パート年収150万円の壁とは?扶養の範囲をわかりやすく解説

壁 階段

年収の壁といえば「103万円の壁」が有名ですが、主婦(夫)パートの方の場合、「150万円の壁」もあります。
知名度は少し下がりますが、むしろ、こちらのほうが影響が大きい壁です。

「150万円の壁」とは、どんな壁で、誰にどんな影響があるのか? わかりやすく解説します。

1.150万円の壁とは? 配偶者の特別控除が減るライン

「150万円の壁」とは、税金(所得税・住民税)に関する壁で、配偶者特別控除が減り始めるボーダーラインです。

影響するのは、夫婦世帯で、パート主婦(夫)をしている人です。学生や子ども・親などの扶養家族は関係ありません。

「配偶者特別控除」が減るとはいっても、そこまで大きく減るわけではありません。社会保険の壁である「106万円の壁」や「130万円の壁」と比べると、減り幅は小さいです。

2.150万円の壁をグラフで体感

「150万円の壁」が実際どんなものか、グラフで体感してみましょう。

こちらのグラフは、夫婦のうち、片方が年収500万円、その配偶者の年収が100~210万円の範囲で1万円ずつ増えたときの、夫婦世帯の手取りをシミュレーションしたものです。従業員51人以上企業の働いているとして、106万円を超えると社会保険料が発生しています(106万円の壁)。

150万円の壁 グラフ

一番左の赤い丸が「150万円の壁」です。ここを超えると、配偶者特別控除が減りますが、実際のところ、夫婦世帯の手取り額は減っていません。

年収150万円を超えると配偶者特別控除は、階段状に少しずつ減っていきますが、その減るタイミングは、9個あります。それぞれ赤い丸をしたところです。減り幅が小さいところもあれば少し大きいところもありますが、最大でも1万円程度です。これら9つの赤い丸をすべて合わせて、150万円の壁みたいなものです。

一番右側の赤い丸は「201万円の壁」で、これを超えると、配偶者特別控除が完全になくなります。

いずれにしても「106万円の壁」では15万円も手取りが減るので、それよりはるかに小さい壁であることが実感できるでしょう。

3.配偶者特別控除とは?

「150万円の壁」は、配偶者特別控除が減り始めるボーダーラインと説明しましたが、「配偶者特別控除」とは何かについて説明します。

「配偶者特別控除」とは、所得税・住民税の扶養控除の一種です。

扶養する対象が配偶者の場合には、「配偶者控除」と「配偶者特別控除」の2種類の控除があります。

細かい内容は、このあと説明しますが、わかりやすく図にすると、こんな感じです。配偶者の所得(年収)によって、名称が変わります。

配偶者控除

  • 配偶者の所得48万円(年収103万円)以下 → 配偶者控除
  • 配偶者の所得48万円(年収103万円)以上、所得133万円(年収約201万円)以下 → 配偶者特別控除

つまりは、配偶者の年収が103万円を超えて、年収約201万円(※)になるまで、配偶者特別控除を受けられます

※正確には、年収201.6万円未満

配偶者の年収が約201万円になるまでが、扶養に入れる範囲となります。

▷配偶者特別控除の条件

配偶者特別控除を受けるためには、受ける人の年収の条件があります。

  • 控除を受ける人の所得1,000万円以下(年収1,195万円以下

配偶者特別控除を受けられるのは、その受ける人の年収が1,195万円以下の場合です。それを超えてしまうと控除を受けられません。

また、所得900万円(年収1,095万円)を超えると、金額が減ります。

▷配偶者特別控除の金額

配偶者特別控除の金額は、「受ける人の年収」と「配偶者の年収」の両方によって金額が違います。

所得税の配偶者特別控除の金額

こちらは、所得税の配偶者特別控除の金額です。

所得税の配偶者特別控除の金額
配偶者の給与年収 納税者本人の給与年収
1,095万円以下 1,095万円超
1,145万円以下
1,145万円超
1,195万円以下
103万円超150万円以下 38万円 26万円 13万円
150万円超155万円以下 36万円 24万円 12万円
155万円超160万円以下 31万円 21万円 11万円
160万円超166.8万円未満 26万円 18万円 9万円
166.8万円以上175.2万円未満 21万円 14万円 7万円
175.2万円以上183.2万円未満 16万円 11万円 6万円
183.2万円以上190.4万円未満 11万円 8万円 4万円
190.4万円以上197.2万円未満 6万円 4万円 2万円
197.2万円以上201.6万円未満 3万円 2万円 1万円
201.6万円以上 0万円 0万円 0万円

