる家や土地)を売却した際の譲渡所得に対しては、いくつかの特例がありますが、特に重要なものを3つ掲載します。

特例①3,000万円の特別控除
特例②軽減税率の特例
特例③買い換えの特例

特例①3,000万円の特別控除

内容 ・課税譲渡所得=譲渡益-3,000万円(特別控除)
・所有期間の制限なし
・「特例②軽減税率の特例」と併用可
・譲渡益が0円となる場合でも確定申告が必要
要件 ・居住用財産である
・居住しなくなった日から3年経過後の12月末までに譲渡していること
・前年、前々年にこの特例の適用を受けていないこと
・前年、前々年に特例③の特例の適用を受けていないこと

特例②軽減税率の特例

内容 ・特例①3,000万円の特別控除後の金額について、
6000万円以下の部分が所得税10%、住民税4%、合計14%の低い税率
(6000万円を超える部分は、所得税15%、住民税5%の合計20%)
要件 ・譲渡した年の1月1日時点で所有期間が10年超
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特例③買い換えの特例

内容 譲渡益に対する税金を繰り延べます。
これまで住んでいたマンションを売った(譲渡益が発生)価格よりも、新しく買ったマンションの価格が高い場合には譲渡益はなかったものとみなして課税せず、反対に、売った価格よりも買った価格が低い場合には、その差額のみを譲渡益とみなして課税します。
要件 ・譲渡した年の1月1日時点所有期間が10年超居住期間が10年以上の場合
・売却した居住用財産の価格が1億円以下
・買い換えた居住用財産の床面積が50㎡以上
・譲渡益が0円となる場合でも確定申告が必要

建物と土地の所有者が異なるとき

上記の特例は、原則として、居住用の建物、または居住用の建物と土地を譲渡したときに適用される特例であり、土地だけの譲渡では適用は受けられません。
ただし、たとえば、建物の所有者が夫で土地の所有者が妻であるなど、建物と土地の所有者が異なる場合で、建物の譲渡金額が3,000万円未満の場合は、次の3つの要件を満たせば土地の譲渡益からも控除することができます。

  1. 建物と一緒にその建物が立っている土地の譲渡があったこと
  2. 建物の所有者と土地の所有者が親族関係にあり、かつ、生計を共にしていること
  3. その土地の所有者は、その建物の所有者と一緒にその建物に住んでいること

たとえば、建物の譲渡所得が2,000万円であった場合は、残りの1,000万円を土地の譲渡所得から控除することができます。

軽減税率の特例の所有期間10年超という条件について、建物と土地の両方が所有期間10年超の場合のみ適用されます。建物と土地のどちらか一方が10年以下の場合は適用を受けられません。

住宅ローン控除との関係

上記①②③の特例は、住宅ローン控除と併用することはできません。譲渡所得が少ない場合には、上記の特例を受けずに、住宅ローン控除を利用したほうがお得な場合もあります。

3.損失発生時の特例

居住用財産を譲渡して損失が出たときにも特例があります。

特例④居住用財産を買い換えた場合の譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例

内容 ・譲渡損失とその年の他の所得とを損益通算可能
・譲渡損失を翌年以降3年間にわたって他の所得から控除可能
・新たな住宅ローンにも、住宅ローン控除が可能
・確定申告が必要
要件 ・譲渡した年の1月1日時点で所有期間が5年超
・10年以上の住宅ローンを利用して新たな居住用財産を購入したとき
・買い換えた居住用財産の床面積が50㎡以上
・繰越控除を受ける年の合計所得金額が3,000万円以下
・譲渡の相手先が生計を共にする親族など特別の者でないこと

特例⑤特定居住用の譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例

内容 ・譲渡損失とその年の他の所得とを損益通算可能
・譲渡損失を翌年以降3年間にわたって他の所得から控除可能
・損益通算、繰越控除が認められるのは次のいずれか低い金額
①住宅ローン残高-譲渡価格
②譲渡損失
・確定申告が必要
要件 ・譲渡した年の1月1日時点で所有期間が5年超
・残り10年以上の住宅ローン残高があること
・住宅ローン残高が譲渡価格より多いこと
・繰越控除を受ける年の合計所得金額が3,000万円以下
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4.マンション購入に係る各種税制優遇制度

マンション購入はそれだけで大きな経済的負担が発生します。そのため、マンション購入をしやすくするために、各種の税制優遇制度があります。

(1)住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)

