早生まれは損?特定扶養控除と児童手当で約30万円も差がつく

早生まれは損か得か?という議論がありますが、少なくとも、税金や手当(もらえるお金)に限っていうと、最大で1年分損をしています

所得税や児童手当の仕組みと、なぜ早生まれが損をするのか、解説します。

1.早生まれとは?

早生まれとは、一般的には「1月1日~4月1日」に生まれた人のことを指します。それ以外の人が「遅生まれ」です。

  誕生日 
早生まれ 1月1日~4月1日
遅生まれ 4月2日~12月31日

「4月1日」生まれの人は前の学年になります。

なぜかというと、年齢の計算に関する法律(「年齢計算ニ関スル法律」)では、誕生日の前日に歳をとることになっているからです。

たとえば、2018年4月1日生まれの人は、2024年3月31日に「満6歳」になりますので、その年の2024年4月から小学校に入学します。
一方、2018年4月2日生まれの人は、2024年4月1日に「満6歳」になりますので、翌年の2025年4月から小学校に入学します。

▷税金上では、1月1日生まれは遅生まれ

税金(所得税・住民税)の扶養控除などは、12月31日時点の年齢で判断します。

さきほどの年齢計算の法則は同じですので、1月1日生まれの人は前日の12月31日に歳をとったことになり、「遅生まれ」の仲間に入ります。

税金上、早生まれとは、「1月2日~4月1日」に生まれた人のことを指します。

税金上の 誕生日 
早生まれ 1月2日~4月1日
遅生まれ 4月2日~1月1日

「4月1日」生まれの人は前の学年になります。

2.早生まれは、税金の「特定扶養控除」で1年分損をする

所得税・住民税では、「扶養控除」があり、子どもを扶養する親が控除を受けられます。

子どもがアルバイトをしても、子どもの年収103万円以下であれば扶養控除を受けられます

所得税の控除の金額は、子どもが16~18歳、23歳以上の場合は38万円、19~22歳の場合は63万円です。
19~22歳の年齢は一般的に大学生で教育費が多くかかりますので、控除額も多くなっています。これを「特定扶養控除」といいます。
15歳以下は控除を受けられません。

住民税の控除の金額は、所得税とは違いますが、考え方は同じです。

子どもの年齢 扶養親族の区分 所得税の控除額 住民税の控除額
0~15歳 年少扶養親族 0円 0円
16~18歳、23歳以上 一般扶養親族 38万円 33万円
19~22歳 特定扶養親族 63万円 45万円

子どもを扶養する親が「扶養控除」を受けられるかどうかは、年末12月31日時点の、子どもの年齢で決まります

遅生まれ(4月2日~1月1日)の場合

遅生まれ(4月2日~1月1日)の場合、
高校1年生になった年の年末12月31日時点では16歳ですので、所得税では38万円の扶養控除を受けられます。
高校2年生の年末は17歳、高校3年生の年末は18歳ですので、同じく38万円の控除を受けられます。

そして、大学1年生になった年の年末では19歳ですので、所得税では63万円の特定扶養控除を受けられます。
大学2年生の年末は20歳、大学3年生の年末は21歳、大学4年生の年末は22歳ですので、同じく63万円の控除を受けられます。

その後、就職したら、収入103万円を超えますので、控除は受けられなくなります。

早生まれ(1月2日~4月1日)の場合

遅生まれ(1月2日~4月1日)の場合、
高校1年生になった年の年末12月31日時点ではまだ15歳ですので、残念ながら扶養控除を受けられません。
高校2年生の年末は16歳、高校3年生の年末は17歳ですので、38万円の控除を受けられます。

そして、大学1年生になった年の年末ではまだ18歳ですので、扶養控除は受けられますが今までと同じ38万円です。
大学2年生の年末は19歳、大学3年生の年末は20歳、大学4年生の年末は21歳ですので、63万円の特定扶養控除を受けられます。

その後、就職したら、年末時点ではまだ22歳ですが、収入103万円を超えますので、控除は受けられなくなります

遅生まれの人と比べると、63万円の特定扶養控除を1年分受けられません

留年や浪人をしたら受けられるようになりますが、逆に、学費や予備校代が余計にかかります。

学年 遅生まれの控除額
(カッコ内は年齢)
早生まれの控除額
(カッコ内は年齢)
差額
高校1年生 38万円(16歳) -(15歳) 38万円
高校2年生 38万円(17歳) 38万円(16歳)
高校3年生 38万円(18歳) 38万円(17歳)
大学1年生 63万円(19歳) 38万円(18歳) 25万円
大学2年生 63万円(20歳) 63万円(19歳)
大学3年生 63万円(21歳) 63万円(20歳)
大学4年生 63万円(22歳) 63万円(21歳)
就職 -(23歳) -(22歳)