控除を受ける人の年収が1,095万円以下で、かつ、配偶者の年収が150万円以下なら、満額の38万円が控除されます。この金額は、配偶者控除と同じ金額です。

配偶者の年収が150万円を超えると、配偶者控除の金額が少しずつ減っていきます。

住民税の配偶者特別控除の金額

住民税にも配偶者特別控除がありますが、所得税とは少し金額が異なります。

住民税の配偶者特別控除の金額
配偶者の給与年収 納税者本人の給与年収
1,095万円以下 1,095万円超
1,145万円以下
1,145万円超
1,195万円以下
103万円超150万円以下 33万円 22万円 11万円
150万円超155万円以下 33万円 22万円 11万円
155万円超160万円以下 31万円 21万円 11万円
160万円超166.8万円未満 26万円 18万円 9万円
166.8万円以上175.2万円未満 21万円 14万円 7万円
175.2万円以上183.2万円未満 16万円 11万円 6万円
183.2万円以上190.4万円未満 11万円 8万円 4万円
190.4万円以上197.2万円未満 6万円 4万円 2万円
197.2万円以上201.6万円未満 3万円 2万円 1万円
201.6万円以上 0万円 0万円 0万円

控除を受ける人の年収が1,095万円以下で、かつ、配偶者の年収が150万円以下なら、満額の33万円が控除されます。この金額は、配偶者控除と同じ金額です。

4.配偶者控除との違い

「配偶者控除」と「配偶者特別控除」の違いは、配偶者の年収の範囲と、控除の金額です

配偶者控除

さきほど説明しましたが、配偶者の所得48万円(年収103万円)以下なら「配偶者控除」、それを超えたら「配偶者特別控除」です。

配偶者控除の金額は、受ける人の年収と、配偶者の年齢によって金額が違います。

所得税の配偶者控除の金額
受ける人の給与年収 控除額
70歳未満 70歳以上
1,095万円以下 38万円 48万円
1,095万円超1,145万円以下 26万円 32万円
1,145万円超1,195万円以下 13万円 16万円
1,195万円超 0円 0円

本人の年収が1,095万円以下なら、満額の38万円が控除されます。配偶者が70歳以上なら、48万円になります。

こちらにあげたのは所得税の配偶者控除の金額ですが、住民税も金額が異なるだけで同様です。

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5.103万円の壁・150万円の壁の違い

配偶者の所得48万円(年収103万円)をボーダーラインにして、それ以下は「配偶者控除」、それを超えたら「配偶者特別控除」とわかれますが、配偶者控除の年収が150万円以下までは、どちらも控除額は同じ金額です。控除を受ける人の年収が1,095万円以下なら、控除額は同じ38万円です。

ですので、配偶者については、税金上は「103万円の壁」は存在しなく、「150万円の壁」のほうが存在することになります。

ただし、会社によっては、年収103万を基準にして、家族手当を支給するかしないか決めているところもあります。その場合は、「103万円の壁」も存在しているといえるかもしれません。

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6.106万円の壁・130万円の壁のほうが大きな壁

「150万円の壁」と、それを超えたら存在するいくつかの壁は、小さな壁であり、超えても手取りがちょっと下がるくらいで、影響はあまりありません。

むしろ、社会保険料が発生する「106万円の壁」「130万円の壁」のほうがはるかに大きな壁です。これらの壁を超えると、約15万円くらい手取りが突然減ります。

最初に紹介したグラフを再度掲載しますが、「106万円の壁」は大きいことがわかるでしょう。

年収の壁 106万円の壁 社会保険

「130万円の壁」のほうも同じです。

年収の壁 130万円の壁 社会保険

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7.配偶者には細かい壁もたくさんある

ちなみに、最初のグラフで、赤い丸をつけたところ以外にも、ところどころ手取りが下がっているところがありますが、これは、社会保険料の標準報酬月額がアップすることによるものです。

150万円の壁 グラフ

社会保険料は、給料の金額に直接、保険料率をかけるのではなく、1年ごとに決定される「標準報酬月額」に保険料率をかけることで計算します。この「標準報酬月額」は階段状になっています。

たとえば、月収83,000円以上93,000円未満の人は、標準報酬月額は88,000円です。もし、月収が92,000円だったら、標準報酬月額は88,000円です。月収が1,000円アップして93,000円になると、標準報酬月額は次のレンジの98,000円になります。すると、10,000円分、保険料が一気に増えます。

服部
監修
服部 貞昭(はっとり さだあき)
東京大学大学院電子工学専攻(修士課程)修了。
CFP(日本FP協会認定)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。
ベンチャーIT企業のCTOおよび会計・経理を担当。
税金やお金に関することが大好きで、それらの記事を2000本以上、執筆・監修。
「マネー現代」にも寄稿している。
エンジニアでもあり、賞与計算ツールなど各種ツールも開発。
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