マンション購入の税制優遇で最もポピュラーな制度が「住宅ローン控除」です。住宅ローン控除とは、住宅ローンを利用して住宅を取得したり増改築した場合に、年末の住宅ローン残高に応じて、所得税が控除される制度のことです。控除率や控除期間は、住み始めたときの年月によって異なります。
なお、控除額は「借入金額×1%(4,000万円まで)」で最大控除額は「400万円まで」となっています。(平成31年6月30日まで)

認定長期優良住宅とは、劣化対策や耐震性、省エネ機能など一定の基準を満たした住宅のことです。

住宅ローン控除の適用要件
返済期間が10年以上のローンであること
住宅を取得した日から6ヶ月以内に住み始め、適用を受ける各年度の年末まで引き続き住み続けていること
・控除を受ける年の合計取得金額が3,000万円以下であること
・住宅の床面積が50㎡以上で、床面積の半分以上に部分が居住用スペースであること
・中古住宅では、築20年(耐火建築物は25年)以内であること
その他のポイント
・住宅ローン控除の適用を受ける場合、確定申告が必要。
(給与取得者の場合、初年度は確定申告が必要。2年目以降は、年末調整で控除できるため確定申告不要)
・店舗兼住宅でも住宅部分に適用可能
・繰り上げ返済で住宅ローン返済期間が10年未満となったら適用を受けられなくなる。
・転勤等で適用住宅に住むことができなくなった場合でも、再入居後は適用を受けることができる。
・その年の所得税額から控除しきれない場合には、翌年度の住民税から控除することができる。

住宅ローン控除の節税効果

住宅ローン控除では住み始めた年月によって控除できる金額が異なりますが、最低でも「年末残高限度額(2,000万円)×1%=20万円」の控除が受けられます。
仮に住宅ローンの年末残高が2,000万円以上であれば確実に20万円を控除できますが、所得税の20万円の控除というのはかなり大きなメリットです。年間の所得税が20万円となる給与金額を逆算すると、社会保険料+各種控除額が約200万円で所得は給与所得のみと仮定して、年収約760万円となります。年収がこの金額以下の人であれば、年末調整の住宅ローン控除で、その年に源泉徴収された所得税がまるまる返還される内容です。所属税から控除しきれなかった時は、翌年の住民税からも控除されます。
また、別の見方をしますと、東京で5,000万円くらいの購入価格のマンションであれば固定資産税+都市計画税は15万円程度ですので、住宅ローン控除で固定資産税+都市計画税をまるまる賄える計算です。住宅ローン控除の要件はそれほど厳しいものではないですが、「床面積が50㎡以上」「築20年または25年以内」という条件がありますので、このあたりの条件のマンションを検討されている方は、住宅ローン控除も視野に入れたうえでマンションを選ばれると良いでしょう。

転勤したらどうなる?

転勤等で、所有者本人が居住出来なくなった場合でも、同居している家族が住み続けていれば、住宅ローン控除をそのまま適用できます。ただし、転勤先が海外の場合は、日本の居住者ではなくなってしまいますので、適用不可能人になります。
家族ごと引っ越した場合も適用不可能になりますが、再度戻ってきて住み始めた場合には再適用が受けられます。ただし、会社の転勤命令でやむを得ず転居したことが条件ですので、自己都合による転居や転職では再適用を受けられません。

(2)すまい給付金

直接の減税・免税制度ではありませんが、マンション購入をすると給付金を受け取れるケースがあります。それが「すまい給付金」です。すまい給付金はマンション購入者の収入具合によって給付金額が決まる制度で、「給付基礎額×持ち分割」で計算されます。

消費税8%の現在では最大で「30万円まで」受け取ることができ、もし10%まで上がったら最大で「50万円まで」給付金を受け取れる可能性があります。なお、対象となるのは収入の目安金額が「510万円以下」の人となっています。収入金額は目安ですので、実際の基準は都道府県によって異なります。

住宅ローン控除と併用もできます。住宅ローンを利用している/いないに関わらず、すまい給付金は支給されますが、住宅ローン利用がない場合は年齢が50歳以上の人限定です。

対象となる住宅の要件の一部は住宅ローン控除と同じですが、一部は独自の要件がありますので、詳細は「すまい給付金事務局」のサイトをご確認ください。

【参照サイト】すまい給付金

服部
監修
服部 貞昭(はっとり さだあき)
東京大学大学院電子工学専攻(修士課程)修了。
CFP(日本FP協会認定)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。
ベンチャーIT企業のCTOおよび会計・経理を担当。
税金やお金に関することが大好きで、それらの記事を2000本以上、執筆・監修。
「マネー現代」にも寄稿している。
エンジニアでもあり、賞与計算ツールなど各種ツールも開発。
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