▷所得税・住民税では、8~33万円損をする

63万円の特定扶養控除を1年分受けられないことで、所得税・住民税でどのくらい損をするのか計算してみました。

特定扶養控除を受けることによる節税額は年収によって異なり、次の表のようになります。

給与年収 所得税の節税額 住民税の節税額 節税額合計
300万円 32,200円 54,000円 86,200円
400万円 32,100円 54,000円 86,100円
500万円 51,700円 54,000円 105,700円
600万円 64,300円 45,000円 109,300円
700万円 99,600円 45,000円 144,600円
800万円 128,700円 45,000円 173,700円
900万円 128,600円 45,000円 173,600円
1000万円 128,700円 45,000円 173,700円
1100万円 134,600円 45,000円 179,600円
1200万円 147,900円 45,000円 192,900円
1300万円 150,000円 45,000円 195,000円
1400万円 212,300円 45,000円 257,300円
1500万円 212,300円 45,000円 257,300円
2000万円 212,300円 45,000円 257,300円
3000万円 257,300円 45,000円 302,300円
4000万円 257,300円 45,000円 302,300円
5000万円 289,500円 45,000円 334,500円

※住民税は10%ですが、年収が低いときは、調整控除の結果、節税額が少し多くなります。

つまり、親の年収が500万円なら約10.6万円損をします。
親の年収が1000万円なら約17.4万円の損、親の年収が1500万円なら約25.7万円の損となります。これはかなり大きな金額です。

3.早生まれは、「児童手当」で最大12万円損をする

0歳から18歳までの子どもを養育する親は、「児童手当」をもらうことができます。

児童手当は、誕生した日の翌月からもらえます。
そして、18歳になった年度の3月31日までもらえます。つまり、高校生の間はもらえるということです。(2024年10月から高校生まで拡大)

もらえる金額は、基本的にはこちらです。(2024年10月から第3子は増額されます)

  • 0~2歳:15,000円
  • 3~18歳の年度末:10,000円

児童手当をもらい始める月は違っても、終了の時期は同じであるため、もらえる金額に差が生じます。

▷4月生まれと3月生まれでは11万円の差

何月生まれだとしても、0~2歳まではもらえる金額の合計は同じです。違うのは、「3~18歳の年度末」の部分です。

4月生まれ(4月2日以降)の場合は、18歳になった後の年度末(3月)は18歳11ヶ月ですから、18歳11ヶ月までもらえます。
一方、3月生まれの場合は、18歳になった後の年度末(3月)は18歳0ヶ月ですから、18歳0ヶ月までしかもらえません。

つまり、11ヶ月分×1万円=11万円の差がついてしまいます。

▷4月2日生まれと4月1日生まれでは12万円の差

4月1日生まれの人は一番損をします。

4月1日生まれの場合は、18歳になるのは3月31日です。ただ、3月になった時点では17歳11ヶ月ですから、17歳11ヶ月までしかもらえません。

4月2日生まれと比べると1年分違います。つまり、12ヶ月分×1万円=12万円の差がついてしまいます。

児童手当では、生まれた日によって、最大12万円の損が生じます。

4.特定扶養控除と児童手当を合わせたら約30万円の損

3月の早生まれの子どもの親の年収が1,200万円の場合、特定扶養控除では約19万円の損、児童手当では11万円の損で、合計約30万円の損になります。

年収がもっと多い親だと、さらに損になる金額は大きくなります。

▷誕生日による差別はどうなの?

人が誕生する日は、誰も決めることができません。子どもは「天からの授かりもの」とも言われますが、親が狙って決められるものでもありません。

にもかかわらず、誰も変えることのできない誕生日によって、税金や児童手当で差別があるのはいかがなものでしょうか・・・
人口のだいたい4分の1は早生まれ(1~3月)ですから、4分の1の人は不利益を被っているわけです。

この問題について、2023年6月8日に衆議院で質問が提出されていますが、特に議論されないままになっているようです。

【参考】衆議院:こども政策における早生まれの損に関する質問主意書

現在、特定扶養控除を受けるための、子どもの収入条件「103万円」を引き上げる議論がされていますが、そもそも1年分受けられない人を救済するための法律改正も必要ではないでしょうか。

服部
監修
服部 貞昭(はっとり さだあき)
東京大学大学院電子工学専攻(修士課程)修了。
CFP(日本FP協会認定)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。
ベンチャーIT企業のCTOおよび会計・経理を担当。
税金やお金に関することが大好きで、それらの記事を2000本以上、執筆・監修。
「マネー現代」にも寄稿している。
エンジニアでもあり、賞与計算ツールなど各種ツールも開発。
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