消費税10%増税で住宅ローン控除はどう変わったのか?

監修
エファタ㈱ 服部 貞昭
CFP(日本FP協会認定)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)
ベンチャーIT企業のCTOおよび会計・経理を担当。
自ら経理処理を行う中で疑問に思ったこと・気づいたことを記事にして発信中。
税金やお金に関することが大好きで、それらの記事を1000本以上、執筆・監修。
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住宅ローン

「控除」とは、所得や所得税額から一部を差し引いて、最終的に税金の支払い額を減らす仕組みです。
「住宅ローン控除」とは、住宅をローンで購入した人の所得税の支払額を減らす制度です。

住宅ローン控除は以前からある制度ですが、2019年10月の消費増税を機に内容が拡充され減税効果が高くなりました。
このことは、住宅の購入者にとって歓迎できることなのですが、諸条件が複雑化してしまい、「住宅ローンの繰り上げ返済のベストタイミング」が見つけづらくなりました。

繰上げ返済を検討している方は、シミュレーションを行うことでベストタイミングをつかみましょう。

1.住宅ローン控除制度の概要

住宅ローン控除の正式名称は「住宅借入金等特別控除」といい、住宅ローン減税と呼ばれることもあります。
住宅ローンを使ってマイホームを新築または増改築した個人が住宅ローン控除を使うと、住宅ローンの年末の残高に応じて、所得税額が控除されます。
「控除」は差し引くという意味なので、所得税額が減額されます。

2.消費税10%増税前後の変更点

消費増税で消費者の税負担が増したため、政府はその軽減策として住宅ローン控除を拡充して所得税の額を減らすようにしました。
消費増税前後の、住宅ローン控除の変更点をみてみましょう。

2-1.消費増税前の住宅ローン控除

消費増税前の住宅ローン控除の内容は次のとおりです。

  • 控除期間は原則10年間
  • 住宅ローンの年末残高の1%をその年の所得税から控除する(上限は年40万円)

※細かい条件は省略しています。

2-2.消費増税後の住宅ローン控除

消費増税後の住宅ローン控除の内容は次のとおりです。

<2019年10月1日~2020年12月31日までに住宅を購入した場合>

  • 控除期間は13年間
  • 1~10年目:年末残高の1%をその年の所得税から控除する(上限は年40万円)
  • 11~13年目:次のいずれか少ないほうを上限とする
    -年末残高×1%
    -建物購入価格(税抜)×2%÷3

<2021年1月1日~12月31日までに住宅を購入した場合>

  • 控除期間は10年間
  • 年末残高の1%をその年の所得税から控除する(上限は年40万円)

<2021年1月1日~12月31日までに住宅を購入した場合>は従来の内容と同じです。

<2019年10月1日~2020年12月31日までに住宅を購入した場合>は控除期間が13年に拡大していますが、1~10年目は従来と同じです。
11~13年目の計算方法が複雑になっている点に注意してください。
そしてこの複雑さが、住宅ローンの繰り上げ返済のタイミング探しを難しくしています。

3.住宅ローン控除の改正で繰り上げ返済のタイミングが変わる?

繰り上げ返済には、住宅ローンの利息負担を減らす効果があります。つまり住宅ローンの返済総額を減らすことができます。

しかし繰り上げ返済をして、住宅ローンの残高がなくなったり減ったりしたら、住宅ローン控除を使えなくなったり、住宅ローン控除の効果が減ったりしてしまいます。
従来は、住宅ローン控除が使えなくなる11年目に入ってから繰り上げ返済をしたほうがよい、と判断することができました。

では、住宅ローン控除の改正で控除期間が13年間になったので、14年目に入ってから繰り上げ返済をしたほうが良いのかというと、必ずしもそうとはいえない事態が発生します。

3-1.住宅ローン繰り上げ返済のシミュレーション

借入額3,000万円と借入額1,000万円のときで、100万円の繰り上げ返済をしたときのシミュレーションをしてみました。
返済年数は35年、金利は0.5%、元利均等に設定しています。また、建物購入価格(税抜)を2,000万円とします。

借入額3,000万円の場合

借入額3,000万円の場合の繰り上げ返済(単位:円)
 繰り上げ返済 利息合計 住宅ローン
控除額合計
利息減額分+
住宅ローン控除額合計
なし 2,707,533 2,960,300 2,960,300
①2~6年目に20万円ずつ 2,537,455 2,888,900 3,058,978
②11年目に100万円 2,577,604 2,960,300 3,090,229
③14年目に100万円 2,594,378 2,960,300 3,073,455

借入額3,000万円の「通常」ケースをご覧ください。これは、繰り上げ返済をしない場合の数字です。住宅ローン控除額の合計額は2,960,300円になり、利息合計は2,707,533円になります。
この住宅ローンで、「100万円分、繰り上げ返済をする」とします。そして繰り上げ返済のタイミングを次の3つにわけ、それぞれシミュレーションしました。

  • ①2~6年目に20万円ずつ繰り上げ返済する
  • ②11年目に100万円繰り上げ返済をする
  • ③14年目に100万円繰り上げ返済する

シミュレーションの結果、3種類とも利息合計が2,707,533円を下回るので、繰り上げ返済効果があることがわかります。また、早く繰り上げ返済すればするほど、その効果は大きくなりますので、利息減額分を比較すると、①>②>③となります。

ここで、注目したいのが、住宅ローン控除合計額です。
繰り上げ返済しない場合と比較したとき、②③のケースでは、住宅ローン控除合計額は同じですが、①のケースでは少なくなります。

利息減額分と住宅ローン控除合計額を足し合わせた金額が、最終的にお得となる金額ですが、3つのケースで比較すると、②>③>①となります。
つまり、借入額3,000万円の場合、11年目に繰上げ返済を開始することが最適なタイミングであることがわかります。

借入額1,000万円の場合

借入額1,000万円の場合の繰り上げ返済(単位:円)
 繰り上げ返済 利息合計 住宅ローン
控除額合計
利息減額分+
住宅ローン控除額合計
なし 902,357 1,055,800 1,055,800
①2~6年目に20万円ずつ 739,564 953,200 1,115,993
②11年目に100万円 779,212 1,025,500 1,118,645
③14年目に100万円 795,783 1,055,800 1,162,374

次に借入額1,000万円を想定して、その他の条件は全く同じとします。
同様にシミュレーションを行い、利息減額分と住宅ローン控除合計額を足し合わせた金額を3つのケースで比較すると、③>②>①となります。
つまり、借入額1,000万円の場合、14年目に繰上げ返済を開始することが最適なタイミングであることがわかります。

3-2.なぜ最適な繰り上げ返済タイミングが変わるのか

なぜ、借入額によって、繰り上げ返済のベストタイミングが異なるのでしょうか?
それは、11~13年目の住宅ローン控除額が原因です。

再掲しますと、11~13年目の控除額は以下のとおりです。

次のいずれか少ないほうを上限とする
・年末残高×1%
・建物購入価格(税抜)×2%÷3

下の式は、建物購入価格(税抜)で決まりますので、常に一定です。
今回のシミュレーションでは、2,000万円×2%÷3=133,300円(100円未満切り捨て)です。

一方、上の式は、返済が進めば進むほど小さい値になります。

借入額3,000万円の場合は、10年以上経過しても、まだ残高が約2,000万円ありますので、残高の1%をとっても、20万円くらいとなります。20万円>133,300円ですので、少ないほうをとり、11~13年目の住宅ローン控除額は133,300円で一定となります。繰り上げ返済のタイミングが、11年目でも14年目でも、住宅ローン控除合計額は変わりませんが、早いほうが利息合計は減りますので、11年目のほうが有利になります。

借入額1,000万円の場合は、残高の1%をとっても、最初から10万円を下回り、年々少なくなります。n年目の残高をX(n)円とすると、X(n)円<133,300円ですので、少ないほうをとり、11~13年目の住宅ローン控除額はX(n)円となります。繰り上げ返済のタイミングが11年目よりも14年目のほうが、住宅ローン控除合計額は大きくなり、利息軽減効果を打ち消しますので、14年目のほうが有利になります。

3-3.トータルコストで考えましょう

上記のシミュレーションでは、差が出るにしても最大5万円くらいという結果になりました。

もし、ファイナンシャル・プランナーなどの専門家にこのような計算を依頼すると、手間も費用もかかります。また、ローンの期間は35年にもなりますので、「5万円くらい」のお得感は年間で換算するとわずかです。

トータルコストで考えるならば、「繰り上げ返済のタイミングをあえて考えない」のも一つの考え方かもしれません。

まとめ

住宅ローン控除が、消費増税の前後でどのように変わったのかみてきました。

控除期間が10年から13年に拡充されたことは、住宅購入者に歓迎できる内容といえますが、繰り上げ返済のベストタイミングを探ることが難しくなりました。
繰り上げ返済を予定している場合は、シミュレーションを重ねることで、最適なタイミングで繰り上げ返済したいものです。

Excelダウンロード

本記事のシミュレーション内容を、Excelファイルでダウンロード可能ですので、金額や繰り上げ返済タイミングなどを、ご自由に変更のうえご利用ください。

Excel住宅ローン繰り上げ返済のシミュレーション(Excelファイル、269KB)

注意:本ファイルは個人的な用途にご利用ください。本ファイルを利用して、不利益や損害等が発生したとしても、当社は一切の責任を負いませんので、ご了承ください。正確なシミュレーション結果を知りたい場合には、ファイナンシャル・プランナー等の専門家にご相談ください。

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